巧みなサウンドプロデュースが光る
リトル・フィートの
4thアルバム『アメイジング!』
3rdアルバム
『ディキシー・チキン』の衝撃
アルバム全編を貫いているのは、ブルース、R&B、ファンク、ソウルなどをごった煮(ガンボ)にした彼らにしか生み出せないロックである。各種のアメリカンルーツ音楽を、原形をとどめないぐらいかき混ぜた音楽とでも言えばいいか。そういう意味では、まったく手法は違うがザ・バンドの諸作と似通ったところがあるかもしれない。少なくとも、何度聴いても飽きないところはザ・バンド的である。当時はリトル・フィートのアルバムは日本盤がリリースされていなかったので、電車賃を使って都市部にある輸入盤専門店まで行かなければならなかったのはつらかった(高校1年で万年金欠だったから…)。
本作『アメイジング!』について
ローウェルとペインの共作「ザ・ファン」は変拍子で、以降のプログレ/フュージョン路線を予告するようなナンバー。アルバムの最後を締め括るのは『セイリン・シューズ』に収録されていた「コールド・コールド・コールド」と「トライプ・フェイス・ブギ」のメドレーで、両者を聴き比べてみるのも面白い。
ローウェルのスライドギターはもちろん、リードヴォーカルもこれまでで最高のパフォーマンスであり、僕は『ディキシー・チキン』と『アメイジング!』の2枚にローウェルの思い描く音楽が凝縮されていると考えている。「ザ・ファン」の代わりに『ラスト・レコード・アルバム』収録の「ロング・ディスタンス・ラブ」が収録されていれば最高なのになあ…とも思う。
余談になるが、本作にエミルー・ハリスやボニー・レイットと一緒にバックボーカルで参加しているフラン・テイトは、このときペインのガールフレンドで、のちに結婚している。
なお、本作から、ようやくリトル・フィートの日本盤がリリースされるようになった。
TEXT:河崎直人