世界中にその名を知らしめた名曲
「ラウンドアバウト」を含む
イエスの傑作『こわれもの』
多くのサウンドを盛り込んだ
初期のイエス
2ndアルバムの『時間と言葉(原題:Time And A Word)』(‘70)までのイエスは、サイモン&ガーファンクルに似た美しいコーラスワークを売りに(まだ発展途上ではあるものの)、ジャズ寄りのサイケデリックロック(ビートルズの影響はかなり多いが)を聴かせる技術力の高いグループだった。この時期の特徴はピーター・バンクスのジャズっぽいギターワークで、『イエス・ファースト・アルバム』はロックの中で、ギターのオクターブ奏法を使った最初期のアルバムだと思う。2ndアルバムではオーケストラと共演するなど、1stよりも多彩なサウンドを聴かせてはいるのだが、詰め込みすぎというかポイントが絞りきれていなかった。何より、アルバムの核となる決定的な1曲を生み出せていないのが、リスナーに散漫な印象を与えたと思う。
スティーブ・ハウの加入
ハウの加入後にリリースされた『イエス・サード・アルバム(原題:The Yes Album)』(‘71)は、それまでの2枚のアルバムと比べると、コーラスの重厚さをはじめ(ハウの影響だろうが、この頃からCSN&Yの影響が感じられる)、楽曲の深みや構成の巧みさなど、演奏力は格段にスケールアップしており、メンバーが鼓舞されたことがわかる。ただ、マール・トラヴィスやチェット・アトキンスに影響されたギャロッピング・スタイルのカントリーギターはイエスにはそぐわないと僕は思う。この頃のハウは英カントリーロックグループのヘッズ・ハンズ&フィートに在籍していたアルバート・リーに影響されていたようで、リー風のフレージングが随所に見られる。また、当時としては珍しく、ペダルスティールを模したギター奏法を披露していて、成否は別として彼の先進的かつ実験的な取り組みは、後進のギター奏者への大きな刺激となったことは間違いないだろう。