デヴィッド・ボウイの協力を得て
ロック界屈指の都会派詩人の
名声を確立した
ルー・リードの歴史的名盤
『トランスフォーマー』
ルー・リードの名を
世界に知らしめた出世作
本作はヴェルヴェット・アンダーグラウンド(以下、VU)脱退後、ソロに転じた彼の2作目で、起死回生の一枚だった。というのもセルフタイトルを冠した1st作『ロックの幻想(原題:Lou Reed)』のセールスが振るわなかったのである。VU後、一時は音楽から足を洗ってタイピストの仕事に就いていた彼が周囲に促され再度音楽に向い、気力を漲らせてロンドンに乗り込んで録音したものだったが、内容の良さに反して不発に終わった理由はなんだったのだろうか。私自身、今も「?」という感じなのだ。彼らしいドラマチックで美しいメロディーの曲もあれば、VU時代より遥かにタイトなビートを刻むロックンロールもあり、どれも悪くない。後に大成するルー・リードの音楽性はソロデビュー作にしてすでに形成されている。だが、大半はVU時代に書き溜めた作品であったこと、シングルに向いた曲がなかったことが、セールスに影響したとは言えるかもしれない。が、あえて原因を探るなら、時代がまだ彼に追いついていなかったというべきか。
※ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground):1964年に結成。当初からドラッグやSM、同性愛について歌うなど、ルー・リードの書く文学的な歌詞が話題となる一方、ジョン・ケイルによる前衛的かつ実験的なサウンドなど、同時代のロック、後のオルタナティブ・サウンド、音響派に与えた影響は計り知れない。アンディ・ウォーホルの庇護を受け、デビュー時にはドイツ人女優のニコをゲストに迎え、『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』(’67)を制作している。ウォーホルがデザインした、あまりにも有名なバナナのジャケットである。本連載コラムでも以前ヴェルヴェット・アンダーグラウンドについて紹介しています。ぜひお読みください。
https://okmusic.jp/news/40108