日本武道館のバトンをつなぐ、ベテラ
ンバンドたちの名曲5選

1966年にザ・ビートルズが来日公演を開催して以降、“ロックの聖地”として数多くのロックバンドが伝説を生んできた日本武道館。昔から“日本武道館”を目標とするバンドは多く、武道館でライヴをするということは人気を指し示すバロメーターやひとつのステイタスでありながら、それだけでない特別な意味を持っていた。そんな日本武道館で09年にワンマンを行なったthe pillowsをきっかけに、ベテランバンドたちが武道館のバトンをつなぐ、素敵な連鎖が起きている。ここではそんなベテランバンドたちが武道館で鳴らした名曲たちを紹介したい。

「ハイブリッド レインボウ」('97)/
the pillows

2009年9月16日、結成20周年を記念して日本武道館公演を開催。本編ラストに演奏されたのが、この曲だった。この曲も収録された98年リリースのアルバム『LITTLE BUSTERS』は人気も高く、バンドを取りまく環境が好転していくきっかけになったと言われる作品。00年代にはOPテーマや挿入歌を提供したアニメ『フリクリ』の効果もあり、国内のみならず、海外からも高い評価を集めたthe pillows。あの頃、《きっとまだ 限界なんてこんなもんじゃない》と現状への不満と未来への仄かな希望を歌っていた山中さわおは、その12年後に満員の武道館に立ち、どんな想いでこの曲を歌ったのだろうか? 20年前の楽曲だが、エモーショナルな歌とギターは色褪せることなく心に響く。

「歩きつづけるかぎり」('12)/怒髪

2014年1月12日、結成30周年を記念して日本武道館公演を開催。「何のズルもしないで、ただただバンドやってきたら、大体このくらいかかる!」と増子直純が語った結成30年目の武道館は、超満員の会場に涙と笑いがあふれていた。そんな中、本編クライマックスでたっぷり気持ちを込めて歌ったのがこの曲。結成30年にして武道館の大舞台に立ち、《未だ夢は覚めず 胸焦がすならば 旅に終わりは無い 歩きつづける限り》と青臭いとも思われる歌詞を大真面目に歌う増子の姿に、涙があふれたのを覚えてる。バンドでもなんでも“続けること”の意味や重要さがよく語られるが、歩き続けた先にはこんな素晴らしい未来が待ってることを怒髪天は身をもって証明してくれた。増子がMCで「次、ここでやるのは誰だ?」とバンド仲間を煽り、ベテランバンドを繋ぐ武道館のバトンが意識されたのもこの日がきっかけだった。

「真冬の盆踊り」('03)/フラワーカ
ンパニーズ

2015年12月19日、結成26年&デビュー20周年を記念して日本武道館公演を開催。無謀とも言われた武道館ワンマンに、「ガラガラのシミュレーションしかしてなかった」と鈴木圭介は笑っていたが、会場は見事に満員御礼。本編ラストでこの曲を披露し、♪ヨッサホイヨッサホイと満員のお客さんを踊らせ、武道館を揺らした。武道館ライヴのタイトルにも「生きててよかった、そんな夜はココだ!」と、歌詞が引用されている「深夜高速」もすごく良かったが。僕は「行くあてなんかどこにもないけど、くよくよしても仕方ない。踊っとけ、笑っとけ!」と開き直って馬鹿騒ぎするこの曲にグッときていた。この日、「次は50代のバンドに武道館のバトンを渡したい」と語っていた、グレートマエカワ。この言葉やフラカンの武道館成功が、周囲のバンドに与えた影響も大きかったはず。

「愛ある世界」('93)/THE COLLECTO
RS

2017年3月1日、結成30周年を記念して日本武道館公演を開催。「ようやく身の丈にあった場所でライヴできる」と加藤ひさしが語った武道館ワンマンは、ミュージシャン仲間やモッズファッションの熱心なファンの支えもあって客席はほぼ満員。武道館公演の1曲目に演奏された、93年発表のアルバム『UFO CLUV』に収録されたこの曲は、昨年7月に「愛ある世界 -30th Anniversary Session-」として、奥田民生、甲本ヒロト、TOSHI-LOW、吉井和哉、藤井フミヤら、豪華ミュージシャンが集結し、再録ヴァージョンも発売された大名曲。「この光景を見るのが夢だった。みんなも絶対できるから。何年かかってもやってくれ」と加藤が語り、武道館のバトンは6月に武道館公演を行なうTheピーズへ渡された。

「グライダー」('04)/Theピーズ

2017年6月9日、結成30周年を記念して行なわれる日本武道館公演。昨年12月、the pillowsの山中さわおのラジオに出演した大木温之の口から発表され、ロックファンを大いに驚かせたtheピーズの武道館。その前から存在は知ってたが、96年リリースのアルバム『どこへも帰らない』からしっかり聴き始めて、『リハビリ中断』後の活動休止を切なく見守り、03年の復帰盤『Theピーズ』に大号泣してと、良い時期も辛い時期もリアルタイムで見てきただけに、武道館の発表は僕も本当に驚いたし嬉しかった。まだ開催されていないので、どんな内容になるのか全く想像付かないが、僕が聴きたい曲は「グライダー」。ふわっと上昇気流にのったグライダーが日本武道館に辿り着き、超満員の観客に10年前と10年先と同じ真青な空を見せてくれることを期待している。

著者:フジジュン

OKMusic編集部

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