ライ・クーダーとの出会いにより
世界的にも知られるようになった
ハワイアン&
スラック・キー・ギターの
巨星ギャビー・パヒヌイの傑作
そんな、ハワイアンがゆるい、リゾートアイランド音楽のように思われてしまった背景にはエルヴィス・プレスリーの映画による弊害もあったかもしれない。あるいは『ハワイの若大将』? もっともエルヴィスの映画を見た世代はこれまた70歳以上? とにかく、眩しい光と椰子の木々の間を抜けていく風、女たちの腰に巻いたパレオが揺れるフラダンス…。その伴奏音楽だろうと、かつて私が抱いていたのもそんな程度、実にステレオタイプなものだった、このアルバムを聴くまでは。取り上げるのはギャビー・パヒヌイ率いるギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンド(The Gabby Pahinui Hawaiian Band)による『ギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンド・ウィズ・ライ・クーダーVol.(原題:Gabby Band Volume 2)』(’75)、『ギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンド・ウィズ・ライ・クーダーVol.2(原題:Gabby Band Volume 2)』(’77)である。
米英ロック一辺倒だった
洋楽シーンに現れた“圏外”の音楽
その中にボブ・マーリー&ウェイラーズの『ライブ』があった。米英のアーティストで占められた中で唯一のジャマイカのアーティストが入っているというわけだ。といっても、ボブ・マーリーもアイランドレーベルからのアルバムリリースなのであり、米英をメインとした英語圏のリスナーに向けて英語で歌っているわけなので(ロンドン公演)、純然たるエスニック/ワールドミュージックのアーティストが割り込んできたというわけではない。とはいえ、彼らの登場によって刺激的な音楽は何も米英のロックに限ったものではないと気づかせてくれたのは確かだった。ナイジェリアにフェラ・クティというアフロビートの超人がいることが伝わってきたのもその頃だったか…。