仏コメディ映画の愛すべき鬼才、
ジャック・タチの世界を彩った、
楽しさあふれるサウンドトラック

マニア心をくすぐる?
ミュージシャンの中にも
ジャック・タチ信奉者が

映画ファンや演劇人に愛されているのはもちろんだが、ジャック・タチのサウンドトラックは案外、日本のミュージシャンにも好まれている。その筆頭となるのは、かつて松尾清憲さんや鈴木さえ子さんらとシネマ(CINEMA)というグループを組まれていた一色進さんは、タチ愛が嵩じてジャック達というグループを率いて活動されていた(アルバムの配信もある)。また鈴木慶一氏率いるムーンライダースのキーボーディストで、惜しくも今年2月に亡くなられた岡田徹さんも、ジャック・タチの映画、そしてサウンドトラックを愛された方だった。ムーンライダース、ソロ活動と並行してCM音楽、映画音楽と多彩な音楽制作に携わってこられたその仕事には、きっとタチ映画に習うところもあったのだろうと推察する。ことに、ジャック・タチの映画に見られる映像と音楽、互いが喚起し合うというのか、その絶妙の関係性は意図したものではないと思うが、ちょっとトリックのように巧みなのだ。そしてまた、細野晴臣さんもジャック・タチを愛するひとりで、子供の頃にジャック・タチの映画を観て、親にねだって買ってもらったのが『ぼくの伯父さん(Mon Oncle)』のテーマ曲のシングル盤だったというエピソードを、とあるネットのブログで語っておられた。

引き合いに出させていただいたアーティストはみな、ひとひねり、ふたひねりもある通好みのポップスセンスの持ち主であり、自分のつくる音楽の影響元=ルーツというのを、同じ領域のポップスやロック、ブルース、ジャズといったフィールドだけでなく、映画音楽に求めるという探究心、好奇心の持ちように、なるほどと感心させられる。

こうしてモリコーネをきっかけに、なぜかジャック・タチの音楽が脳内に再生され、映画音楽そのものを考えたりしていたのだが、考えてみればライ・クーダーやランディ・ニューマン、ヴァンゲリスといったロックやポップス界にも映画音楽に関わるアーティストはいる。もちろん細野晴臣さんも加えたほうがいいかもしれない。一方、今年はバート・バカラックが天寿を全うし、なんということか!坂本龍一さんまで亡くなられてしまった。また別の機会に、彼らの映画音楽もコラムで紹介できればと思う。

TEXT:片山 明

アルバム『ぼくの伯父さん~ジャック・タチ作品集』オリジナル・サウンドトラック1995年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 半袖シャ 
    • 2. 祭りの日 
    • 3. 旅役者たちの歌 
    • 4. 駈足配達 
    • 5. パリの天気はどう? 
    • 6. ぼくの伯父さん - アディオス・マリオ 
    • 7. 古い街 
    • 8. 3つのテーマのヴァリエイション 
    • 9. ドラッグ・ストアにて 
    • 10. 回転木馬 
    • 11. 昔のパリ 
    • 12. アフリカのテーマ 
    • 13. ストランド音楽 
    • 14. スーパー・マーケット 
    • 15. パリ・サーカス
    • 16. プレイ・タイム
Blu-ray『ジャック・タチ「ぼくの伯父さん」』1958年公開作品
アルバム『ぼくの伯父さん~ジャック・タチ作品集』オリジナル・サウンドトラック
Blu-ray『ジャック・タチ「ぼくの伯父さん」』

OKMusic編集部

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