祝・上京! 東京に住む全ての田舎も
んに贈る“東京”と名が付く5曲

入学、進学、就職、転職の季節である4月。この4月から上京して、東京で新しい生活を始める人も多いと思いますが。僕が長野の田舎から上京したのはもう22年前、1993年のこと。将来のこととかどうでも良くて、とにかく東京に行きたくて。名前だけ書ければ合格するような専門学校に入学して、初めての一人暮らしや東京生活を思い切り謳歌していた時期だったと思います。ということで、今回選んだのは“東京”をテーマにした楽曲たち。僕みたいな田舎もんにとっての憧れであり、恐怖でもあった、花の都・東京。東京というフィルターを通して見える自分や君、忘れちゃいけない物や大切な物など、「東京」を題材にした楽曲を聴き比べて、上京したあの頃の気持ちを思い出してみては?

1.「東京」('13)/KANA-BOON

人気絶頂、若手ロック・バンドの台頭と言えるKANA-BOONの歌う「東京」は、いなくなってしまった“君”への想いを綴る、ミディアム・テンポのラブソング。《君のスカートの中 僕のスタートラインさ》なんて表現にも個性を感じるこの曲。“東京”を“君のいる場所”という定義で歌い、東京にいるはずの君とどこかで出会えるのでは? と男の子ならではのセンチメンタリズムを綴っているのが面白く、アリの巣みたいなこの街で感じる孤独や寂しさに、田舎もんが東京に想うことは昔も今も変わらないのだなと思わされました。

2.「東京」('05)/銀杏BOYZ

僕が“東京”というタイトルでまっ先に思い浮かんだのがこの曲。僕と別れて郡山へと帰った君を想うこの曲も、“東京”に君を重ね合わせた失恋ソング。映画のように映っていた何でもない東京の景色が、君を失った瞬間に鈍色へと変わる。美しさと残酷さ、その両極端な面を持ち合わせるのが、東京という街のような気がします。そして、約10年の時を経て、2014年発売のアルバム『BEACH』には、ライブミックスの「東京終曲」が収録。ノイジーなサウンドと情念込めた歌声で、東京の美しさと残酷さをより深く表現するこの曲はまさに終曲。ヘヴィなMVも含めて、この曲の完成形を見せてくれました。

3.「東京」('09)/長渕剛

《死にたいくらいに憧れた 花の都“大東京”》と歌ったのは「とんぼ」ですが、憧れの象徴としての“東京”がちょいちょい出てくる長渕楽曲。ズバリ“東京”と題したこの曲は、上京した君に贈るメッセージソング。“人の歩く早さや人の多さに驚かされながら、きっと慣れていくんだね”と語りかける歌詞は自分が上京した時のことも思い出させ、“君の目の前は恐ろしい早さで変わるけど、その真っ直ぐな瞳だけは変わるな”と訴えかける歌詞に、ドキッとさせられる。君という存在を通じて、忘れてはいけない初心を歌うような長渕に良い意味での田舎もん根性を感じ、彼の強さと魅力の秘密が少し分かった気がした。

4.「TOKYO」('99)/SADS

《TOKYO 狂った街》のワンフレーズで、“東京”を言い表しているこの曲。日常を切り裂くようなヘヴィでソリッドなサウンドは日々、見えない敵と戦い続けているような東京の日々、混沌や混乱を表しているよう。また、清春が黒夢を活動休止して、SADSとしての活動を始めたばかりの重要な時期にリリースされた楽曲ということもあり、《途切れた黒い夢に今日もまどわされる》と始まる歌詞には、自身の苦悩や葛藤も現れており、切迫感のある感傷的な歌声がグッと胸に迫ってくるのも、この曲の魅力です。

5.「俺ら東京さ行ぐだ」('84)/吉幾

田舎もんが描く東京像と言ったら、この曲を外すわけにはいかない。田吾作スタイルの吉幾三が《テレビも無ェ ラジオも無ェ》と歌う姿は、子供心に衝撃的だった! しかし、僕もそうだが、東京に出てきた一番の理由は《俺らこんな村いやだ》のひと言に尽きる。今は“マイルドヤンキー”なんつって、一度も東京に出ることなく地元で暮らす人も多いらしいけど。個人的には人生経験として一度は東京で暮らして、大都会に揉まてみると、人間的にかなりたくましくなれると思いますよ。ちなみに誰かこの曲、カバーしてるのかな? と思い調べてみたところ、仙台貨物がカバーしてました。流石です!(笑)

著者:フジジュン

OKMusic編集部

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