『ZERO』/DEAD END

『ZERO』/DEAD END

その後のJ-ROCKの基点にもなった
DEAD ENDの歴史的名盤『ZERO』

日本ロックシーンにおいて現役アーティストから最もリスペクトされているバンドと言っても過言ではない、最高のミュージシャンズ・ミュージシャン、DEAD END。彼らが世に送り出したサウンドは、当時のライヴハウスシーンでは考えられなかった “耽美”や“妖艶”と形容されるもので、多くのアーティスト、バンドマンに衝撃を与えた。歴史に“たられば”は禁物だが、彼らがいなかったら現在の音楽シーンは間違いなく今とは別の様相になっていたに違いない。

90年代のシーンに及ぼした絶大な影響力

“青は藍より出でて藍より青し”ということわざがある。“藍”とは、染料に使う藍草のことで、藍草で染めた布は藍草よりも鮮やかな青色となることから、その関係を弟子と師匠にあてはめて、弟子が師匠の学識や技術を越えるという意味である(「故事ことわざ辞典」より引用)。“出藍の誉れ”とも言う。体力が物を言うスポーツの世界ではわりとありがちな話だし、具体例を挙げるのははばかられるので挙げないが、芸能の世界でもなくはない話だ。

しかし、その逆で、後人が超すことができない先人──超人的な人物というのも確実に存在する。例えば、長島茂雄巨人軍終身名誉監督などはそのひとりで、氏を上回る成績を残した後輩、弟子は少なくないが、日本プロ野球史上、長島茂雄以上に輝きを放った選手は…と考えると、そうした存在は皆無と言っても過言ではない。

では、音楽シーンにおける超人的アーティストは…と言うと、これまた何組かに白羽の矢を立てることができる。世界的に言えば、ビートルズがまさにそれで、世界中に莫大な数のビートルズ・フォロワー在れど、現在までビートルズを超えたバンドは存在しないと言ってよい。日本ではどうか。まずキャロルやBOOWY、が思い浮かぶが、一般的な知名度こそ前者たちに譲るものの、DEAD ENDの存在を忘れてはならない。DEAD ENDは今や海外での評価も高い、俗に言うビジュアル系から派生したジャパニーズロックの始祖である。これは歴然とした事実だ。実際の師弟関係にあったバンドが多いわけではないが、90年代に活躍したバンドの多くは概ねDEAD ENDの弟子筋に当たると言っていい。それだけ絶大な影響力を誇った。いや、今もその影響力はまったく衰えていないのである。

こんな話がある。清春(黒夢、SADS)のソロアルバム『poetry』('04)にDEAD END のMORRIE(Vo)がギターで参加している。当時、「ヴォーカリストが何故ギターで参加?」という素朴な疑問を清春本人へ率直に尋ねると、「MORRIEさんがメチャクチャ、ギターを巧いことは以前から知ってたしね。コーラスで参加してもらうおうとはまったく考えなかったよ。俺如きのアルバムでMORRIEさんに歌ってもらうなんておこがましいから」とのことだった。MORRIEは清春が「俺如き」と謙るほどの存在なのである。

また、こんな話もある。Gargoyleというヴィジュアル系スラッシュメタルバンドがいる。2011年に発表した14thアルバム『鬼書』に明らかにDEAD ENDへのオマージュを感じさせるナンバーが収録されているのだが、この楽曲についてGargoyle のTOSHI(Ba)は「DEAD ENDの再結成を知って、俺らなりの喜びを表したかったんですよね」と嬉々として語ってくれた。TOSHIとDEAD ENDの“CRAZY” COOL- JOE(Ba)は師弟関係にあると言ってもよい。Gargoyle 自体、2014年現在で結成27年目を迎えた、本人たちもそろそろレジェンドと呼ばれるに相応しいバンドなのだが、彼らをしてこう言わしめるのがDEAD ENDなのである。

上記以外にも、2013年にリリースされたDEAD ENDのトリビュートアルバム『DEAD END Tribute - SONG OF LUNATICS -』に参加しているアーティストは全てDEAD ENDの絶大なるフォロワーと呼んで間違いない。スペースの都合もあって参加アーティスト名は列挙しないが、いずれも現ジャパニーズロックシーンを支える錚々たる面々である。

OKMusic編集部

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