「Get Along Together」だけで
山根康広を語るなかれ
『BACK TO THE TIME』に
彼のロックな本質を見る
結婚披露宴に向かない歌詞が多い!?
《彼女の優しさに耐え切れずに街を出てから5年が過ぎて/僕はあの頃の夢へのTicket手に入れた》《彼女も大人になり幸せな家庭をつくっていると/風の便りに聞いた熱い夏 1979》(M2「Good-bye Love Road」)。
《あれほど胸に刺さる/恋は今もない/どうして別れたのだろう/想い出だけ残して》《Ah So hold on me/もう一度/Get back in love/もう言えない/ちょっとさみしい後ろ姿/Ah 冬も近い》(M4「お元気ですか?)。
《君と見たいくつもの夢は僕の胸の中に/焼き付いたまま離れはしない/ねえ君何処にいる? 誰かのそばにいるだろうね/それとも今でもひとりこの空を見上げているの?》《君をあの時守れる強さがあれば/この手の中君の心受け止められた》(M5「おちこぼれのMerry X’mas」)。
《僕の胸で泣いた/あの瞳を忘れない/強く抱きしめた君は遠い夏の日の中》《あの夏の日を僕は忘れない/きっと何処かで君も/今もこうして夏に誘われて/見ているはずだろう》(M7「夏の日の中」)。
《降り出した雨に打たれ/肩寄せあったあの日から/この道をひとり歩く/こんな日が来るなんて》《君のことはいつまでも忘れない/たとえ二度とは会えないとしても/それが僕の青春の全てだから/いつまでもこの胸に》(M10「時の河を越えて」)。
かつての恋愛に思いを馳せるものばかりで、あまり上手くいかなかったことを彷彿させるものもある。女性が主人公と思しきものもあるが、それもまたハッピーエンドではない。以下のような調子である。
《今まで考えた事もない/あなたに好きな人が/いたなんて私の気持ちもこの海に捨てるわ》《それ以上は今の私に聞かないでお願い/「きっと想いはかなうよ」とこう言ってしまうから》(M6「聞かないで」)。
《こんな私の気持ちなんて/あなたには届かないわ》《涙がこぼれるこんな夜は/私は空に向かって/一人でこの歌を歌い続ける》《誰にも聞こえない歌を歌うのよ/夜空に吹かれながら》(M9「抱きしめて」)。
こちらのほうは絶望に近い。暗いと言っていい内容ではあろう。ここから察するに、ライターとしての彼は、こうしたバッドなシチュエーションを含めて、包み隠さず描いてしまうことのほうが(少なくともこの時期は)得意技だったようだ。こういうところは、サウンド以上にロックを感じさせるところである。漫画『ドラゴンボール』の台詞を借りるなら、“が…外見だけで実力を判断するなといういい見本だ”という山根康広であった。
TEXT:帆苅智之