TUBEのオリジナル作で
最高売上の『Bravo!』で
“やっぱりこの人たちはすげぇ!”
と素直に脱帽
歴代でもトップクラスの多作ぶり
そんなわけだから、当コラムとしてはどの作品をチョイスしていいか激しく迷う。“TUBE弱者”の筆者としては、TUBEと言えば夏、夏と言えばTUBEなのだろうから、まず“夏”を冠した作品が代表作に相応しいだろうと考えた。ところが…である。『N・A・T・S・U』(1990年)、『浪漫の夏』(1993年)、『終わらない夏に』(1994年)、『ゆずれない夏』(1995年)、『夏景色』(2003年)と、最新作『日本の夏からこんにちは』(2020年)を置いておいたとしても、5作品もある。“SUMMER”にしても、『HEART OF SUMMER』(1985年)、『SUMMER DREAM』(1987年)、『SUMMER CITY』(1989年)、『Only Good Summer』(1996年)、『SUMMER ADDICTION』(2011年)と、これも5作品。さすがにタイトルだけでは、どれが代表作か判別が付かない。それならば…と当コラムの通例としてメジャーデビュー作をチョイスする方法もあるが、TUBEは俗に言うインディーズ時代の音源がない(あるのかもしれないけど、それにしても入手超困難だろう)。メジャーデビュー作が1stである。となれば、チャートで初のベスト10入り作品とか、それこそ初1位奪取作とかに白羽の矢を立ててみよう。前者が『THE SEASON IN THE SUN』(1986年)で、後者が『納涼』(1992年)である。“TUBE弱者”としてはどちらでもいいのかなと思ったが、何とも選別が難しかったので、“それでは…”とセールス的にはどちらが良かったのかを調べてみた。
オリコン調べによると、『納涼』はTUBEのアルバムでは第20位で相対的に見れば案外低め(これ、結構ややこしいことになっていて、1992年版が第20位で、2003年の再発版が第11位。合算すれば上位にランクされるのかもしれない)。『THE SEASON IN THE SUN』はオリコン調べの対象が1988年以降にリリースされたCDとなっているので、この調査ではランキングが不明だ。さて、困ったと。そのランキング上位を見ていると、アルバム売上のトップ3は全てベスト盤が占めているのだが、それ以下にオリジナルアルバムが顔を出している。4位『Bravo!』(1997年)。5位『終わらない夏に』。6位『浪漫の夏』。7位がまたベスト盤で、8位『Only Good Summer』。9位『ゆずれない夏』。そして、10位『HEAT WAVER』という結果である。“やはり、“夏”や“SUMMER”がタイトルに着いた作品が上位なんだなぁ”と感心しつつも、そうではない、『Bravo!』なるアルバムがオリジナルでは(少なくともオリコン調べでは)最上位ということに興味を惹かれた。
『Bravo!』が発表された1997年はCD生産枚数が国内過去最高だった年でもあるから、それも少なからず関係しているのであろう。また、『Bravo!』は発表された当時、全11曲に全てタイアップ付きであったというから、それもまたセールスに影響したと思われる。売れた作品が即ち良作でないことは、“売れているものが良いものなら世界一うまいラーメンはカップラーメンだ”という甲本ヒロトの名言を出すまでもなく、自明の理ではあろうが、日本でCDが最も売れた時期=フィジカル・メディアに最大の需要があった時期に、そこに収録された楽曲が全てCM曲やテレビ番組のテーマに使われたというのは、まさしくそこにTUBEの音楽(“大衆”音楽)の役割、そのエッセンスが詰まっているとは考えられる。筆者は“TUBE弱者”なので、正直言ってこの選択は正しいかどうかは分からないけれど、このバンドのある側面は導き出すことはできるだろうと、TUBEの名盤は『Bravo!』であるという賭けに出て見た。以下、その考察である。