デビュー時から独自のルーツ志向を
突き進むロス・ロボスの
『ハウ・ウィル・ザ・
ウルフ・サヴァイヴ?』

『How Will The Wolf Survive?』('84)/LOS LOBOS

『How Will The Wolf Survive?』('84)/LOS LOBOS

チカーノ・ロックの大スター、リッチー・ヴァレンスの生涯を描いた87年の映画『ラ・バンバ』で主題歌を歌い全米1位を獲得、一気にその名が知られたロス・ロボス。彼らもヴァレンス同様、メンバーのほぼ全員がチカーノである。チカーノとはメキシコ系アメリカ人を指し、チカーノロックとは文字通りメキシコ系アメリカ人のルーツを生かしたロックのことである。サンタナやマロなどもチカーノロックと呼んでも差し支えはないが、年配の人間にとってはラテンロックという呼び方のほうが親しみやすいかもしれない。今回はチカーノのルーツを大事にしながらもロックの楽しさをいっぱい詰め込んだ彼らの3枚目のアルバム『ハウ・ウィル・ザ・ウルフ・サヴァイヴ?』を取り上げる。

メジャー・シーンと
インディーズ・シーン

70年代後半から80年代の初頭、いわゆるポストパンク時代のアメリカでは、MTV(81年開局)によく登場するメジャーレーベルのアーティストやディスコで人気のあるグループとは違い、地元ライヴハウスでひたすら腕を磨くインディーズのアーティストたちが多数いて、メジャーとインディーズのチャート(カレッジ・メディア・ジャーナル等)では、同じロックでもそれぞれ違ったサウンドに注目が集まっていた。

ちなみに、83年のビルボード年間チャートとカレッジ・メディア・ジャーナル(以下CMJ)を比べてみると、ビルボードではマイケル・ジャクソンの『スリラー』、メン・アット・ワークの『ワーク・ソングス(原題:Business as Usual)』、ポリスの『シンクロニシティ』、ホール&オーツの『H2O』、プリンスの『1999』、ライオネル・リッチーの『ライオネル・リッチー』などが上位を占めている。CMJでは、U2の『ウォー』、カルチャー・クラブの『キッシング・トゥ・ビー・クレバー』、イングリッシュ・ビートの『スペシャル・ビート・サービス』、デビッド・ボウイの『レッツ・ダンス』、プリンスの『1999』と、意外にも僕が思ってるより大差はなかった。実はメジャーとインディーズに違いが出るのはもう少し後(80年代後半以降)になってからなのだが、CMJではこの年すでにR.E.M.(7位)やヴァイオレント・ファムズ(13位)など、インディーズのアーティストがチャートインしているのは興味深い。

当時、ビルボードで上位に入っているのは、メロディーの美しさ、ハイレベルの演奏技術、ダンサブル(ディスコが流行していたので)な作品が多いように思う。一方、CMJではテクニックは稚拙であってもパンクスピリットを持っていたり、ダイナミズムが感じられたりする作品に注目が集まっていたようだ。要するに、この頃からじわじわとオルタナティブロックの微風が吹き始めていたのである。

スラッシュ・レコードの躍進

70年代終わりにロスで設立されたスラッシュレコードは、インディーズのパンクロッカーを世に出すべく活動していた。このレーベルに在籍していたのは、西海岸で最もうるさいロックバンドと言われていたXやパンカビリー(パンク+ロカビリー)のブラスターズなどで、彼らには多くのファンがついていたことから、スラッシュはメジャーのワーナーブラザーズが配給することに決まった。

イーストL.A(チカーノが多い)のライヴハウスではブラスターズやXの他、ミニットメン、ブラック・フラッグなど、グランジやオルタナティブロックのアーティストと並んで、80年初頭にはロックンロールやテックス・メックスを演奏するロス・ロボスもまた活動していた。

ロス・ロボスの結成

メンバーのデビッド・イダルゴ(Gu)とルーイ・ペレス(Dr)は高校の同級生で、フェアポート・コンヴェンションやライ・クーダーを好んで聴いていたことから、お互いを変人と思いつつも仲良くなり、グループを結成することになる。そして、セサル・ロサス(Vo)とコンラッド・ロサーノ(Ba)が加わって、74年にはほぼ現在のメンバーが揃っている。最初はクリームやジミヘンのコピーからスタートし、トップ40の曲を演奏したりもしていたのだが、イーストL.Aに住むチカーノの間でメキシコ音楽を見直そうという運動があり、彼らもまた古いメキシコの曲を演奏するようになる。

そして、1978年には全編スペイン語のデビューアルバム『ジャスト・アナザー・バンド・フロム・イースト・L.A(スペイン語の原題:Del Este De Los Angeles)』を自主制作でリリースする。余談だが、このアルバムのタイトルはフランク・ザッパが72年にリリースしたアルバム『ジャスト・アナザー・バンド・フロム・L.A』をもじったものである。このアルバムでは本気のメキシコ音楽にチャレンジしており、88年にリリースする『ピストルと心(原題:La Pistola Y El Corazon)』はこの続編とも言えるだろう。

OKMusic編集部

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