GAUZEのスリリングなサウンドが
真っ直ぐに飛んでくる
日本ハードコアパンクの傑作
『EQUALIZING DISTORT』

パンクをより凝縮したサウンド

延々と楽屋落ちで申し訳ない。ただ、そうしたのも訳がある。GAUZEは現在ネットで入手できるバンド情報が極端に少ないのである。Wikipediaにはその経歴、ライヴ活動の項目が結構な分量で書かれてはいる。関わりのあった方々が思いを寄せたブログはいくつもあった。しかし、いわゆる一次情報を発信しているサイトは終ぞ発見できなかった。公式サイトはないようだし、“@GauzeOfficial”から発信されている旧Twitterも、解散の報告以降はポストされていないようである。日本を代表するハードコアパンクバンドということは筆者の肌感覚として分かっているし、1981年結成、2022年11月解散というプロフィールは合っているようだ。CDショップの通販サイトから見て、1st『FUCK HEADS』(1985年)、2nd『EQUALIZING DISTORT』(1986年)、3rd『限界は何処だ』(1990年)、4th『面を洗って出直して来い』(1997年)、5th『貧乏ゆすりのリズムに乗って』(2007年)、6th『言いたかねえけど目糞鼻糞』(2021年)という計6枚のオリジナルアルバムを発表していることも間違いなさそうではある。バンドメンバーは…というと、当サイトの“GAUZE(ガーゼ)の情報まとめ”にこうある。〈もはや体力の限界をはるかに超えながらもフルスロットルで繰り出されるモモリン(g)、シン(b)、ヒコ(dr)のたたきつけるような音塊(ノイズ/カオス/バイオレンス)と、フグ(vo)の機関銃のように連射される言葉は、互いのテンションをヒートアップさせながら“原子爆弾”と化す〉。裏取りすることなく出せる情報はこのくらいである。それは、どうやらバンドの信条にもよるところのようで、その辺は後ほど述べるが、GAUZEの一次情報が入手できないため、延々と楽屋落ちを繰り広げたところはある。Wikipediaに掲載された情報はおそらく熱心なファンの方々がお書きなったもので、それはそれで間違ったものではないだろう。しかし、熱心なファンの方々がお書きなったものであれば、なおのこと、ちょいと拝借するわけにもいかない(そもそもあの分量はちょいと拝借できるものでもない)。よって、こういう文章の流れになったことをご理解いただきたい。GAUZEのバイオグラフィを詳しく知りたい方はWikipediaが詳しいのでそちらをご覧いただくのがよろしいかと思うし、当サイトの“GAUZE(ガーゼ)の情報まとめ”もおすすめしたい。

ここからは、『EQUALIZING DISTORT』について述べてみたい。本作に関してもまた一次情報が見当たらなかったため、100パーセント筆者の主観であることを事前に申し上げておく。ハードコアパンクというと、読者のみなさんはどんなイメージを抱くだろうか? 字義通りに捉えれば、パンクという音楽ジャンルの中の文字通りの強硬派ということになるし、それこそWikipediaによれば[パンク・ロックのロックン・ロール色を排し、より暴力性や攻撃性を強調したジャンルである]とある([]はWikipediaからの引用)。もっと噛み砕けば、パンクほどには親しみやすさがなく、騒々しく、危険な音楽となるだろうか。実際、そう思っている人もいらっしゃるかもしれない。そう認識されているのであれば、それはそれでいいのだろう。ただ、今回『EQUALIZING DISTORT』を聴いて、これはパンクから何かを排し強調したということではなく、パンクをより凝縮した音楽ではあると思った。誰もが一聴して感じるのはテンポの速さだろう。初期ロンドンパンクがスローモーに感じるほどに、全曲、性急と言っていいリズムが刻まれている。大半がブラストビートだ。しかし、全てそれ一辺倒かと言えば、そうではない。M4「勝手にさらせ」やM5「Fact and criminal」が分かりやすいけれど、イントロでは各楽器の音符の数が減っていて、少しテンポを落としたように聴こえる。これによって、速さが増したようにも感じるし、M3「Thrash Thrash Thrash」からM4に移る時、あるいはM4からM5へ移る時に、安堵…という言い方は適切ではないけれど、それに似た、アルバム作品ならではのメリハリを強く感じるのである。速さはハードコアパンクにとって、GAUZEの音楽にとって重要な要素であろうが、闇雲に速さだけを追い求めているのではないことがこの辺から想像できる。

OKMusic編集部

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