『スナックJUJU
〜夜のRequest〜』に見る
JUJUらしい上品なアレンジと
日本音楽史

編曲陣の手腕も光る上品なアレンジ

7.「二人でお酒を」
【原曲】梓みちよの34thシングル(1974年)
オリジナルは多彩なメロディーをシンプルなバンド演奏とストリングスによって支えている一方、そこにホーンセクションを加えているのが、他者のカバーにはないJUJU版の試み。昭和味がありながらも下世話に聴こえないのは、瀟洒なピアノやベースの音色によるところだろう。糖分過多だがカロリーは控えめ…みたいな、お見事なカバー。

8.「DESIRE -情熱-」
【原曲】中森明菜の14thシングル(1986年)
 JUJUと明菜では歌い手としてのタイプが異なるので、実際に聴くまでは大胆な改編があるかと想像していたら、真っ向勝負と言っていいくらいに原曲からアレンジを変えていない。その意味で、本作の中でも最もJUJUの心意気が感じられる一曲ではなかろうか。歌唱も尻上がりに迫力を増していく。Bメロの、はすっぱな感じもいい。

9.「恋におちて -Fall in love-」
【原曲】小林明子の1stシングル(1985年)
 イントロのピアノからしてオリジナルの忠実なカバーと思きや、間奏がドラマチックに展開したり、じっくり聴くと、ギターやベースといった個々の音が粒立っていることが分かったりと、ちゃんと個性的なアレンジが施されている。亀田誠治氏のアレンジ力が光る(ベースもおそらく氏のプレイだろう)。JUJUの甘い歌声も歌詞に合っている。

10.「夢の途中」
【原曲】来生たかおの11th「夢の途中-セーラー服と機関銃」(1981年)、薬師丸ひろ子の1stシングル「セーラー服と機関銃」(1981年)
テンポから見たら来生たかお版のカバーと言えるだろうか。だが、サウンドメイキングは来生版とも薬師丸ひろ子版とも異なる。JUJU版ではエレキギターで鳴らされていたイントロをピアノとブラスに改編し、よりしっとりとしたナンバーに仕上げている。Bからサビでのストリングスの使い方が案外派手でなかなか興味深い。

11.「シルエット・ロマンス」
【原曲】大橋純子の18thシングル(1981年)、来生たかおの11thシングル(1982年)
イントロのピアノが大橋純子版のセルフカバーである来生版に近いかもしれない…と思いながら聴いていくと、中盤から入って来るストリングスからはしっかり大橋版へのオマージュも感じさせる。ベースラインがやや強めに全体を引っ張っている気はするものの、全体的にバランスの取れたアレンジで、島健氏の確かな手腕を感じざるを得ない。

12.「つぐない」
【原曲】テレサ・テンの14thシングル(1984年)
 オリジナルでも若干ラテンっぽいリズムを感じなくはなかったけれど、JUJU版はそこを強調するかのようにボサノヴァタッチに仕立てている。JUJUの歌唱は原曲以上に歌詞に宿る不憫なイメージを強くしている印象で、それを助長しているストリングスにも注目。イントロも絶妙だが、2番からのバイオリンは身震いするほどに素晴らしい。

13.「ラヴ・イズ・オーヴァー」
【原曲】欧陽菲菲の17thシングル(1979年)
欧陽菲菲の同曲は川上了編曲と若草恵編曲の2バージョンがあり、このJUJU版はイントロの派手さは前者、サビでの比較的落ち着いたアレンジは後者を参考にしているようだ。いくらでもドラマチックに仕上げることができる楽曲だろうが、だからこそ、あえてそこに向かわず、すっきりと上品なカバーに仕上げた感はある。

OKMusic編集部

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