1stアルバム『熱い胸さわぎ』の
バラエティー豊かなサウンドに
新人・サザンオールスターズの
比類なき才能を見る
“国民的バンド”サザンオールスターズ
もちろん、アルバムではオリジナルで4作、ベスト盤で2作のミリオンを出しており、1998年のベストアルバム『海のYeah!!』はトリプルミリオンを優に超える売上を記録している。シングルは5作品がミリオン作。その筆頭である「TSUNAMI」は300万枚に迫る売上で、レコードを含めた日本のシングルでトップ3にランクインされている。これらをして、“それだけの結果を残していれば十分に国民的だろう!?”と仰る方もいらっしゃると思うが、アルバムでもシングルでもサザンを上回る日本のバンドは他にもいくつかある。でも、それらが“国民的バンド”と呼ばれるのを聞いたことはない。アルバムとシングルを合わせた総売上を見ても、サザンは歴代ベスト5で、その上位には他のバンドが君臨している。何が何でも“国民的バンド”が売上ベスト1でなければならないわけではないだろうが、それでは何をもって“国民的”と言われているのだろう。
それでもサザンが毎年ツアーを欠かさないようなバンドで、(実名を出して恐縮だが)それこそTHE ALFEEや一時期のHOUND DOGのように全国津々浦々を周ってライヴをしているのであれば、“なるほど”と納得できようというものだが、近年で言うと2016年と2017年にサザンはライヴを行なっていない。2000年以降では2005年と2015年とのライヴ本数が20本を超えているが、それ以外の年は概ね年間5本前後である。年越しライヴは有名なものの、デビュー間もない頃はともかくとして、サザンは全国ツアーをそれほど多く行なってきたバンドではないのである。まぁ、それもいいだろう。ライヴの多さが即ち“国民的バンド”の定義でもあるまい。
個人的に最も引っかかるのが(引っかかっていた…と言い換えたほうがいいが)、その活動休止期間の多さだ。原由子(Key&Vo)の産休による1985年の活動休止は仕方がないとして、1993年以降、何度もその活動を止めている。2009年には無期限休止も発表。これも2010年に発覚した桑田佳祐(Vo&Gu)の食道癌の治療が関係していたのかもしれないけれども、サザンは案外コンスタントに活動していないバンドであることは間違いない。桑田もサザン30周年の時に「20年間はソロ活動をしていた」と述懐している。しかも、「私のわがままで休んだり、再開したりしてしまった」と語っていたとも聞く。サザンもソロもその楽曲は桑田が作っているのだから、桑田の動き=サザンの動きと見てもいいと思うが、そうであれば少なくとも“国民的バンド”という表現は適切ではない気がする。屁理屈は承知だ。ただ、個人的には抵抗があったことは少し理解していただけたら、と思う。