それは心の叫びだったのか。
苦悩の中から生まれた
ジョー・コッカーの傑作
『アイ・キャン・スタンド・
ア・リトル・レイン』
全曲シングルカットできそうな
粒ぞろいの曲(超豪華作曲家陣が提供)
その後も、アルコールとの付き合いは長く続いたようだが、コッカーは崖っぷちのところで踏みとどまる。1982年にコッカーがジェニファー・ウォーンズとのデュエットで歌った「愛と青春の旅立ち(原題:Up Where We Belong)」がアカデミー歌曲賞、 ゴールデングローブ賞 主題歌賞を受賞し、全米1位を記録する。ウッドストックのパフォーマンスではなく、この曲および MTVのヴィデオ等ではじめてコッカーのことを知った人も多かったと思う。歌の上手さ、シャウターぶりは健在だったが、すっかり老けた風貌からはドラッグ、アルコールとの厳しい闘いをうかがわせた。
ピーク時の圧倒的な存在感、パフォーマンスを越えることはできなかったかもしれないが、コッカーは困難なサバイバルに勝ち、アルバム制作を続け、1993年にはブリット・アワードの最優秀英国人男性部門にノミネートされたほか、2007年に故郷のシェフィールドの名誉市民に選ばれ、また音楽への貢献で大英帝国勲章を得ている。そう、今では立派に正式名称は「John Robert Cocker OBE」と表記されるわけである。コッカーは2014年、肺ガンのため、70歳の生涯を閉じている。
一度聴いてみてほしい。ジョー・コッカーの熱い歌を。
TEXT:片山 明