アニマルズ解散後、
エリック・バードンが挑んだ新境地

「Eric Burdon Declares "War"」と
タイトルもキマる

アルバムから「Spil The Wine」がいきなり全米3位という、とんでもない大ヒットが出る。他の曲でもそうなのだが、バードンがウォーの演奏に乗って熱く歌い上げるのかと思いきや、“ソウル語り”とでも言えばいいだろうか、詞を読み上げるふうに歌うのだ。これはヒップホップ感覚に近い。こうしたソウル、ファンクミュージックにスポークンワードを乗せるスタイルというのは例えば代表的なアーティストではギル・スコット・ヘロン(Gil Scott-Heron)ぐらいしか思いつかないが、スコット・ヘロンがアルバムデビューするのだって1970年なので、バードンが彼のスタイルを知っていたとは思えない。スポークンばかりではなく、多分にメロディ、グルーヴに乗せている曲ももちろんあるが、そのサジ加減が絶妙なのだ。そんなところが今聴いても妙に新鮮なのだ。

冒頭、ロニー・ジョーダンのニューオリンズ感たっぷりに見事なピアノでキメる「The Vision of Rassan Medley: Dedication / Roll On Kirk」がとにかくカッコ良い。ウォーのメンバーらの共作で、タイトル通り、これはジャズのホーン奏者の巨人ローランド・カークに捧げられた曲。いきなり8分近い長尺曲だが、セッションの延長のように互いのリズムを掴みながら、バードンが当意即妙に歌詞を載せていったのではないか。続く「Tobacco Road: Tobacco Road / I Have a Dream / Tobacco Road」もメドレー形式になっているが、1曲目と同じリフレインがベース。この曲はオリジナルはジョン.D.ラウダーミルク(John D Loudermilk)というシンガーが書いたもので、ヒットさせたナッシュヴィル・ティーンズをはじめ、多くのアーティストにカバーされている有名曲。アニマルズでもカバーしていたので勝手知ったる風に自在にスポークンスタイルも入れながら、バードンはまるでJBみたいに歌い飛ばしている。

OKMusic編集部

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