Base Ball Bearの若さ漲る
傑作『C』に
パッケージされた熱情と疾走感
熱量をアップさせている歌詞
《海みたいな彼女が笑った 一口齧った檸檬が成る街で/悪酔いしそうな情熱が 水飛沫あげて、ゆらり、波立った》《CRAZY FOR YOUの季節が ざわめく潮騒の様で/氷漬けの気持ちを溶かすから 海みたいに街中、光って》(M1「CRAZY FOR YOUの季節」)。
《思い出して/大空になる/街に消えゆく、/君の逢いたい》《潮風に乗り/駆け落ちていく/人波の中/溺れたとしても》《夏空を観音開きに封切って、零れた水色/オルゴールに詰めた 君が書いた詩に/俺が曲をつけてくように弾ける、降り始めた雨》(M4「ELECTRIC SUMMER」)。
《思い出に変わる 永遠に変わる 変わらないこともある/考えてみても、どこにもいない 君はもう》《君がいた夏が消えていくよ だから手を振り/君がいたことが笑えてくるよ そう、泣いた後に》《君がいた夏が…消えていくようだから/君がいた夏が…消えていくようだから 手を振り》(M8「DEATH と LOVE」)。
《「夏」が付く名前の少女と 永遠のしばしの別れ/終わりの始まりを始めよう 肌寒い風を合図に/見惚れてた あなたのすべてが揺らぐのを/物語に変わりゆく 君色の記憶》《君色の舞う街に/デスとラヴが渦巻き/踊り続けるふたり/拍手は聞こえない》(M10「ラストダンス」)。
《生きる 君が暮らす 海のようなこの都市で/笑え 淡い想いを ロマンチックで何が悪い》《黒い髪なびかせ 駆ける君はサマーガール/笑う君、ふたたび 夢の中で SHE IS BACK》《思い出はくたばらない/あの夏は帰らない/ダイヤモンドは砕けない/思い出は、NEVER DIE》(M11「SHE IS BACK」)。
《夏》が多いのは意図的ではあろうが、それ以外にも重複する言葉が多く、勢いに任せて…と言うと語弊があるかもしれないが、パッと聴きには変に推敲を重ねた感じがしないように思う。いや、実際には推敲に推敲を重ねた結果こうなったのかもしれないけれど、いずれにしても、打ち出したいものだけをとことん打ち出している印象がある。言葉もまた圧力が強いのだ。それが楽曲全体、ひいてはアルバム全体の熱量をアップさせているのは間違いない。結論を急げば、このようなBase Ball Bear『C』の特徴は(作者がそれを意図した意図しないに関わらず)“若さ”の発露と見ることができる。最初に聴いた時、個人的にどこか座りの悪さを感じたのは、気温うんぬんではなく、筆者の年齢にあったのだと思う。簡単に言えば、もうこの熱を受け止め切れない…ということなのだろう。何も作品を否定しているのではない。逆だ。これほどに“若さ”を見事にパッケージしたアルバムはあまり聴いたことがない。完全に脱帽なのだ。
TEXT:帆苅智之
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