たまの『さんだる』は国内音楽シーン
のエポックメイキング作だ
♪今日人類が初めて木星に着いたよ〜♪の「さよなら人類」のヒットで、“イカ天”ブームを代表する存在として大ブレイクしたバンド、たま。彼らの後にも先にもこれほど個性的なバンドはメジャーシーンには出現しておらず、今もって稀有な音楽家として語り継がれている。デビューから25年、解散から12年。たまとは何だったのか? メジャーデビュー作『さんだる』から、それを検証してみる。
たまのようなバンドは今も昔も他にない
テレビ番組『三宅裕司のいかすバンド天国』=いわゆる“イカ天”に出場し、勝ち抜いて14代目イカ天キング、さらに5週連続勝ち抜きを果たして第3代グランドイカ天キングの座に輝いたのが1989年。シングル「さよなら人類」でメジャーデビューしたのが1990年だが、結成は1984年で、有頂天のケラが主宰していたインディーズレーベル“ナゴムレコード”に参加したのが1986年だから、少なくとも彼らはポッと出のイロものバンドなどではなかった。
また、メジャーデビューアルバム『さんだる』収録曲は、第32回日本レコード大賞の最優秀ロック・新人賞を受賞し、その年のNHK紅白歌合戦でも演奏されたM8「さよなら人類」にしても、そのほとんどがインディーズ時代のもので、彼らの音楽性は結成以来、あまり変わっていなかったことも分かる。
つまり、たまにとって“イカ天”は世に出るきっかけにすぎなかったわけで、まさにブームによって陽の目を見たと言える。逆に言えば──これは今回、改めてアルバム『さんだる』を聴いてみて感じたことでもあるが、ブームがなかったら、たまは世に出て来られたのかどうかと考えると、正直言って微妙だったと言わざるを得ないとも思う。これはたまの音楽性を否定しているのではない。後述するが、たまのようなバンドは今も昔も他にないことは疑いようがないし、素晴らしいバンドであることは間違いない。
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