Kemuriのスタンスが発揮された
『千嘉千涙(senka-senrui)』は
音楽シーンの歴史に刻まれるべき
パンクロックの進化系
スカパンクだからこその躍動感
それだけでも十分にポップなのだが、そこにホーンセクションが加わることで楽曲の奥行きがグッと増しているのが素晴らしい。例えば、『千嘉千涙(senka-senrui)』で言えば、M1「One Life, No Regret」。アップチューンのパンクにブラスが加わることで明るく昇華させている印象。グイグイと来るだけでなく、サウンド全体に絶妙なグルーブ感を与えているのは間違いない。M3「Egotistic And Weak Fragment Of Creation」辺りもそうで、パンク好きのみならず、幅広いリスナーに訴えかけるだけの力があると思う。
また、M8「Into Sands」やM13「Hoshizora To Heishi」のようなミディアムテンポのナンバーがあるのもいい(後者はインスト)。パンクの場合、テンポをそのまま落とすと単なる8ビートになったり、R&Rになったりと、案外バンドアンサンブルを維持するのが難しい。ていうか、ひと筋縄でいかないような印象はあるけれども、スカはジャマイカに渡ってロックステディ→レゲエと発展したように、少しテンポが落ちても成り立つところがある。その辺にKemuriのアドバンテージがあったとも思う。
TEXT:帆苅智之