久保田利伸の1stアルバム
『SHAKE IT PARADISE』から
日本でのブラックミュージックの
隆盛は始まった!

それまで一部好事家たちの間で支持されつつも、なかなか一般層に浸透しなかったブラックミュージックを、その類まれなる歌唱力と巧みなプロデュース力で一気に世間に広めたアーティスト、久保田利伸。現在、日本で活躍するR&Bシンガー、ラッパーは大なり小なり久保田の影響を受けていると言ってもいいだろう。その天賦の才は1stアルバム『SHAKE IT PARADISE』からフルに発揮されていた。今聴いてもそのポテンシャルの高さに思わず唸らされる大傑作である。

邦楽シーンにブラックミュージックを
根付かせた久保田利伸

 R&Bは言うに及ばず、レゲエやヒップホップがチャートインすることも不思議でも何でもなくなった現在の邦楽シーンだが、これもわずか20数年の間に起こったことだ…と言ったら、若いリスナーはにわかに信じないかもしれない。だが、事実である。もっともブラックミュージックは突然日本に降って沸いたわけじゃなく、60年代に「グッド・ナイト・ベイビー」を大ヒットさせたザ・キング・トーンズや、早くからドゥーワップを自らの音楽に取り入れていた山下達郎、また、80年代前期に活躍したシャネルズ~ラッツ&スター、あるいは大人気を獲得したチェッカーズもそうかもしれないが、日本においてブラックミュージックを牽引しようとした立役者たちはそれまでも存在していた。が、いずれもこのジャンル自体を日本に根付かせるまではいかなかったと言わざるを得ない。
 では、現在の日本でのブラックミュージックの隆盛、その端緒を開いたのはどのアーティストであったのだろうか? その答えは──これはもう、間違いなく久保田利伸である。90年代前半、米倉利紀、平井堅、UAらが登場し、90年代後半にはMISIA、DOUBLE、さらには宇多田ヒカルの大ブレイクで、ジャパニーズR&Bシーンは確固たるものになったのだが、久保田以前にメジャーシーンでR&Bなんてジャンルはほとんど認知されていなかったと言ってよい。久保田利伸デビュー当時のラップは…と言うと、RUN-DMC がエアロスミスと共演した「Walk This Way」は日本でもヒットしており、いとうせいこう、高木完、藤原ヒロシ、近田春夫といった黎明期のレジェンドたちも活動を始めていたが、国内でのラップはまだまだアンダーグラウンドのものであった。ライムスターの結成は89年だし、EAST ENDやスチャダラパーの活躍は90年代まで待たなければならない。つまり、久保田利伸の登場前にはR&Bもヒップホップもまったくメジャーではなかったのである。

OKMusic編集部

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