ロックの原点に立ち返り
全米1位に輝いた
バッド・カンパニーの
『バッド・カンパニー』
バッド・カンパニーの登場
ちょうどツェッペリンが設立したばかりのスワンソング・レコードは大手レコード会社と違って自分のやりたい音楽ができる環境にあったため、新興レーベルではあったが契約を交わす。同時にマネジメントはピーター・グラントに任せる。グラントはスワンソングの社長でもあり、少々荒っぽい性格であったが、ツェッペリンをスターに仕立てた敏腕マネージャーとして知られる。
本作『バッド・カンパニー』について
収録曲は全部で8曲。彼らの名を一躍世界に知らしめた「キャント・ゲット・イナフ」(ミック・ラルフス作、全米5位)は、うねるベース、跳ねるドラム、ロジャースの伸びやかなヴォーカル、ラルフスのメロディアスなギターソロなど、どこを切り取ってもロックの醍醐味を体感できる名演である。フリーを思わせるハードロックの「ロック・ステディ」、ラルフスの手になる「レディ・フォー・ラブ」はモット・ザ・フープルのカバー。ボズのファンキーで重心の低いベースプレイと、ロジャースの美しいピアノが素晴らしいナンバーだ。ゴスペルっぽい「ドント・レット・ミー・ダウン」はゲストのメル・コリンズ(キング・クリムゾン他)のサックスとロジャースのヴォーカルの豊かな表現力が味わえる。「ザ・ウェイ・アイ・チューズ」はサザンソウルの影響が感じられるナンバーで、サックスもリズムセクションもアメリカ南部のミュージシャンのような泥臭い演奏を聴かせているのには驚かされる。ロジャースの抑えたヴォーカルは味わい深く、隠れた名曲だと思う。ザ・ローリング・ストーンズのような雰囲気の「ムーヴィン」は第二弾シングル曲でもあり、ライヴでは必ず盛り上がる代表曲のひとつ。アルバムの最後を飾る「シーガル」はロジャースがひとりで歌と楽器を演奏していて、フリーの初期を思わせるフォーキーなナンバーだ。
本作はリリースから45年が経過してはいるが、音自体は少しも古くなっていない。彼らの骨太のサウンドは時代に関係なく、良き時代のロックの魅力がいっぱい詰まっている。彼らのアルバムは2ndの『ストレート・シューター』(‘75)、3rdの『ラン・ウィズ・ザ・パック』(’76)まではどれも甲乙付け難い名作揃いなので、バッド・カンパニーのことを知らない若い人にぜひ聴いてもらいたい。
TEXT:河崎直人