【カネコアヤノ】みんな笑ったほうが
いいし、我慢しないほうがいい

エレキギターで弾き語られる、どこかあどけなさを持った声、懐かしさや哀愁の漂う楽曲。カネコアヤノが4月15日にリリースしたアルバム『来世はアイドル』は、そんな素朴さが寄り添ってくれる一枚だ。
取材:高良美咲

かわいらしい歌声なのに、どこか懐かしさや哀愁が漂う楽曲は、初めて聴いた時にびっくりしました。はっぴいえんどやたまに影響を受けたとのことですが、耳にしたきっかけは何だったのですか?

高校2年生くらいで下北沢とか新宿とかのインディーズのバンドを観に行くようになって、そこで知り合った友達とか観たバンドの影響で。教えてもらって聴いて、そこからは自分でYouTubeを観て、関連とかで聴くようになったという感じですね。最初は町田町蔵(町田康)のINUっていうバンドにすごいハマって、好きになって。今でも好きなんですけど、それが最初ですね。はっぴいえんどとかはそこから自分で聴くようになりました。

そこから影響を受けて自分で曲を書き始めたのはいつ頃からですか?

自分で曲を書き始めたのは結構遅くて、高校3年生の卒業間近くらいの時に友達と組んだバンドがあって、それで曲を作ってみようかなって作ってみました。バンドは高校の終わりくらいに組んだ1回だけなんですが、それが終わってからはひとりで。

バンドの時はどのような楽曲をやっていたのですか?

今回も収録されている「はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)」とかをやってました。自主制作のミニアルバム『印税生活』にも入ってるんですけど、それに入っている曲をやっていましたね。

エレキでの弾き語りというスタイルについても気になるのですが、どのようなこだわりがあるのですか?

最初のほうはただ面白いからやっていたんですけど、最近は自分の曲とか声がエレキギターに合っているような気がして。そういう意味では、エレキギターでやるという意味をちゃんと持ってやっています。

なるほど。一昨年5月に自主制作で初めてリリースしたミニアルバム『印税生活』についてですが、これはいつ頃作ったのでしょうか?

まだ人前でライヴをやる以前に作ったんですよ。“人前で歌うとか恥ずかしくて無理無理!”みたいな(笑)。そういう時に作ったから声とか死にそうなくらいヘロヘロで(笑)。でも、ライヴハウスとかで歌っていくうちに発声が変わって、自分は“ワー!”って歌う人だったことに気付いて。お客さんにも“思ってたより男らしく歌いますね”と言われました。『印税生活』というミニアルバムは柔らかい感じだとは思うんですけど、ライヴを観ると力強かった、みたいな。初めて作った曲たちだったし、これが私の原点だし、その時の感情を忘れずにやりたいなと思えるものになりました。初々しさみたいなのがあって、忘れたくないものになったなと。そういうところは変わりたくないなと思います。

ライヴをやってみて、心境的にはどのような変化がありましたか?

“カネコアヤノ”っていう人がいて、“歌う時の私はこれだ”っていう。音楽をやる人としてやれるようになったというか。最近はいろんな人に観てもらえるようになったので、生活の延長線上じゃなくて、聴かせるためにちゃんと切り替えができるようになったというか。そういう心境の変化はありました。

そして、そこから2年経って今作のアルバム『来世はアイドル』をリリースしたわけですけど、このアルバムはいつから構想があったのですか?

『印税生活』を作り終わって、そこから何曲かできていたから、すぐにアルバムを作りたいというのを言っていた気がしますね。曲が溜まって録り始めたのが夏くらい。でも、曲が少なかったから、録り溜めていくかたちになっちゃったんですけど。

ライヴでもやっていた曲なんですよね?

はい。ライヴでは全然やってました。

今作で新録するに向けてどのように楽曲のアレンジをしていったのですか?

まだ私自身にアレンジ力がないので、レコーディングをしてくれたギターの方やエンジニアさんに手伝ってもらってアレンジを進めていきました。曲ができていく上では感動というか、ひとつのかたちになっていくのがすごく嬉しかったというか、可愛かったです。

「はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)」は前作『印税生活』にも収録されていますよね。

これはミックスをちょっと変えました。「はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)」は『ソラオの世界』という舞台のテーマ曲になったりもしたし、この曲があったから今のマネージャーに発見されたのもあって。あと、いつもライヴの最後でやっている曲なんですよ。そういうのもあって大事な曲だから、これだけはこれからもいろんな人に聴いてもらいたくて今作にも入れました。

この曲は、舞台『ソラオの世界』のテーマ曲になる前からあった曲なのですか?

もともとあった曲で、それを使わせてくれと言われました。この曲は欲しい服とか靴とか…歌詞の通り、その時にあった感情を箇条書きのように書いて作った曲です。その時のリアルな私の感情ですね。バイトとか学校とか、そういうのをたまにはさっと終わらせて外の空気でも吸いたいなぁと思って。

そういう日常的なのもありつつ、面白い視点から切り取られた楽曲もあって。

「さかな」は、“死にたい”って思うのは人間だけってよく言うじゃないですか。それを思い出すことがあって、それを曲にしたかったんですよ。だから、魚という生き物を持ってきて、最後に私のテーマにしたかった歌詞を持ってきました。

《だけど僕たちには一生死にたい気持ちはわからない》ってすごいですね。

魚は分からないんで(笑)。でも、魚はきっとそういう人間が持っているような感情を抱けないし、同じ生き物ではあるけど違う部分があるという物語みたいなのが書ければいいなと思って書いたんです。あと、「アイスキャンディ」は少女漫画の主人公になって曲を書こうと思って(笑)。アイスキャンディみたいに溶ける前に早く、って。普段こんなことは言わないです、私は(笑)。でも、そういう感情って女子だからどこかにはあるし、そういうのを引き出して、少女漫画を読んで書きました。視点をひとつに絞ってそれをテーマにして書いていく感じですね。

ユニークなのもありつつ、「家族について」はすごい感動的な歌詞で、“同じ人が書いてるの?”って思いました(笑)。

嬉しい(笑)。家族関係っていうのは人それぞれだから。すごい嫌いな人もきっといるし、仲が良い人もいるし。でも、どう転んでも生みの親は生みの親だから仕方ないことだなぁと。いくら嫌いな親でも、その人がいるから今私がいるわけだから、そこは認めないといけないなと思って。今はそんな気持ちで歌ってます。

書いた時はどのような気持ちだったのですか?

書いた時もそういう感じだと思うんですけど、親と喧嘩した時に書いた気がします。

実際に家族には聴いてもらいましたか?

どうなんですかね(笑)。前の『印税生活』の時は、渡しても“CDプレイヤーないから聴けんし”みたいな感じでした(笑)。

(笑)。「カウボーイ」は手拍子とかも入っていて軽快ですね。

最初は全然そのつもりはなかったんですけど、いろいろ直してこのかたちになりました。ただ、男の子と女の子が草原を走っているようなイメージをして曲を書いたんですよ。それで、“馬だ!”と思ってそれをテーマに書いたんですけど、全然馬は出てこないですね(笑)。

確かにカウボーイは出てくるけど、馬は出てこないですね(笑)。

でも、《君と居るのが楽しいカウボーイ》って、カウボーイが恋してるってよくないですか?(笑) “カウボーイ”って付く曲を作りたいと思って、“カウボーイ”“草原”、よし!みたいな。ノリです(笑)。

ライヴでも盛り上がりそうですね。

まだバンドでやったことないので、早くやりたいですね。

「イメージのうた」はセッションで一発録りですか?

そうですね。レコーディングの日を2日間とってたんですよ。その2日で「家族について」ともう1曲何か録ろうって言っていて。でも、その日に私が熱を出してしまって…怒られました(笑)。私は“大丈夫、歌える!”という感じだったんですが、結局「家族について」は録れなくて、「イメージのうた」をセッションで録りました。でも、セッションで録るというかたちが結果的に良かったので、“そういうふうにできてるんだ”と思いました(笑)。この曲については、私は日本にしかいたことないから他の国のことって分からないけど、でも他の国でも人間が生きているわけで、私たちから見たら他の国の人って外国人だし、日本人って外国人にコンプレックスみたいなところもあるし…そういうのって、他の国の人からしたら日本に対しても何かあるし。身体の作りとかは一緒なのに、なんか変だ、面白いなと思って。

最後の「湯船」はほっとする曲ですね。

これはどういう時に書いたか覚えていないんですけど…泣いたりとか笑ったりすることは何気ないことだし、すぐ忘れちゃうけど、そういう行動を大切にできたらいいなと思って。1日の最後って大体の人がお風呂に入って終わるし、私はお風呂に入るとノスタルジックな気持ちになるというか(笑)。そういうのを示したかったし、泣くとか笑うということは何気ないことだけど幸せなことなんだなというのを思い出してほしいです。

1日の最後に聴きたいです。

そういう感じで聴いてもらえると嬉しいです! だから、《あんなに腹がよじれるほど笑ったのっていつぶりだろう》とか…働いてる人とか大変だろうから。ちゃんと生きていることを楽しんでほしいなと思います。たまには馬鹿になって遊んだほうがいいと思うし、そういうことを思い出してほしいなと。みんな笑ったほうがいいし、我慢しないほうがいいんですよ。今作は日常的というか…“なんとなく”感じることってあるじゃないですか。“なんとなく”なんだけど、それが濃く詰まった一枚になったんじゃないかなと思います。

なるほど。今作を作り終えて、どうですか?

8曲とも歌詞もアレンジも全部カッコ良く出来ました。一番思うのは、『印税生活』より私って成長してるなと(笑)。音楽を楽しくできてるなと思いました。もっと感情的なところに気付ければいいのかもしれないけど、私的にはそこに気付けたことが一番大きいです。成長できて、前よりも楽しめています。義務化していたところがあったから、そうじゃなくてもいいんだなというのに気付けたというか、好きでやっているのがいいなと。単純なことなんですけど(笑)。

楽しんでやれているのはいいことだと思います。話は変わりますが、MOOSIC LABという企画で、初めて映画にも挑戦したんですよね。

そうです。最初はTwitterのダイレクトメッセージで連絡がきて、何事だ?と思って。しかも私はMOOSIC LABも知っていたから驚いて、“ぜひ、私でよければ…”みたいな。時代キタなと思いました(笑)。

これは、どういう作品になっているんですか?

これはですね、青春ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー(笑)。一応、私が主演のかたちなんですけど、出てくるメインのキャラクターが私以外にも3人いて。だから、私だけじゃなくて4人の男女が主人公で、その4人の恋愛だったり、親とのゴタゴタだったり、そういうのがひとつにまとまった青春映画ですね。

撮影は初めてですよね? どうでしたか?

すごく大変でしたね。演技はしたことがないし、他の方は役者さんだから…やればできるというのは分かるんですけど、やっぱりいつもと違うものに触れるというのはすごく難しいことだなと。恥ずかしい気持ちとか、カッコ付けみたいなちょっとした感情が無意識の上で出ちゃうから難しかったです。そういうのを抑えるというか、振り払うのが。演技も下手だったし…もっとできたのになと思いますね。

じゃあ、次はもっと上手くできると。

そうですね(笑)。

(笑)。劇中では歌ったりも?

『恋文X』という映画で主題歌も書く流れになって、ちょっとだけしましたね。「恋文」という曲を書いて、この劇中で歌いました。

その曲は、映画以外でも聴けるのでしょうか?

とりあえずは映画だけですかね。まだレコーディングもしてないんですけど(笑)、早く聴いてほしいです。

楽しみにしています! 『来世はアイドル』のリリースや、映画への出演などいろいろな経験をして、今後はどのようなことをしたいですか?

とにかくいい曲を作って、私らしい表現でみんなに認めてもらいたい。それをちゃんと出せるようにしたいです。人にものを言うのがすごく苦手で流されがちなんですけど、本当はやりたいこととかはっきりあるし、そこをちゃんと明確にさせて私らしい表現でやりたいです!
『来世はアイドル』
    • 『来世はアイドル』
    • XQMK-1001
    • 2014.05.14
    • 1500円
カネコアヤノ プロフィール

カネコアヤノ:1993年1月30日生まれ、神奈川県横浜市出身のシンガーソングライター。12年5月にミニアルバム『印税生活』を制作。同年6月にはSCANDALのツアー東京公演のオープニングアクトを務め、その後も東京都内を中心にライヴ活動を行なう。13年2月には西田シャトナー原作の舞台『ソラオの世界』に主人公ソラオの幼少期役として出演。また『MOOSIC LAB 2014』市川悠輔監督作品『恋文X』の主演・主題歌が決定するなど、音楽活動だけでなく多方面に活動する。カネコアヤノ オフィシャルHP

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