THE SQUAREの
名曲「TRUTH」を深掘りし、
アルバム『TRUTH』から
バンドの特徴を見る
「TRUTH」の要素はアルバムにも
アレンジ面においても、「TRUTH」で見せた編曲の妙が随所で見られる。ウインドシンセ、ギター、キーボードのメロディパートが、楽曲によって主メロの割合が高いパートもあるけれど、いずれかが完全に主役というわけではなく、言わば3トップ体制であること。これもアルバム『TRUTH』の特徴であり、(少なくともこの時期の)T-SQUAREというバンドの特徴と言えるのではなかろうか。これまた、どの楽曲でも見受けられる特徴なのだが、M4「UNEXPECTED LOVER」で示すのが分かりやすいだろうか。イントロではサックスが鳴き、Aメロの主旋律はギター。そこから再びサックス→鍵盤→ギター→サックス…とつながっていく。後半(アウトロ?)ではサックスが厚めで、そのテンションも熱めに感じられるのだが、ギター、鍵盤(エレピ)もとてもいい演奏を聴かせてくれる。「TRUTH」などに比べれば比較的落ち着いた印象のナンバーではあるので、サックスのみで主旋律を奏でていっても良さそうなものだが、そうしてないのは、やはりこのバンドならではのこだわりであろう。ひとつ思うのは、ヴォーカルがいるバンドであれば、歌詞を変化させていくことで、楽曲が進行していく中で世界観を変えていくこともできるけれども、インストではそうもいかない。楽曲そのものを単調に聴かせないために、「TRUTH」がそうであったように、そこにストーリー性を与えるべく、3トップを駆使して楽曲をバラエティー豊かに仕上げているのではないか。そんな気がしないでもない。
あと、本作の特徴として感じられるのはAORの香り。前述のM4「UNEXPECTED LOVER」もそうだし、M6「BREEZE AND YOU」やM9「TWILIGHT IN UPPER WEST」もそうだろうか。アダルトというか、アーバンな雰囲気を漂わす。この辺は1980年代らしいところでもある。イギリスのバンド、ShakatakやSadeといった“スムースジャズ”の影響も少なからずあったのだろうか。また、M3「BEAT IN BEAT」で民族音楽的なリズムを取り入れていることからは、わりと実験的な姿勢があったことも分かる。[初めて全面導入したデジタル機材による実験作であった前作のノウハウを活用し、本作では1990年代に繋がる新たなスタイルを確立することに成功した]との寸評もある([]はWikipediaからの引用)。『TRUTH』は全体的な聴き応えがポップであるから大衆的なアルバムと言って差し支えないとは思うが、だからと言って、決して大衆に阿った作品ではなく、バンドとしての探求心が発揮されたアルバムでもあったようだ。
TEXT:帆苅智之