TM NETWORKが
小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の
三位一体であることがよく分かる
『Self Control』
小室哲哉が創るメロディーの特異性
小室哲哉うんぬんはいったん脇に置いておいて、仮に自分がピアノに向い、その隣り合う白鍵に人差し指と中指を置いてランダムに鳴らして他者の聴いてもらうとする。そこで奇跡的にかつて聴いたことがない旋律が生まれてくることはゼロではないだろうが、九分九厘、面白くも何ともない旋律と思われるだろう。下手をすると、ただ単に五月蠅いだけに思われるかもしれない。少しだけ音楽的素養がある人なら、一定のリズムを持って2音を鳴らせば、少しは面白いと思ってもらえるメロディーが紡がれる可能性はある。ただ、それをしつこく繰り返したら、飽きられること間違いないと思う。つまり、素人が小室哲哉と同じことをやったとして──いや、もしかするとプロがやったとしても、それが音楽として成立するかどうかは微妙と思われる。簡単なメロディーと言ったのはそういうことである。
『Self Control』収録曲にもそうした小室哲哉らしいメロディーを見出すことができる。本作の先行シングルとなったM4「Self Control (方舟に曳かれて)」が最も顕著だろう。「EZ DO~」のような隣り合う2音のみで構成…ということはないけれど、イントロ、サビの主旋律はほぼ3音で鳴らされている(サビ後半の音程が下がるところではもう1音増えているが、それにしても4音だろう)。しかも、その幅もそれほど広くはない。Aメロ、Bメロでは、流石に…というべきか、音は増える(途中、転調もしてるっぽい)。だが、イントロから引き続き、Aメロまでは歌の背後でこの3音が鳴り続け、サビでは歌メロも同じメロディーを奏でると言った具合だ。それが1番だけでも、イントロで6回、Aメロで8回、そしてサビで8回繰り返される。乱暴に言えば、イントロで鳴らされるメロディーがひたすらリピートされる。そういう楽曲である。そこだけで見たら、ループミュージックと言っていいのかもしれない。小室哲哉の源流にはテクノがあるわけで、TM楽曲がそうなるのも当然だろう。大きく分ければ、TM楽曲もダンスミュージックだ。ただ、言うまでもなく、ハウスやトランスなどとは決定的な違いがある。それは歌があるということである。馬鹿みたいな説明で申し訳ない。だが、そういうことである。少ない音で構成されたメロディーのリフレインではあるものの、そのメロディーが同じ楽器で繰り返されるわけではない。DJがひとりでプレイするといったものではなく、演奏者がいて(TMのメンバーは3人だが、ギターやベース、ドラムなどのサポートメンバーもいる)、あくまでもロックであり、ポップスであるというのが決定的なポイントだ。8thシングルでもあったM5「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」はもとより、M2「Maria Club (百億の夜とクレオパトラの孤独)」、M3「Don’t Let Me Cry (一千一秒物語)」、M8「Spanish Blue (遙か君を離れて)」など、アップチューンは、M4ほどではないにしろ、概ねこうしたメロディー構造を持っている。