大晦日からニューイヤーへ。
全盛期のザ・バンド+ディランの
傑作ライヴで新年を熱く楽しむ

ディラン&ザ・バンドの最高の瞬間

そして、『ライヴ・アット・アカデミー~』をことさらドラマチックなものにしているのが、コンサート(12/31)にサプライズ・ゲストとして出演したボブ・ディランとザ・バンドの音源である。通常盤のディスク2、デラックス盤のディスク4にそれぞれ4曲(「ダウン・イン・ザ・フラッド」「傑作をかく時(原題:When I Paint My Masterpiece)」「ヘンリーには言うな(原題:Don’t Ya Tell Henry)」「ライク・ア・ローリング・ストーン」)のディランのステージが収められている。同じ曲なのだが、これも微妙に長さが異なる(イントロ、等々)。ついでに触れておくと、2009年に『ロック・オブ・エイジズ』の増補版(Expanded Edition)が出ているのだが、こちらにもディランの同じ4曲が収められている。リハなしのぶっつけ本番だったというのだが、これが信じられないくらい息の合っ他共演で、しかも「何かあったのか?」と勘ぐりたくなるような、数あるディランのライヴの中でも群を抜くアグレッシブなもの。溌剌としているというか、奔放と言うべきか、ぶっ飛んでいる。大晦日という祝祭的なシチュエーションも手伝い、喜びにあふれ、エモーショナルに躍動する彼らの姿がとらえられている。この時の手応えが布石となって、ディランは1974年のザ・バンドを伴ってのツアー、そして共演ライヴ作『偉大なる復活(原題:Before the Flood)』(‘74)を視野に入れたのかもしれない。ディランの出来がそれほどでもなければ、ロビーは彼との共演パートを、アルバムのエンディングに加えなかったかもしれない。それにディランの音源を加えることは、ザ・バンドのライヴとしての統一感が失われてしまうかもしれず、アルバムの印象をディランに奪われかねない。だが、そうした心配は杞憂に過ぎず、アルバムはあの「ライク・ア・ローリング・ストーン」をもって、尋常ではない盛り上がりを持って終演を迎える。こうして、ザ・バンドの傑作ライヴとして、ディランとの共演も含め、輝かしい自分たちの姿を記録に留めるべく、ドキュメンタリー作品のように構成する。ロビーの狙いはそのあたりだろうか。こうして良いかたちでアルバムを再構築し、我々のもとへ届けてくれたことに感謝しかない。彼の功績に敬意を示しつつ、年を跨いでしまったが改めて追悼の意を表したい。

RIP. Jaime Royal "Robbie" Robertson(1943年7月5日 - 2023年8月9日)

改めてニューイヤーを熱く迎えるにぴったりなアルバムではないかと思う。一度聴いてしまうと、頭にしばらくこびりついてしまうくらい強烈だが、おすすめしたい。大きな音で!

TEXT:片山 明

アルバム『ライヴ・アット・アカデミー・オブ・ミュージック 1971 ロック・オブ・エイジズ・コンサート デラックス・エディション』2013年発表作品
    • <収録曲>
    • ■DISC 1
    • 01. W.S. ウォルコット・メディシン・ショー/The W.S. Walcott Medicine Show
    • 02. ザ・シェイプ・アイム・イン/The Shape I’m In
    • 03. カレドニア・ミッション/Caledonia Mission
    • 04. ドント・ドゥ・イット/Don’t Do It
    • 05. ステージ・フライト/Stage Fright
    • 06. アイ・シャル・ビー・リリースト/I Shall Be Released
    • 07. クリプル・クリーク/Up On Cripple Creek
    • 08. 火の車/This Wheel’s On Fire
    • 09. ストロベリー・ワイン (Previously unissued performance)/Strawberry Wine
    • 10. キング・ハーヴェスト/King Harvest (Has Surely Come)
    • 11. タイム・トゥ・キル/Time To Kill
    • 12. オールド・ディキシー・ダウン/The Night They Drove Old Dixie Dow
    • 13. ロッキー越えて/Across The Great Divide
    • ■DISC 2
    • 01. カーニバル/Life Is A Carnival
    • 02. ゲット・アップ・ジェイク/Get Up Jake
    • 03. ラグ・ママ・ラグ/Rag Mama Rag
    • 04. アンフェイスフル・サーヴァント/Unfaithful Servant
    • 05. ザ・ウェイト/The Weight
    • 06. ロッキン・チェアー/Rockin’ Chair
    • 07. スモーク・シグナル/Smoke Signal
    • 08. うわさ(ザ・ルーマー)/The Rumor
    • 09. ザ・ジェネティック・メソッド/The Genetic Method
    • 10. チェスト・フィーバー/Chest Fever
    • 11. ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ/(I Don’t Want To) Hang Up My Rock And Roll Shoes
    • 12. ラヴィング・ユー・イズ・スウィーター・ザン・エヴァー/Loving You Is Sweeter Than Ever
    • 13. ダウン・イン・ザ・フラッド(with ボブ・ディラン)/Down In The Flood (The Band with Bob Dylan)
    • 14. 傑作をかく時(with ボブ・ディラン)/When I Paint My Masterpiece (The Band with Bob Dylan)
    • 15. ヘンリーには言うな(with ボブ・ディラン)/Don’t Ya Tell Henry (The Band with Bob Dylan)
    • 16. ライク・ア・ローリング・ストーン(with ボブ・ディラン)/Like A Rolling Stone (The Band with Bob Dylan)
    • ■DISC 3
    • 01. クリプル・クリーク/Up On Cripple Creek
    • 02. ザ・シェイプ・アイム・イン/The Shape I’m In
    • 03. うわさ(ザ・ルーマー)/The Rumor
    • 04. タイム・トゥ・キル/Time To Kill
    • 05. ロッキン・チェアー/Rockin’ Chair
    • 06. 火の車/This Wheel’s On Fire
    • 07. ゲット・アップ・ジェイク/Get Up Jake
    • 08. スモーク・シグナル/Smoke Signal
    • 09. アイ・シャル・ビー・リリースト/I Shall Be Released
    • 10. ザ・ウェイト/The Weight
    • 11. ステージ・フライト/Stage Fright
    • ■DISC 4
    • 01. カーニバル/Life Is A Carnival
    • 02. キング・ハーヴェスト/King Harvest (Has Surely Come)
    • 03. カレドニア・ミッション/Caledonia Mission
    • 04. W.S. ウォルコット・メディシン・ショー/The W.S. Walcott Medicine Show
    • 05. オールド・ディキシー・ダウン/The Night They Drove Old Dixie Down
    • 06. ロッキー越えて/Across The Great Divide
    • 07. アンフェイスフル・サーヴァント/Unfaithful Servant
    • 08. ドント・ドゥ・イット/Don’t Do It
    • 09. ザ・ジェネティック・メソッド/The Genetic Method
    • 10. チェスト・フィーバー/Chest Fever
    • 11. ラグ・ママ・ラグ/Rag Mama Rag
    • 12. ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ/(I Don’t Want To) Hang Up My Rock And Roll Shoes
    • 13. ダウン・イン・ザ・フラッド(with ボブ・ディラン)/Down In The Flood (with Bob Dylan)
    • 14. 傑作をかく時(with ボブ・ディラン)/When I Paint My Masterpiece (with Bob Dylan)
    • 15. ヘンリーには言うな(with ボブ・ディラン)/Don’t Ya Tell Henry (with Bob Dylan)
    • 16. ライク・ア・ローリング・ストーン(with ボブ・ディラン)/Like A Rolling Stone (with Bob Dylan)
    • ■DVD
    • 01. W.S. ウォルコット・メディシン・ショー/The W.S. Walcott Medicine Show
    • 02. ザ・シェイプ・アイム・イン/The Shape I’m In
    • 03. カレドニア・ミッション/Caledonia Mission
    • 04. ドント・ドゥ・イット/Don’t Do It
    • 05. ステージ・フライト/Stage Fright
    • 06. アイ・シャル・ビー・リリースト/I Shall Be Released
    • 07. クリプル・クリーク/Up On Cripple Creek
    • 08. 火の車/This Wheel’s On Fire
    • 09. ストロベリー・ワイン/Strawberry Wine
    • 10. キング・ハーヴェスト/King Harvest (Has Surely Come)
    • 11. タイム・トゥ・キル/Time To Kill
    • 12. オールド・ディキシー・ダウン/The Night They Drove Old Dixie Down
    • 13. ロッキー越えて/Across The Great Divide
    • 14. カーニバル/Life Is A Carnival
    • 15. ゲット・アップ・ジェイク/Get Up Jake
    • 16. ラグ・ママ・ラグ/Rag Mama Rag
    • 17. アンフェイスフル・サーヴァント/Unfaithful Servant
    • 18. ザ・ウェイト/The Weight
    • 19. ロッキン・チェアー/Rockin’ Chair
    • 20. スモーク・シグナル/Smoke Signal
    • 21. うわさ(ザ・ルーマー)/The Rumor
    • 22. ザ・ジェネティック・メソッド/The Genetic Method
    • 23. チェスト・フィーバー/Chest Fever
    • 24. ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ/(I Don’t Want To) Hang Up My Rock And Roll Shoes
    • 25. ラヴィング・ユー・イズ・スウィーター・ザン・エヴァー/Loving You Is Sweeter Than Ever
    • 26. キング・ハーヴェスト(アーカイヴ・フィルム)/King Harvest (Has Surely Come) (Previously Unissued Performance) (Archival Film Clips-December 30, 1971)
    • 27. W.S. ウォルコット・メディシン・ショー(アーカイヴ・フィルム)/The W.S. Walcott Medicine Show (Previously Unissued Performance) (Archival Film Clips-December 30, 1971)
『Live At The Academy Of Music 1971 : The Rock Of Ages Concerts』(‘13) / The Band

OKMusic編集部

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