【ライヴアルバム傑作選 Vol.1】
1980年代のライヴハウスの
熱を見事に閉じ込めた
ライヴオムニバス盤の傑作
『JUST A BEAT SHOW』

1980年代ロックのパッションが結集

この時期、THE BLUE HEARTSはドラマーが不在で、このライヴでは当時KENZI&THE TRIPSのメンバーだった佐藤シンイチロウ(※註:the pillowsのドラマー)がサポートしており、のちにTHE BLUE HEARTSに加入する梶原徹也がこのライヴでチケット切りをしていたというのはファンにはあまりにも有名な話だろう。また、THE BLUE HEARTS解散後、梶原はTHE JUMPSに参加したこともあるようだし、河口純之助は2019年に再結成したTHE LODON TIMESにギタリストとして加入したという。さらには、THE JUMPSの島の誘いでLÄ-PPISCHのマグミが高知でのライヴイベントに参加した…なんて話もあって、今も“JUST A BEAT SHOW”参加バンドのつながりの強固さ、仲の良さをうかがわせるところである。裏を返せば、それほどに当時、結集した面々のパッションは熱かったということにもなるだろうか。

熱いと言えば、THE JUMPSの島である。“JUST A BEAT SHOW”が2002年に通算300回(!)の開催を機に終幕を迎えたのち、彼曰く“ロック弁護士=ROCK’N’LAWYER”を目指してロースクールで学び、見事に2009年に新司法試験に合格。何と、弁護士となった。本当に“ロック弁護士=ROCK’N’LAWYER”が誕生したのである。THE JUMPSも一時期は活動休止していたものの、2011年に活動を再開している(メンバーにはBARBEE BOYSのベーシスト、ENRIQUEが参加している模様)。2022年11月には、実に19年振りとなるアルバム『REBEL BANQUET』を発表したばかりだ。依然、熱い男である。

1960年代、1970年代をリアルタイムで体験してきた人たちの中には、1980年代を不毛だったとか何だと揶揄する人もいる(筆者は実際の耳にしたことがある)。しかし、それは極めて偏狭な見方であることは、『JUST A BEAT SHOW』に収められたバンドたちのその後の活躍を見ればよく分かる。

1980年代、ロックは確かに熱かった。本作はそれを証明する一線級の史料である。

TEXT:帆苅智之

アルバム『JUST A BEAT SHOW』/V.A.1986年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 美代ちゃんのハッパ/LÄ-PPISCH
    • 2. OLD O' CLOCK/LÄ-PPISCH
    • 3. めがねの日本/LÄ-PPISCH
    • 4. 無気力な時代に生きている/THE LONDON TIMES
    • 5. SUNSHINE GIRL/THE LONDON TIMES
    • 6. MONDAY TO FRIEND/THE LONDON TIMES
    • 7. ハンマー (48億のブルース)/THE BLUE HEARTS
    • 8. 人にやさしく/THE BLUE HEARTS
    • 9. 未来はぼくらの手の中/THE BLUE HEARTS
    • 10. NOTHIN' TO DO/THE JUMPS
    • 11. JUMPIN' STRAY ROCKER/THE JUMPS
    • 12. COOL NIGHT/THE JUMPS
『JUST A BEAT SHOW』('86)/V.A.

OKMusic編集部

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