GLAYがロックバンドであるという
当たり前の事実に
『THE FRUSTRATED』は
追い討ちをかけてくる

『THE FRUSTRATED』('04)/GLAY

『THE FRUSTRATED』('04)/GLAY

あけましておめでとうございます。本年も『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』をよろしくお願いします。

2024年最初の邦楽名盤は、今年デビュー30周年を迎えたGLAYの作品を取り上げる。昨年末、全国ツアーのファイナルで、漫画家の尾田栄一郎が手がけた30周年のロゴと共に、ニューシングルリリースやベルーナドームライヴ開催、GLAY初の夏フェス出演など、2024年の活動予定が発表されたことをご存知の方も多いことだろう。元旦の朝刊に掲載された30周年アニバーサリー広告では何か新しい発表があったのかもしれない(年末進行、ご理解くださいm(__)m)。今回はそんなGLAYのアルバムから『THE FRUSTRATED』をピックアップ。4月に同作の“Anthology”の発売されるというので、その予習(?)にもなると思う。

前作の反動か、ロック色が前面に

GLAYのヒット曲には「誘惑」や「口唇」というバリバリのロックチューンがある一方で、「HOWEVER」や「Winter,again」、あるいは「BELOVED」、「BE WITH YOU」というミドル~スローなナンバーも多いため、ファンではないライトユーザーには、柔らかいロックバンドとか、優しいロックバンドといったイメージがあるかもしれない。とりわけ、今回紹介する8thアルバム『THE FRUSTRATED』(2004年)以前、2001年から2003年にかけてのシングルタイトル曲を振り返ると、26thシングル「またここであいましょう」(2002年)はバンド然としたサウンドではあるものの、アップテンポではないし、24th「ひとひらの自由」(2001年)はレゲエで、25th「Way of Difference」(2002年)はビート抑えめ、27th「逢いたい気持ち」(2002年)はバラードというラインナップであって、この時期、パンクやハードロック、俗に言うビートロックは鳴りを潜めていたと言っていい。

無論、だからと言って、GLAYは優しいだけのロックバンドではない。2002年前後のシングル曲が前述のようになったのは、この時期に発表された7th『UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY』(2002年)が、(やや乱暴な捉え方をすると)まんまGLAYの作品というよりも、リーダーであるTAKUROのソロ作品をGLAYとともに作ったというような性格のものだったからであって、それというも、『UNITY~』の前作6th『ONE LOVE』がバンドサウンド、ロック寄りの楽曲が中心だったというのが専らの見方である。振り子の理論のような感じである。激しいもののあとは優しいものが欲しくなるし、優しいものを得たあとはそれだけじゃ物足りなくなって、また激しいものを求めてしまう。柔らかく、優しいナンバーも手掛けるが、そのあとは反動で、ダイナミックなバンドサウンド、疾走感あふれるギターロックを欲したということだろう。特にこの『THE FRUSTRATED』は、その振り子の反動が強く出たアルバムではないかと個人的には思う。理屈はどうでもいいというか、考えるより先に音と言葉が出ているような印象がある。楽曲の中で感情を描いてはいるものの、それをじんわりと紡ぐのではなく、ダイナミックにぶつけていたり、何なら、言葉や音階での表現以前にシャウトやノイズを発している。そんな感じだ。煽情的という言い方をしてもいいかもしれない。

アルバム前半は特にそう感じる楽曲が多い。順に見ていこう。オープニングはM1「HIGHCOMMUNICATIONS」。この楽曲のタイトルはそのままGLAYのコンサートツアーのタイトルにも流用されており、2003年のアリーナツアー『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2003』から始まって、昨年の『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-』まで、何度も使われている。つまり、20年来の重要な楽曲と言えるだろう。昨年の同ツアーの本編ラストで披露されたのも「HIGHCOMMUNICATIONS」だった。楽曲の中身に話を絞ると、M1はギターサウンド全開の実にエッジーなナンバー。3rd『BELOVED』の「GROOVY TOUR」や4th『pure soul』の「YOU MAY DREAM」のスケール感の大きさとも、5th『HEAVY GAUGE』の「HEAVY GAUGE」で示したサイケデリックかつダークな雰囲気とも異なる、ロックの尖ったカッコ良さを凝縮したような楽曲である。ギターは相当にフリーキーで、まさに感情に任せて弾き殴っているような印象すらある。歌詞カードには《HIGHCOMMUNICATIONS!》しか載ってないものの、それ以外の英語詞があるようだが、それにしても意味はあまりないようだ。意味よりも語感を優先しているように思われるし、どこか粗暴な感じもある。『HIGHCOMMUNICATIONS』を冠したツアーは、いわゆるレコ発ツアーではなく、ノーコンセプトであったり、普段あまり披露されない楽曲をセットリストに入れたりと、自由度の高い内容であり、その信条はM1の楽曲とも符合しているのかもしれない。

OKMusic編集部

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