BO GUMBOS、ZELDA、
サンセッツのメンバーたちが
楽しく創り上げたロックアルバム、
海の幸『熱帯の友情』
音楽仲間が目指したハイブリッド
レコーディング先で見聴きしたものを楽曲に取り込んでいることは、それもまたこのメンバーならではの感性の成せる業だろう。ガムランやティンクリックというバリ島ならでは楽器を使用していることもそうだし、歌詞の内容もそうだ。前述した、M8「ムスティカ」の内容は間違いなくそういったものだし、M2「果物売りのババーのうた」もM5「バリ島の日本人」もバリ島レコーディングでなければ生まれなかったものであろう。そうした具体的なものだけでなく、バリ島ならではの空気が醸成したものは確実にあると思う。M1とM9「バリ島で見たニューオリンズの夢」はタイトルからもそれが分かるし、それ以外の楽曲にしても、バリ島でしか録れなかったものであったということが言える。加えて言うと、自らの持ち場を堅持しているという言い方でいいのかどうか分からないが、現地の楽器、あるいはメロディーやリズムを取り込み、バリ島ならではの空気感を纏いつつも、ZELDA、夕焼け楽団~サンセッツ、BO GUMBOSという、その時点での各メンバーが属していたバンドのサウンドをスポイルしていないところは忘れてはならない点だと思う。その時点での音楽的土台を守り、他のメンバーへのリスペクトしつつ、その先にあるハイブリッドな音楽を目指した──『熱帯の友情』はその時、その場でしか成し得なかった、まさにレコード≒記録なのだろう。
TEXT:帆苅智之