11月に入って冬もすぐそこまで…いや、もうすでに来ているような寒さの日が続きますが、澄んだ空気は気持ちが凛とします。ついこの間もスーパームーンがありましたが、秋から冬にかけての夜空の月はきれいのひと言。なので、今回はそんなきれいな月を見ながら聴きたい「月がタイトルに入った名曲」を選んでみました。

1. 「黄金の月」('97)/スガ シカオ

 1997年にリリースされたスガさん2枚目のシングル。ミディアムテンポの楽曲ながら、まるで小説を読むかのような歌詞の世界と、ラストの畳み掛けるようなヴァースが印象的な楽曲です。《ぼくの情熱はいまや 流したはずの涙より 冷たくなってしまった》という切ない歌詞から始まりながら、最後は黄金の月などなくても、という言葉で終わるところに、サラリーマンを辞めてアーティスト1本でやっていくという意思が隠されているような気がします。その歌詞は、普段は日本の音楽にあまり感心しないという村上春樹さんが自著で分析するほどで、もともと村上春樹好きを自称しており、作詞において作品に多大な影響を受けたと思っていただけに、春樹さんからの賞賛は“いつ音楽辞めてもいい”と思えるほどに嬉しかったそう。

2.「月ひとしずく」('94)/小泉今日

 1994年リリースのシングル。名義としては 作詞:井上陽水・奥田民生・小泉今日子となっていますが、これはもともと井上陽水さんと奥田民生さんの間で何かをやろう、ということになり、半分を民生さんが作って陽水さんに渡したものを、流れ流れて小泉さんが歌うことになり、歌詞も3人名義になったということのようです。民生さん的には僕が半分作ったら、あとは陽水さんが何とかしてくれるろう、という想いから“人にまかせて僕らはいこう”という歌詞に表れているとのこと。この楽曲作りとPUFFYの「アジアの純真」がきっかけとなり、井上陽水奥田民生というユニットができ、リリースしたアルバム『ショッピング』の中で同曲をセルフカバーしています。

3.「今宵の月のように」('97)/エレ
ファントカシマシ

 エレファントカシマシの名を世に知らしめた大ヒット曲。歌詞はドラマ『月の輝く夜だから』の主題歌を頼まれた宮本さんが、ドラマの内容に沿って作ったもの。倖田來未さんや甲斐よしひろさんなど、世代を超え多くのミュージシャンにもカバーされています。この当時のエピソードとして、アルバムのミックステープを聴いていた宮本さんが、その“メジャー然とした整然としたアレンジ”に苛立ちを覚え、ウォークマンを叩き付けたというエピソードが残っていますが、売り上げを記録できずメジャー契約を打ち切られたエレファントカシマシが、多くのリスナーの支持を得るようになったきっかけの作品でもあり、やはりイントロなしにヴォーカルが入る構成や、男の悲哀を描いた歌詞は今聴いても名曲のひと言です。

4.「月影」('97)/斉藤和義

 1997年のアルバム『Because』 に収録された楽曲。シングル楽曲ではないので、知る人ぞ知る、という楽曲ですが、ライヴではよく歌われているのと、最初にリリースしたベスト盤『GOLDEN DELICIOUS』のラストの楽曲を飾っていることから、斎藤さん本人の思い入れの強さがうかがえます。《今夜夢のバスに揺られている》という歌詞からスタートする楽曲は、タイムトラベルを思わせるような言葉が描かれますが、決して荒唐無稽な楽曲ではなく、大人になって少年時代を振り返る男の心象風景における“あるある”が詰まった曲です。ミディアムテンポながら、印象に残るメロディーは、斉藤和義さんの楽曲のモチーフによく登場するTHE BEATLESの「IN MY LIFE」を思わせるようでもあります。

5.「月に負け犬」('00)/椎名林檎

 2000年にリリースされたアルバム『勝訴ストリップ』に収録されたこの曲は、楽曲自体はこの作品の根底に流れているRadioheadに代表されるUKロック的なダイナミズムにあふれる楽曲です。この曲は彼女がメジャーデビューする前からある曲で、もともとこういったタイトルではなかったそうなのですが、契約前に歌詞の内容についてレコード会社の人に怒鳴られた経験から“負け犬”という言葉をタイトルに入れたそう。“僕”という一人称の歌詞ですが、現在、自分だけが思い悩んでいるんじゃないか、そう思っている思春期の少年少女にこそ聴いてほしいその年代の人に染みる、リビドーあふれる楽曲だと思っています。

著者:佐久間トーボ

OKMusic編集部

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