抗いようがないほど“夏!”を感じさ
せてくれる5曲

春夏秋冬ある中で、夏に似合う曲というのはもっとも多くある気がする。7月のコラムということで、既に「花火大会に合わせて聴きたい5曲」というテーマで記事がアップされているが、今回はその続編的な立ち位置と思っていただきたい。ただ、自分の中ですぐに思い付く"夏っぽい"曲は、カラッと晴れたサウンドの中に切ないメロディーを忍ばせた楽曲が多かった。明るさと切なさの両極端な要素が1曲の中に見事に封じ込めらた曲調に、どうしようもなく"夏"を感じてしまうのかもしれない。

1.「SUMMER OF LOVE」(’96)/Hi-S
TANDARD

デビュー作『LAST OF SUNNY DAY』を経て、1996年に出た1stアルバム『GROWING UP』の3曲目に収録された楽曲。長い沈黙を経て、11年振りに開催された野外フェス『AIR JAM 2011』で復活したHi-STANDARD。偶然かもしれないが、3万人を動員した横浜スタジアムの3曲目にこの曲をプレイした。全観客が笑顔でジャンプしたあの光景は未だに忘れられない。震災きっかけでメンバー3人が集まった物語性も手伝い、これだけ明るく突き抜けた曲調なのに、とにかく胸に沁みた。内容も“何て事だ、オレの恋はまるでアイスクリームみたいに 夏の太陽に溶かされて消えちゃった”と歌詞にあるように、ほろ苦い恋模様が綴られている。だから、アッパーなんだけど、どこか切ない。そこがいい。

2.「夏祭り」(’90)/ジッタリン・
ジン

ホワイトベリーが00年にこの曲をカバーし、大ヒットを記録した。夏っぽい曲の上位に入るであろう、老若男女が知る名曲中の名曲だ。1986年に結成されたジッタリン・ジンは、人気テレビ番組『いかすバンド天国』出身で、5代目イカ天キングを獲得して、メジャーデビューを果たす。4枚目のシングル「夏祭り」は1990年の8月に発表され、まさに夏の終わりにピッタリのナンバーで売れに売れた。誰しも子供時代に、両親に連れられて縁日に行った思い出があるだろう。「神社」、「金魚すくい」、「線香花火」という日本人の皮膚感覚に響く歌詞と祭り囃子調のリズムは、遠い幼少時代の原風景を喚起させる。セピア感たっぷりの哀愁を帯びたメロディーは絶品だ。

3.「夢風鈴」(’07)/ムラマサ☆

2009年に惜しまれつつ解散した大阪発の男女8人組スカポップ・バンド。作曲を手がけるトシヒロ(Ba)は、ジッタリン・ジンなどの歌謡曲に慣れ親しみ、明るさの中に切ない影を忍ばせるメロディーセンスに定評があった。この曲はある種「夏祭り」へのリスペクトを込めたアンサーソングになっている。イントロの風鈴の音色、神社や縁日の模様を映し出したMV、夏の終わりをテーマにした歌詞といい、胸をギュッと締めつけるロマンチックなムードいっぱいだ。とはいえ、パンクがルーツにあるバンドだけに勢いに満ちた2ビートも差し込み、静と動の起伏溢れる展開で聴かせる。余談だが、「CAN'T SLEEP BUT…」という曲も泣きメロ満載でこちらもお薦め。本当にいいバンドだった。

4.「PARTY PARTY」(’12)/TOTALF
AT

夏にリリースされたわけでもなく、どちらかと言えば、ダンスフロアをさらに過熱させるために作られたアッパーチューン。ライヴでも天井知らずの盛り上がりを見せるアゲアゲ曲だが、無条件かつ理屈抜きに吹っ切れた曲調は爽快感極まりない。歌は口ずさみやすく、演奏もノリ重視で、イントロからラストまで暑さを忘れて踊り狂いたくなる熱狂的なパワーに満ちている。もともとNOFXやTHE OFFSPRINGなど海外のパンクバンドに影響を受け、バンドをスタートさせただけに西海岸特有のカラッと晴れたサウンドは得意なのだ。そこに輪をかけて、メンバー4人のキャラクターも陽性なので、この手を曲調をやらせたら右に出る者ナシ!と言える説得力がある。

5.「hanabi」(’10)/Q;indivi

最後にこの曲は是が非でも紹介したかった! 最初はチバユウスケ(The Birthday)、ヒダカトオル(BEAT CRUSADERS)など男性ヴォーカリストを多数迎え、Q;indivi名義で2010年に発表された『ACACIA;』に収録された楽曲。この「hanabi」はキヨサク(MONGOL800)がヴォーカルを務めたナンバーで、後にMONGOL800名義のコラボレーション&トリビュート曲だけを集めた『etc.works 2』にも再録されている。ピアノや電子音を配したシンプルなトラックに、耳元で優しく語りかけるキヨサクの歌声があまりにも素晴しい。最初に聴いたときは、ちょっと放心状態に陥るほど感動した。私事になるが、以前にツイッターでこの曲の良さを呟いた時に、複数のバンドマンからすぐリアクションが来てビックリした。歌詞、メロディー、どれも文句の付けようがない超名曲。

著者:荒金良介

OKMusic編集部

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