L→R 本多響平(Dr&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)、諒孟(Gu&Cho)

L→R 本多響平(Dr&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)、諒孟(Gu&Cho)

【irienchy インタビュー】
“本当の自分でいよう!”と
歌いたい

結成4年目にして、ついに初のフルアルバム『MISFIT』をリリース。人とは違う自分を貶めてしまいがちな、同調圧力が強い世の中だからこそ聴かれてほしい「最強のぼっち」をはじめ、irienchy節の効いたナンバーが満載となっている。

あなたにはあなたを
好きでいてほしい

結成4年目でついに初のフルアルバムが完成して、今はどんな気持ちですか?

宮原
フルアルバムというものは正直言って、ずっと想像できなかったんですよ。“自分たちに作れるのか?”と思っていたりもして。でも、こうして無事に完成させることができて、irienchyの歴史みたいなものがようやくひとつ刻めた気がします。収録曲を聴き返してみたら、今までやってきたことは間違っていなかったと実感できました。
井口
自分がやっているバンドでフルアルバムを出せたことがシンプルに嬉しいです。中学や高校の頃、レンタルショップで好きなアーティストのアルバムをよく借りていた世代としては。
諒孟
この4年はいろんなことがあったので、しみじみもしちゃいますね(笑)。悩んだり迷ったりも多かったけど、曲を作りながら、ライヴをやりながら、バンドの方向性が固まっていって、その結晶がフィジカルでリリースできるのは感慨深いです。
本多
よくもこんなに曲ができたなと思いますよ! 結成したばかりの頃なんて、6曲くらいしかなかったから。
諒孟
颯くんが昔に作ったデモを引っぱり出してきて、どうにかこうにかライヴを成立させていたよね。
本多
それが今となっては“どれを削るか”みたいな話をしているので、曲が増えたことに一番驚いています(笑)。

最近の話で言うと、TikTokなどのリアクションも良くなってきている印象です。

宮原
そうなんですよ、ありがたいことに。今回のアルバムにも入っている「バイバイ」の《人生1からやり直せるなら何を望むだろう/全く同じ人生を僕は2回やるんだろう》の一節がすごく共感してもらえたみたいで、irienchyの曲を聴いてくれる人がグッと増えたというか。
諒孟
意外にも、Cメロの部分が刺さったっていうね。それきっかけで他の曲もYouTubeショートとかの再生数がじわじわ伸びていたり。
井口
しかも、リスナー層が老若男女問わずっていう感じなんです。
本多
そうそう。すごく嬉しいですね。特に大きなきっかけがあったとかじゃないのに、知ってもらえてきているというのは。

純粋に歌詞やメロディーの良さで広がっていると。

宮原
“どうすれば再生回数が増えるか?”みたいなことはほとんど考えてこなかったです。4人全員がこのバンドを始めてから本格的に曲作りをするようになったし、やりたい曲をやってきただけ。でも、みんなが注目してくれたあの部分は、僕も自信がある歌詞だったので、しっかり伝わったことに対する喜びがすごくありますね。

アルバムの中身についても、新曲を軸に聞かせてください。まずは、『irienchy夏の終わりのミニツアー2023 〜What a wonderful house!〜』(2023年8月〜9月にかけて開催)で初披露された「最強のぼっち」。人の弱さを歌ってきた颯さんならではのマイノリティー全力肯定ソングで、1曲目からirienchy節が炸裂していますね。

宮原
いきなり全開です(笑)。気持ちが落ち込んでしまっていた地元・福岡の友達がいて、それをきっかけに書き始めました。どこか勝手に落ち込んでいるようにも感じたから、そんなに落ち込んでほしくないと思いつつ。あと、その友達が嘆いていた自分の嫌なところっていうのが、僕にとってはすごく良いところだったりしたんですよね。で、ある程度のデモができて、しばらく眠っていた曲なんですけど、バンドで合宿に行った時にバシッとまとまった感じがあります。
諒孟
今年の夏に4日間くらい、メンバー全員で曲作りの合宿をしたんですよ。河口湖の近くのスタジオに行って。
宮原
「最強のぼっち」で一番好きな歌詞が《誰かを想えば想うほど 弱くなる君もいいな》なんですけど、そのワンフレーズが出てきてからはブワーッと書き上げられた感じです。人のことを想うと言えなくなることも、やっぱり出てくるもので、そういう面も含めて素敵じゃないですか。弱さを肯定する一方で、自分が嫌だと思っている部分が、相手にとってはすごくいい部分かもしれないし、“あなたにはあなたを好きでいてほしい”と強く歌いたかったんですよね。

“あなた”というワードが際立っているのが印象的でした。強気な姿勢がうかがえた6曲目の「ソルジャー」よりも、さらに目線が外向きになったんじゃないですか?

宮原
確かに“あなた”はめっちゃ使ってますね(笑)。《僕らはこの世界でたったひとりのクレイジーな/ハミ出し者で 変わり者で 愚か者でも》と歌っているとおり、自分に向けた曲でもあるんですけど、“届けたい!”という気持ちが全面に出たのかなって。ライヴでは涙を流して聴いてくれるお客さんもいたりして、理解してもらえた感じが伝わってきた瞬間にこっちもグッとくるんです。「スーパーヒーロー」が一番好きな曲だと言われることが今までは多くて、それに代わる曲を作りたいとも思っていました。

《嫌われないように生きたって 空気を読んで黙ってたって》のあたりでは、言いたいことを言えなかった時期のことを綴ったデビュー曲「Message」が、《僕らがいればいい》という一歩踏み込んだ歌詞では、今おっしゃった「スーパーヒーロー」が思い浮かぶんですよね。これまでの活動がちゃんと一本の線でつながっているような感じがします。

宮原
そうやって聴いてもらえるのは、本当に嬉しいです。自分自身の経験を踏まえても、やっぱり萎縮してほしくないっていう想いが強くて。irienchyで言うと響平みたいなね、“空気が読めない”とか言われたりする人もいると思うんですけど。
本多
うおい! 俺こそ読めるタイプだろうよ。
諒孟&井口
あははは!
宮原
いやいや、響平は空気が読めないから最高なんだよ。俺たちにとっては、それがすごく居心地良いというかさ。
本多
褒めてくれてんのね?
宮原
うん。うまく言うの難しいけど、仮に響平のことを“うるさい!”と感じる人がいる場所があるとしたら、俺はそこにいなくていい、そこを離れればいいと思うわけ。無理して生きづらいところにいないで、もっと自分に合ったirienchyにいればいいやん。
諒孟
それは確かにそうだね。
宮原
萎縮してしまうような環境に身を置いちゃう人、そこにいないといけないと思い込んじゃう人って多い気がするんです。でも、生きやすい場所は絶対どこかにあるから、勇気を出して捨てることも大切で、求めてくれる、愛してくれる人の近くにいてほしいんですよね。昔の自分みたいに“そんな人いないよ…”と感じる人もいるかもしれないけど、irienchyの曲を聴いてくれているあなたのことは僕らが愛しているので、こういう歌詞になりました。
井口
「最強のぼっち」の歌詞は刺さるよね。僕は合宿で聴かせてもらった時、思わず泣いちゃって。
諒孟
えっ! そうだったの!?
宮原
俺が“どう思う?”みたいな感じで歌詞を見せたら泣きよったな(笑)。
井口
聴いたのも夕方から夜にかけての時間帯で、ちょうどいい感じの空気だったんだよ。すごくいい曲になるなっていう自信がその頃からありました。
本多
“自分もこういう時期があったな”なんて懐かしい気持ちで聴けるところもあったりね。
諒孟
僕は空気が読めないのかもしれないけど(笑)、最初の印象はそこまでピンときてなかった曲なんですよ。でも、ちょっと前に福岡でライヴをした時、曲のモチーフになった颯くんの友達が観に来てくれていて。実際に目の前で演奏したら、すごく腑に落ちた感じがあったんですよね。「最強のぼっち」を届けるべき対象がはっきりと見えて、一気にエモさが込み上げてきました。

アルバムタイトルの“MISFIT”(ハミ出し者)はスッと決まった感じですか?

宮原
そうですね。「最強のぼっち」の歌詞から“これだな”ってなりました。ハミ出し者であることに悩む人もいれば、普通であることに悩む人もいると思うんですね。僕もどっち側なのかとか分からないけど、“本当の自分でいよう!”という意味を込めて。

ジャケットのデザインから、メンバーの脳内風景がカラフルに落とし込まれたアルバムなのが伝わってきました。

宮原
僕ららしさ、内なるパワーをしっかり詰め込んだので、受け取ってほしいです。

1曲目が「最強のぼっち」、2曲目が「ヒトミシリ流星群」と、冒頭から“ぼっち”“ヒトミシリ”という流れになっていて、irienchyがどういうバンドなのかが伝わりやすかったのをはじめ、すごく聴きやすいアルバムだと思います。曲順に関してはどうでしょう?

宮原
irienchyのメンバーって最初はいつも“颯くんに任せるよ”とか言うくせに、僕が決めたあとにいろいろダメ出ししてくるんですよ!
諒孟&井口&本多
あははは!
宮原
こだわってないふりをして、“この曲のあとはこれだろ!”みたいなことをなんやかんや言われるんです。“ラストに「バイバイ」が来るのは、当たり前すぎて嫌だ”とかね(笑)。今回もそれがあって、最終的に今の並びになりました。
諒孟
でも、いい感じになったんじゃない?
本多
うん。めちゃくちゃいい!
宮原
曲が切り替わる間の秒数もこだわっているので、ぜひアルバムを通して聴いてほしいです。
L→R 本多響平(Dr&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)、諒孟(Gu&Cho)
アルバム『MISFIT』

OKMusic編集部

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