ジム・モリソンの遺作となった
ドアーズの『L.A. ウーマン』は、
自らのルーツを見直した秀作

『L.A. Woman』(‘71)/The Doors

『L.A. Woman』(‘71)/The Doors

ジム・モリソンは数多くのカリスマを生み出してきたロック界でも別格の存在だと言えるだろう。数々の奇行と早逝によって彼の存在は伝説化されていくのだが、神格化はフランシス・フォード・コッポラ監督の映画『地獄の黙示録』(‘79)で使われたドアーズ初期の楽曲「ジ・エンド」(’67)に漂う暗鬱なデカダンのイメージで決定的なものとなった。それまで難解だととらえられていた「ジ・エンド」は、この映画によって明確に“絶望感”を表現した曲と解釈され、苦悩するロックスターというモリソンのイメージが世界的に定着する。今回取り上げるのは、モリソンの遺作となったドアーズの7thアルバム『L.A. ウーマン』で、本作ではロックスター的な雰囲気は消え、飾りっ気のない人間的なモリソンが味わえる秀作となっている。初期ドアーズの大層なイメージに振り回されずに、ぜひ聴いてみてほしい。

ドアーズの結成

ドアーズは大学の映画科で知り合ったジム・モリソンと、主にジャズのコンボに参加していたキーボード奏者のレイ・マンザレクを中心に、フラメンコギターの得意なロビー・クリーガー、ジャズドラマーのジョン・デンズモアというメンバーで、1965年に結成されている。ベーシストはおらず、マンザレクがキーボードのフットベースで代用していた。モリソン以外のメンバーはバンド活動や大学の授業で知り合うなど、音楽・文学・映画・心理学などに興味を持っており、モリソンの文学的知識と詩作の鋭さに惹かれていた。グループは当初からスタイルにはこだわらず、モリソンの前衛的な詩を生かすようなサウンドを目指していたのである。フラメンコをやってはいたが、ジャズ、ロック、ポップスをよく知っていたのはクリーガーで、ドアーズ結成当初は彼がグループの音作りをまとめていた。

違和感あるロックグループ

ロスのいくつかのクラブに出演している時、大手のコロンビアレコードから声が掛かり契約の一歩手前まで行ったのだが、うまくはいかなかった。ベースレスであることや、手本とするロックグループがいないことなどもあって芽が出ずにいた。おそらく、大手レコード会社にそのまま在籍していれば、原型がなくなるほどの大幅なテコ入れがなされただろう。

クラブでの演奏を続けていた時、彼らに目を付けたのはエレクトラレコード主宰のジャック・ホルツマンだった。ホルツマンは音楽を聴くプロフェッショナルで、売れるとか売れないとかに関係なく、良い音楽であればどんなグループでも契約していた。バンド編成や音作りの面で他のロックグループと比べるとドアーズは違和感のあるサウンドであったが、エレクトラに在籍することで伸び伸びと自分たちの音楽を作り上げることが可能となった。

時代はボブ・ディランがアコースティックからエレキにギターを持ち替えた1965年から1年ほどしか経っていなかったが、ロックンロールはいつしか単にロックと呼ばれるようになっていた。当時、最もヒップだったグレイトフル・デッドやジェファーソン・エアプレインらに代表されるサンフランシスコのアシッドロックのブームは、ドアーズの拠点であるロスにも広がっていた。メランコリックで長尺の演奏を繰り広げるサイケデリック(アシッド)ロックの波は全米レベルとなり、ドアーズの違和感は逆にロサンジェルスでは時代の先端を走ることになった。

OKMusic編集部

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