RIZEがルーキー時代に解き放ったフレ
ッシュなロック盤『ROOKEY』

流石に結成20周年か。いつになく…と言ってもいいだろう。今年のRIZEの動きはヤバいほどに活発となる。まず、3月1日にニューシングル「SILVER」をリリース。同曲は人気アニメ『銀魂.』のエンディングテーマにもなっており、主人公の坂田銀時が描かれた期間限定生産盤の発売も決まるなど、バンドのファン以外の間でも話題となっているようだ。そして、4月から6月にかけては“春季爆雷”、9月から11月にかけては“秋季爆雷”と銘打った、合計40本にも及ぶ全国ツアーを開催。今や日本屈指のロックミュージシャン、ロックアーティストとなった3人のパフォーマンスを体感できるわけで、このツアーは心待ちにしたいところである。本コラムではRIZEのルーキー時代の名盤をご紹介。

若き才能が創った新しい時代

『ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!』でも紹介されていたが、RIZEも今年、20周年を迎える。寄稿したフジジュンさんが《まだ高校生だったRIZEのライヴを観て、まったく新しい価値観を持つ若者の登場に、すげぇビビったことを覚えている》と綴っておられるが、(自分はリアルタイムで彼らのライヴを観たわけではないが)同感である。同じく結成20周年の10-FEETや、さらには同年にメジャーデビューしたDragon Ashを含めて、まさしく《洋楽邦楽、時代もジャンルも問わず、カッコ良いものを積極的に取り入れていくというスタイルの礎を作ったのはこの時代だし、彼らの世代だったと思う》と筆者も思う(《》はフジジュン氏の文章からの引用)。1997年前後は日本のロックシーンでパラダイムシフトが起きた時期だったのだろう。彼らの音楽性は俗に言うミクスチャー──オルタナティヴロックとか、ラップメタルとかに分類されるものであり、それ自体は90年代初頭に現れたRage Against the Machineに端を発するものであろうから、音楽ジャンルそのものが珍しかったわけではない。1980年前後生まれの、未だ10代だった日本のミュージシャンたちがそれをやったということが重要なのである。90年代前半は日本ではHi-STANDARDが盛り上がっており、スタンディングのライヴハウスでパフォーマンスを観ることがそれ以前に比べてさらに当たり前の行為になっていた時期でもある。また、スチャダラパーが小沢健二とのシングル「今夜はブギーバック」を発売し、EAST END×YURIのシングル「DA.YO.NE」がミリオンセールスを記録したのが1994年。ヒップホップも随分と巷に浸透していた頃である。つまり、パンクなどの激しいロックや、日本語ラップを含めたヒップホップは、少なくとも若者のカルチャーにおいては無視できない存在になっていた。感性鋭い10代がそれらの合わさった音楽に飛びついたのは当然のことだったろうし、そこに共鳴するたくさんの若者たちがいたことは自明の理とも言える。

清々しさすら感じる等身大の歌詞

RIZEのデビューアルバム『ROOKEY』の発売は2000年。JESSE (Vo&Gu)はすでに20歳になっていたが、作っていた時は間違いなく10代。金子ノブアキ(Dr)に至っては発売時に19歳だったということは、レコーディング時は高校卒業後すぐの頃だった。それゆえだろう。本作は端々に若者らしさ、その瑞々しさといったものが感じられる。そこがいい。まず、収録曲の歌詞に着目してみる。
《邦楽洋楽もう関係ねえ/俺らとんでもねえことをやってるぜえ/そんでもっておまえ等ものってるぜえ》《数年数十年過ぎた今/今、時代が遷わろうとしてるんだ/この先白紙を埋めてくんだ/RIZE音 これで進めてくんだ/思わねえか毎日何かが》《なんか足りねえ刺激か何かが/うずくまってる底の闘争心/どうすれば挙げられるか想像し/動揺し突っ立ってたら/起こることも起こらねえ待ってたら/だから動くんだ今が出発だ/音楽と共に暴れんだー》(M3「ROCKS」)。
文字面だけ見ても、RIZE汁が滾りに滾って、したたり落ちていることが分かるリリックである。このM3「ROCKS」がもっとも熱々でホッカホカな印象ではあるが、汁が出てるのはこれだけではない。
《常識変えてくwith実践/目を見ろ一人一人の目を見ろ/Step by step積み上げてく事しろ/誰かが引っ張ってかなきゃ/オレらで変えようこの世の中》(M2「King Size」)。
《負け認めんなら旗挙げてな/白い旗高く挙げ泣いてな/それがイヤなら拳握んだ/そして滲んだPower吐き出すんだ》《Open your eye your other eye, why?/That's why you're blind》(M9「one eye monky」)。
《時代は常に新しいものを/探し出し上へと事を/進み出す 明日 進みたがる/勝つか負けるかはYouにある だから/ドデカクいっちょ賭けてこう/人生の花火を上げてこう《そこで止まるな》《How do you like our flow?/オレらのflowを》《オレらと共に夢のカケラ集めて/目の前にあるよ 手をのばしつかめよ》(M10「必殺」)。
Dragon Ash のKjが『Viva La Revolution』で示した歌詞と同様に、確実に前向きで、上を向いている。いい意味での“There is no excuse”には、まさに若者らしい力強さを感じるところである。また──。
《大人になるのが怖くて 汚くなるのが怖くて/風を感じながら》(M8「wind」)。
この辺りは若干ベクトルが異なるが、若者…というか、子供ならではの素直さが感じられて、むしろ好感が持てるところでもあると思う。

友情、家族の絆を素直に綴る

リリックで最注目なのは、2ndシングルにもなったM4「Why I'm Me」ではなかろうか。
《3年の月日が経った 今 自分がいるのは友情だ/友達がくれたパワーが 今となって最強の武器なんだ/ダチと創り上げてきた想い出が/曲とともに歌詞として動いてんだ》《To my friends dogs&cats ともだち/うざくて最高だが そこがいい(から)》(M4「Why I'm Me」)。
友情の大切さを強調するのは、いかにも“AIR JAM世代”以降の思想であり、あるいは《東京生まれ HIPHOP育ち 悪そなヤツは だいたい友達》(「Grateful Days」/Dragon Ash featuring Aco, Zeebra)に通底している感じでもあって、これまた当時の若者らしいリリックであるが、やはり以下がグッとくる。
《言ってたんだ オレの親父が(Oi)/手を出せ オレと同じだ/ヤツは言ってたBelieve in yourself/ヤツは知ってたWhat's in my self/オレの背中を押してくれてた/MOM I LOVE YOU どでかい人間だ/親だけじゃない、To all my Family/Grandpa Grandma you are the best in me/離ればなれでYou know I miss you both/But you gave me hope超えた限界を/オレは何度も諦めかけた、だが強く成り立ってたんだ》(M4「Why I'm Me」)。
ご存知のない読者がいらっしゃるかもしれないので補足すると、JESSEの父親は日本を代表するロックギタリスト、Charである。父親が大人物だからリスペクトしているかと言えば、決してそういうことでもない。ウィキペディアに《父への反発から、ロックではなくラップを始める》とあるように、ロックの血を引いていても(引いているからか?)彼に反抗期はあったようではある。だが、そこを超えて、ミュージシャンとして…だけでなく、親子の絆、ひいては家族愛に昇華させているのは、アーティストとしての面目躍如たる行為と言える。(さらに補足すると、金子ノブアキのKenKen(Ba)の父はドラマーのジョニー吉長、母はシンガーの金子マリである。Charとジョニー吉長は、ルイズルイス加部と3人でバンド、ピンククラウドを組んでいた)

ポテンシャルの高いバンドサウンド

『ROOKEY』でのRIZEのサウンドは…と言うと、前述の通り、所謂ミクスチャーで、Rage Against the Machineからの流れであることは間違いない。激しくも荒々しく、それでいて躍動感あふれる様は、これまた若さならではの瞬発力と相俟って、自然とアガる作りだ。ちょっとリフレインが多い気もするが、これも圧しも強さの表れと理解すれば、清々しくもある。とはいえ、決してラウド一辺倒ではなく、M7「PLUG」の間奏で聴かせる妙なギターソロや、M8「wind」の歌に重なるサイケっぽいギター、あるいはM9「one eye monkey」のアラビアっぽく、どこかおどろおどろしい感じなど、聴きどころもある。随所随所で印象的に響く、抜けのいいスネアドラムもとてもいい。個人的に推したいのはM5「Back Fire(Director's Cut)」とM6「Rough Day」。ともにプログレっぽく展開する、アウトロに近い間奏パートのサンサンブルが実に心地良い。この辺りはTOKIE(Ba、2001年に脱退)を含めて、このバンドのポテンシャルの高さを感じさせるところである。その後、再度のメンバーチェンジを経て、金子ノブアキの実弟であるKenKen (Ba)が加入。現在の面子となったが、その独特のグルーブはさらに進化している。ちなみに、そのKenKenはDragon Ashのレギュラーサポートメンバーである他、さまざまなアーティストのサポートで活躍する、今や日本屈指のベーシストである。役者としても活動する金子ノブアキはソロワークに加えて、RIZE以外のバンドにも参加。JESSEはPay money To my PainのT$UYO$HI、ZAXらと2012年に新バンド、The BONEZを結成した他、数多くのアーティスト、バンドとコラボレーションを行なっている。デビュー当時、ルーキーだったRIZEだが、今やメンバー全員がシーンに欠かせない名うてのミュージシャンに成長を遂げたのである。

著者:帆苅智之

OKMusic編集部

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