GLAYがロックバンドであるという
当たり前の事実に
『THE FRUSTRATED』は
追い討ちをかけてくる

初期衝動と原点回帰を感じる歌詞

タイトルチューンであるM2「THE FRUSTRATED」もまたイントロからエッジーなギターサウンドが全開。うねりのあるベースラインも何とも雰囲気があるし、M1からカッコ良さが継続している。前半は比較的淡々としていて、《LOOKING FOR THE REAL ENEMIES》とか《GIVE ME A REASON/WHY?》とか、タイトル通り、確かにイライラして感じではありながら、サビでは《FRUSTRATED/FRUSTRATED/I WILL GO/I WILL FIGHT/I WILL DO ROCK N' ROLL》とキャッチーかつ開放的に展開していくのが何ともGLAYらしい。やはりは聴き手を惹き付けるメロディーあってのGLAYである。M2にはそれを改めて思い知らされるところがある。M3「ALL I WANT」はギターリフもので、これもロックのダイナミズムにあふれている。「誘惑」の路線…というと若干語弊があるかもしれないけれど、ギターフレーズ、歌のメロディーともに手癖っぽい印象を感じる。無論それに終始するのではなく、全体的には過去曲と比べてもかなりハードではあって、特に2番以降のワイルドさは圧倒的に聴きどころだろう。サビの疾走感も実にいい。TERUの歌が少しきつそうな箇所もあるが、むしろそこはライヴっぽくて完全肯定すべきだと思う。《幻なんて誰もいらない/目の前にある裸が見たい》という歌詞も理屈抜きの衝動という感じで、これまたロックを感じさせるところである。

M4「BEAUTIFUL DREAMER」は今もGLAYライヴの定番曲となっている。改めて聴いてみるとそれも納得で、メロディー、サウンド、歌詞のバランスが良く、間奏のギターソロも含めて、イントロからアウトロまでほぼ完璧といっていい展開だと思う。もちろん島健によるストリングスアレンジも素晴らしい。バンドサウンドの躍動感を損ねることなく、それでいて、かなりの存在感を発揮しているストリングスはお見事のひと言。サザンオールスターズの「TSUNAMI」などと並んで氏の仕事を代表するものとして推しておきたい。また、《夢のペテンに鎖をかけろ/「俺はZEROだ」そういたいと願う/着慣れたシャツを脱ぎ捨てて》という歌詞は今も興味深い。本作以前の2001年には、1999年7月に20万人を動員した『GLAY EXPO '99 SURVIVAL』に次ぐライヴイベント『GLAY EXPO 2001 "GLOBAL COMMUNICATION』を東京、北海道、九州で開催。同年11月からは5大ドームツアー『GLAY DOME TOUR 2001-2002 "ONE LOVE"』を行なった上に、2002年には『日中国交正常化三十周年特別記念コンサート GLAY ONE LOVE in 北京』を実現させていたGLAYである。そんなGLAYが《「俺はZEROだ」》であったり、《着慣れたシャツを脱ぎ捨てて》であったりと、現状に甘んじない姿勢を表明していることにも、否応なくロックを感じるところである。

続くM5「BLAST」はスカ。本作が発表された当時、GLAYがスカをやったことに軽く驚いたものだが、東京スカパラダイスオーケストラが客演しているのはそれ以上に驚いた。スカパラのライヴを観て感動したTERUが“GLAYでもスカを…”と作った楽曲で、そこまでは理解できる話だが、その楽曲のホーンセクションをスカパラに依頼するというのは法外なことだろう。TAKUROが“それがTERUらしいし、GLAYだよね”と笑っていたのを思い出す。聴き直してみると、爽やかな感じが多いTERU作曲のナンバーとは若干趣きが異なる気がする。Aメロもやや暗めだし、歌詞も《一人になりたい夜もあるだろう》とか、《風は夢を攫ってく/風は愛を攫ってく》と閉塞感がある。サビはキャッチーだし、間奏のギターソロも柔らかめで、そもそもスカパラホーンズを含めてスカの躍動感はあるので、100パーセントダークというわけでもないのだが、その辺も面白く聴いたところではある。

OKMusic編集部

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