割礼の『PARADAISE・K』に触れ、
そのロックバンドの姿勢を想う
サイケ? パンク? ニューウェイブ?
レコードショップのサイトやレコードコレクターの方のブログの中には、この1stは“パンク”と語られているのも散見できる。個人的にはそれとも微妙に違う気がする。パンクというよりも“ポストパンク”、いわゆる“ニューウェイブ”の匂いの方が強いように感じる。もっと言うと、そのダークな雰囲気であったり、不協気味の旋律を選択していたりするところなどは、ポジティブパンクを感じるところではある。もっとも、本作のレコーディングは地元・名古屋のライヴハウス、HUCK FINNで行なわれたということで、その辺はパンクのDIY精神が発揮されていたという言い方はできるとは思う。M4「ゲーペーウー」ではブギー風、M5「ラブ?」はリフものR&Rと、ロックの文脈を抑えながら、オールドタイプとは異なった解釈を加えているのもパンクと言えばパンクだろう。M2「ベッド」以降、ソリッドなギターサウンド全開のM6「チュウイングガム」まで疾走感が持続していく辺りもパンクと呼べるものかもしれない。
ただ、同時期、メジャーデビューを果たしていた日本のパンクバンド、THE STALIN、LAUGHIN' NOSEらとは明らかに音楽性は異なる。Sex Pistols、The Clashなどのロンドンパンクとも、Ramonesらのニューヨークパンクともやはり違う。何と言うか、荒々しさに違いがあるように思う。パンク文脈で言えば、唯一(?)、ニューヨークパンクとして語られるTelevisionには近い印象はある。Televisionの『Marquee Moon』(1977年)での、単音弾きのギターのアンサンブルでサウンドが構築されている辺りがよく似ている。宍戸幸司もTelevisionを自身のフェイバリットバンドのひとつに挙げていたようだから、影響もあったのだろう。しかし、だからと言って、この時期の割礼が即ちパンクと結論付けるのも早計だろう。Television自体、Ramonesらのニューヨークパンク勢と密接な関係であったものの、その音楽をパンクのカテゴリーに入れるのは無理があるという見方もある。そこから考えれば、割礼も『PARADAISE・K』も簡単にパンクとは括れないものである。