『She's So Unusua』('83)/Cyndi Laupe

『She's So Unusua』('83)/Cyndi Laupe

今なおガールポップの金字塔!
シンディ・ローパーのデビュー作
『シーズ・ソー・アンユージュアル』

現在、デビュー30周年を祝うスペシャルライヴ『シンディ・ローパー30周年アニヴァーサリー・セレブレーション・ジャパン・ツアー』で来日中のシンディ・ローパー。全世界で1600万枚ものビッグセールスを記録したデビューアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』の30周年記念盤が2014年にリリースされたこともあり、ライヴでもアルバムから全曲を披露しているようだが、やはり彼女の代表作と言えば、もはやスタンダードナンバーと化している名曲「タイム・アフター・タイム」や、シンディ・ローパーの存在を世に広めるきっかけとなった「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」などのヒット曲が数多く収録されているデビュー作だろう。時が流れてもキラめきを失わないポップチューン満載で最初から最後まで飽きさせない。

多感な少女時代に育まれた
シンディ・ローパーのスタイル

 ニューヨークで生まれたシンディ・ローパーは12歳の頃から派手な色に髪を染め、メイクをして奇抜なファッションで街を歩いていたという。『シーズ・ソー・アンユージュアル』のジャケットのカラフルな恰好も当時、話題を集めたが、歌手になる前からシンディはそういう女のコだったのである。17歳の時に家出して、ウェイトレスなどのさまざまなアルバイトをしながら、歌手になるべく下積み生活を送っていたのは有名なエピソード。いきなりデビューアルバムが大ヒットというとシンデレラストーリーを思い浮かべるが、シンディはこの時、すでに30歳だった。幼い時に両親が離婚し、学校にも馴染めなかったという彼女はおそらく、かなり多感な少女時代を過ごしたのだろう。孤独感を味わい、いろいろなことに疑問を持ち、痛みを知っているからこそ、他者の痛みにも敏感に反応する。日本贔屓であることでも有名で阪神淡路大震災では被災者に寄付し、神戸の生田神社の『震災復興節分祭』に出席、東日本大震災直後に予定どおり来日コンサートを行ない、チャリティーのための募金を呼びかけたのも記憶に新しいが、マドンナやマイケル・ジャクソン、プリンスと並ぶ80年代のスーパースターのひとりでありながら、手が届くような親しみやすさと人間臭さを彼女から感じるのは、そういうルーツが関係しているのかもしれない。そして、今なおシンディ・ローパーは「みんなと同じじゃなくたっていいのよ」と言わんばかりに真っ赤な髪でステージに立ち、オーディエンスに元気を与え続ける永遠のガールポップの女王である。

アルバム
『シーズ・ソー・アンユージュアル』

 全10曲中、4曲が全米チャートでシングルトップ10入りを果たした80年代のミュージックシーンを語る上で欠かせない一枚。《お金は全てを変えちゃうのよ》と歌うオープニング曲「マネー・チェンジズ・エヴリシング」でシンディのキュートで伸びやかな歌声に惹き込まれ、全米2位のヒット曲「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」は“女のコはただ今を楽しんでいたいのよ”と歌う胸キュンメロディー炸裂のナンバー。シンディ・ローパーが女子からも熱い支持を受けていたのは、自由奔放なファッションのみならず、縮こまる心を解き放つメッセージが共感されていたからでもある。プリンスのカバー「ホェン・ユー・ワー・マイン」も含まれた本作に奥行きを与えているのはマイルス・デイヴィスを始めジャンルを超えて多くのミュージシャンにカバーされた名バラード「タイム・アフター・タイム」だ。日本でもMr.Childrenや槇原敬之などがカバーしているが、彩り豊かにはじけたナンバーの中に胸を締め付けるような切ないメロディーと彼女のセンシティブな一面を感じさせるこの曲が収録されていたことが、“歌い手、シンディ・ローパー”をさらに飛躍させていったように思う。個人的に当時、一番好きだったのはサビのマイナーなメロディーがクセになる3rdシングル「シー・バップ」だったが、大阪公演ではこの曲をリコーダーを吹いて披露したそうだ。とにかく、このアルバムは全ての曲がシングルとしても成立するほどポップで輝いている。スイートでやんちゃでパンチがあるシンディのヴォーカル、当時のニューウェイブ、パンクのエッセンスが盛り込まれたサウンド、躍動感のある曲たちは今も“ここから飛び出したい”と思っているキッズの心をざわざわさせるのではないだろうか。

著者:山本弘子

OKMusic編集部

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