BO GUMBOS、ZELDA、
サンセッツのメンバーたちが
楽しく創り上げたロックアルバム、
海の幸『熱帯の友情』

『熱帯の友情』('00)/海の幸

『熱帯の友情』('00)/海の幸

1月28日はローザ・ルクセンブルグ、BO GUMBOSで活躍した不世出のアーティスト、どんとの命日。両バンドとも、過去に当コラムで取り上げたので、今回はのちにどんとの伴侶となるZELDAの小嶋さちほらと結成した海の幸の1stアルバム『熱帯の友情』を紹介する。フリーコンサートでシークレットライヴを行なう予定だったプロジェクトが、メンバーで音を出すことが余程楽しかったことから、バリ島でレコーディングすることになったという本作。このメンバーならではのテンションとバリ島の空気感がマッチした、楽しく心地良いロックアルバムだ。
■ローザ・ルクセンブルグ最後の作品『LIVE AUGUST』は
尋常ならざる演奏を聴くことができる歴史的ライヴ名盤!
https://okmusic.jp/news/153984
■ボ・ガンボスは1989年、入魂の一作『BO & GUMBO』で
時代を変える旅に出た
https://okmusic.jp/news/109900

参加メンバーが個性を発揮

優れたアーティストというのは、常に新しきものを直感的に創り出し、それが優れた作品となる。海の幸の『熱帯の友情』を聴いて、そんなことを感じた。新しきもの≒未知のものを求める好奇心は音楽家以外のアーティストにも見られるものだろうが、時間芸術である音楽は他のアート以上に直感的な創造力が必要なのかもしれない。そんな風にも思った。何を以てそう感じ思ったのか。まずは本作収録曲を解説してみよう。大掴みにザっと解説するだけなので、斜め読みで構わないので、お付き合いいだきたい。

M1「バリ島で見たニューオリンズの夢(イントロ)」はタイトル通り、イントロダクションで、ラストM9が本編(?)なので、説明はそちらで行なうとして、M2「果物売りのババーのうた」から行く。冒頭から鳴るゴン(ガムラン)、ティンクリック(竹琴)の音色が否応にもバリ島レコーディング作品を感じさせるところだ。作詞作曲はZELDAの小嶋さちほ。歌も彼女がメインを取っている。彼女の歌は独特のニューウェイブ感があるというか、ものすごく上手いとかパフォーマンスに優れているという代物ではないけれど、それゆえにどことなく神秘性もあって、無国籍感を強くしているように思う。楽曲自体はポップでありつつも比較的淡々と進んで行きながら、中盤、BO GUMBOSのどんどによる《なに言っての~ このこは~》のシャウトでアップテンポに転調。ガチャガチャとした間奏が繰り広げられる。で、再び歌に戻り、また転調する。南国の民謡をモチーフにしたポップチューンが、ニューウェイブ調にコロコロと変わっていく様子が面白い。ガムランを使用しつつも、ギター、ベース、ドラムとベーシックな演奏はロックバンド編成で担っているのはこのプロジェクトのメンバーを考えれば当然なことながら、エッジーでビートの効いたサウンドであっても変な角がないところは注目ポイントだと思う。聴いていて妙な安心感があると言ったらいいだろうか。転調以降は突飛な印象もあるにはあるが、わりとすんなり聴けるのはバンドサウンドが土台にあるからではなかろうか。

M3「ちばらやーさい」は久保田麻琴と夕焼け楽団~サンディー&ザ・サンセッツのギタリスト、井上ケン一の作詞作曲のナンバー。メインヴォーカルも同氏が務めている。誰からのくしゃみから始まることが楽曲全体を象徴しているかのように、実にリラックスした雰囲気が伝わってくる“うちなー”ポップである。BO GUMBOSのKYONが弾く蛇皮線、小嶋とZELDAでの盟友、高橋サヨコとによるお囃子が、琉球民謡、琉球歌謡のマナーに則りつつも、井上の鳴らすギターは実にロック的。ドシッとしたエレキギターならではの音を響かせる。それでいて楽曲全体の琉球らしさを損なうところがないのは流石と言えるだろう。間奏でのソロは完全に聴きどころだ。ドシッとした…と言えば、夕焼け楽団~サンセッツでの井上の盟友、井ノ浦英雄のドラミングも見(聴)逃せない。これもまた琉球らしさを損なうことなく、しっかりとロック、ポップス風味に仕上げている辺りは、氏の存在感の成せる業であろう。サビでのシンバルの入れ方もいいし、フィルも申し分なくエモーショナルだ。

M3はくしゃみから始まったが、M4「SUCK’EM UP」は虫の音と犬の吠える声から始まる。作曲はKYONで、作詞も同氏だが、歌詞カードに“歌詞聞き取り不能”とあるということは、ほぼアドリブで歌ったものをレコーディングしたのだろうと推測できる。スカに近いリズムを持ったアッパーなナンバーで、その躍動感に乗って歌ったものだとすれば、それも頷けるところではある。KYONのアコデヨン(※註:歌詞カードの原文ママ)も流麗に鳴らされるし、エレピもご機嫌に跳ねていて、そのサウンドから多幸感が伝わってくるようではある。井上のギターソロは相変わらずカッコ良い音を鳴らしているし、全体のテンションに当てられたか、ルート弾きの小嶋のベースも間奏では派手な動きを見せている。そこもM4の聴きどころではあろう。

OKMusic編集部

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