秋と言えば読書の秋。いつもは本を読まない人でも、秋の夜長には読書にチャレンジしてみようという気持ちになる人も多いのではないでしょうか。というわけで、今回は、読書の秋にぴったりな文学性の高い楽曲をご紹介! 本だけではなく、音楽でも文学に触れてみましょう!

1.「ZOO」('89)/ECHOES

もともとは、現在作家として活動中の辻仁成さんが川村かおりさんに提供し、1988年にリリース。のちに辻さんが所属するロックバンド・ECHOESが1989年にセルフカバーとしてリリース。2000年にフジテレビ系列で放送された辻脚本のテレビドラマ『愛をください』の主題歌として、菅野美穂さんが歌ったことでも知られています。芥川賞の受賞経験もある辻さんによる、人間社会を動物に例えた歌詞は、日々ストレスを抱えて生きている人であれば共感できるでしょう。楽曲の良さももちろんですが、歌詞だけを取っても高い文学性を持った歌詞です。

2.「トリセツ」('15)/西野カナ

西野カナさんが今年リリースした、現時点での最新シングル。リリース当時もその歌詞の内容からSNSなどを中心にかなりのバズりを起こしましたが、確かに“現代版逆関白宣言”とも言うべき歌詞は、高い文学性以外の何物でもないと思います。そのまま出すとワガママと取られがちな女の子の要望を、取扱説明書というモチーフで見事に描き切っています。男性から女性に要望を出すという時代はもう古い。これからは女性も男性と同じ立場で要望を出していくというのを、現代女子の代弁者である西野カナさんが歌ったというのは大きな意義があると思います。

3.「少年時代」('90)/井上陽水

1990年リリース。現在も歌い継がれる井上陽水さんのヒット曲です。一瞬にして少年時代の風景が広がるイントロも素晴らしいですが、同じ…いや、それ以上、文学性の高い歌詞でその世界観を広げています。「風あざみ」「宵かがり」という言葉が実際に存在しないということを知った時に、その事実に感動して鳥肌が立った人は僕だけではないはず。そもそも、親交の深かった藤子不二雄A先生原作の映画『少年時代』の主題歌として依頼された楽曲でしたが、陽水さんはツアーを1カ月先送りにしてこの曲作りに没頭していたそうです。

4.「深夜高速」('04)/フラワーカン
パニーズ

2004年にリリースされた楽曲。自分のこれまでの人生を省みて、そして不安を抱えながらも強い決意によって明日を見つめる歌詞。ライヴ会場へ車で移動している、そんな状況から産まれたこの曲は、文学性の高さもさることながら、聴く者の心を打つ、そんな形容できないパワーを持っています。《生きててよかった そんな夜を探してる》という、ストレートだけど心震わせるサビの言葉は、この曲の歌詞全体の“聴く者を聴きこませる”ような文学性があってこそ、映えるのではないでしょうか。

5.「地上の星」('00)/中島みゆき

2000年リリースの楽曲。ある程度の世代の方にはNHK『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の曲としての印象が強いのではないでしょうか。中島みゆきさんの楽曲における歌詞の文学性の高さは、どの曲も甲乙を付けがたいですが、「砂の中の銀河」に代表されるように、何百年かかってもそれは出てこないだろう、と思わせる歌詞が連発するこの曲を選びました。何百年経っても、掴むことができないものばかり追い求め、近くにある輝くものに気付かない。そんな真理をたった数分の曲で歌い切ってしまう、そんな凄みに毎回聴くたびに感嘆してしまいます。

著者:佐久間トーボ

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着