【the arounds】その先に見据えてい
た光が新作に結実
ライヴハウスシーンで活動歴のある4人が集まったメロディックロックバンド、the arounds。数々の挑戦がバンドの新章のスタートを印象付ける4年振りの新作『Staring At The Light』について、バンドのフロントマンであるAra(Vo&Gu)にインタビューした。
取材:山口智男
レーベルの紙資料に“the aroundsの新章が始まる!”とありましたが、Araさんご自身、やはりそういう気持ちなのでしょうか?
この4年間は音源を出せなかったのですが、4年前と同じことをやっても面白くないと思ってましたね。せっかく一緒にやってくれるチームができたんだから、今までできなかったことをやりたいと自分たちでハードルを上げてみました。環境が変わったことをきっかけに、心機一転頑張ってみようという気持ちでしたね。
音源を出せなかったこの4年間は、バンドにとって結構タフな時期だったのですか?
そうですね。前作が自主リリースだったんです。自主には自主の良さがあることも分かった反面、他の3人と足並みがずれちゃったんですよ。僕としてはバンドを辞めるという選択肢は全然なかったんですけど、今思えばギリギリだったと思います。結局メンバーと話し合って続けていこうとなって、次の作品はどうする?ってなった時に今のレーベルと知り合ったんですよ。
そして、活動7年目にして初のフルアルバムをリリースすることになったと。
最初は出せるなら何でも良かったんですけどね(笑)。ただ、曲も溜まっていたので、フルアルバムがいいんじゃないかということになりました。
どんな作品にしたいと考えていたのでしょうか?
僕が作った曲をみんなに聴かせて、反応が特にいいものを選んだんですけど、どういう作品がいいというビジョンがあったわけではないんですよ。自分たちがしっかりまとめられる曲を選んだら、今回の13曲になっただけなんです。
とはいえ、4年振りの作品であることや初のフルアルバムであることを考えると、へたなものは作れないぞという気持ちもあったのではないでしょうか?
それはありました。だから、ちょっと心配なんですよ。今はその心配を乗り越えようとしているところです(笑)。毎回そうなんですけど、今回は特に…今までずっと英語で歌っていたんですけど、今回は日本語の曲が4曲あるんです。メンバーもレーベルのスタッフもいいと言ってくれたし、もちろん自信はあるんですけど、日本語ってダイレクトに伝わるので自分が丸裸なったような気がして(笑)。
そもそも、なぜ日本語を取り入れようと?
自然にそう思えたんです。メンバーが別にやっているバンドが日本語で歌っていることに加え、the aroundsを始めてから出会ったバンドも日本語で歌っていることが多いし。日本語の歌に接する機会が増えたことが大きいのかな。日本語の歌っていいなと改めて感じて自分も歌ってみたいって思えたんですよ。とはいえ、さっきも言ったようにダイレクトに伝わる怖さもあるし、上辺だけ前向きな歌も歌いたくないから、日本語で歌詞を書き始めてみたものの、なかなかまとまらずにレコーディングの最中も書き直していました。
曲によって英語と日本語が半々のものもあれば、ほぼ日本語だけのものもありますね。
Tekkoに“無理に日本語にする必要はない。英語混じりでもいいんじゃない?”ってアドバイスをもらって肩の力が抜けましたね。でも、レーベルからは“がっつり日本語だけの曲を聴きたい”と言われて(笑)。だったら、いろいろなかたちを試しながらやりやすい書き方を見つけようと思ったんです。
日本語になったからって、歌っている内容が変わったわけではないのですね。
そうですね。ただ、英語よりも分かりやすくなったかな。難しい言葉を使うのが嫌だったんです。だから、できるだけ自然な言葉遣いを意識しました。
メロディックハードコア、ハードロック、ヘヴィメタルの影響も感じられるのですが、それだけに収まり切らない骨太でエッジの効いたロックサウンドが印象的でした。歌をちゃんと聴かせながら、決して柔じゃないところがカッコ良い。
それはギターの音が立っているからだと思います。もともと僕はギタリスト志望だったこともあって、ギターに関してはTekkoと話し合いながらできるだけ音が立つようにしているんです。
だからなのですね。リズムギターがコードをただ掻き鳴らすだけじゃなくて、ちゃんとリフになっていることに加え、そんなリズムギターとそこに絡むリードギターのアンサンブルも聴きどころですよね。
せっかくギターがふたりいるんだから、コードを掻き鳴らすだけじゃつまらないし、ギター2本じゃないとできないことをやらないと、ただうるさいだけになっちゃいますからね。
歌の裏で鳴っているリードギターの単音弾きのフレーズも耳に残るんですよね。
曲には歌のメロディー以外に耳に残るものを入れたいんです。だから、ただコードを弾いているだけの曲は好きじゃない。聴いている人が思わずギターを弾きたくなるようなフレーズは常に意識しています。
耳に残ると言えば、ほぼ全曲に入っているシンガロングやコーラスもそうですね。
初めてthe aroundsの曲を聴いたり、ライヴを観たりした人でも印象に残るような分かりやすさが楽曲に欲しいので。ただ、小難しいことはできないから、一緒に歌おうかなって。そのほうが楽しいと思うし。それは意識してやっているわけではなくて、曲作りの段階で自然にそうなるんですよ。
曲の構成も簡潔ですよね。
自分が一番聴いていた時期の音楽に影響されているのかなと思いますね。シンプルで、歌にも一緒に歌える分かりやすいメロディーがあって…というのが、自分の中にあるんですよ。それがthe aroundsをやっているうちにバンドのカラーになってきたところはあります。
「Hiding」のようなスローナンバーは以前からやっていたのですか?
ここまで壮大な曲調ではやっていなかったですね。バラードのつもりで作ったわけじゃないんですけど、レーベルのスタッフにバラードだって言われて、そうなんだと思いました(笑)。スローな曲は昔から好きだったから、クサい感じにならないように意識しながら作った曲をメンバーに聴かせたら、最初からみんないい反応だったんです。そのせいか、無理なく、きれいにまとまりましたね。
“4年前と同じことをやっても面白くない”とおっしゃったように、今回はそんなふうにいろいろ新しいことに挑戦しているわけですね。
そうですね。「Nowhere」という曲ではTekkoに難しいフレーズに挑戦してもらいました。ただ、個人的にはこの4年の間に作った曲を集めたベストという印象があるんです。だから、自然な流れの中で日本語の歌詞だったり、バラードとかもやってみようってことになっただけで、自分たちとしてはそんなに新しいことに挑戦したという気持ちはないんですよ。
今回、越川和麿さん(THE STARBEMS、ex.毛皮のマリーズ)がサウンドエンジニアとして参加していることも話題のひとつですよね。
Tekkoが知り合いだったんです。今までは別のエンジニアさんとやってきたんですけど、心機一転、レコーディングも違う環境でやってみようということになって。そしたら西くん(越川のニックネーム)が初日から遅刻してきて、“これはやりやすいかも”って思いました(笑)。それがあったからみんなリラックスしてできたんじゃないかな? レコーディング中は笑いが絶えなかったですよ。いい空気感でレコーディングできたと思います。
越川さんとはどんな音にしたいと話し合ったのですか?
周りにあふれているような音にはしたくなかったので、うちらならではの音作りについて西くんを交えていろいろ試しました。俗に言うドンシャリが嫌だったので、特にギターの音はミッドに集中させて作りました。そこがthe aroundsのサウンドの特長という話をして、それを歌とどうぶつけないようにするか…そこは考えました。今回、ギターを結構重ねたんです。それも新しいと言えば新しいですね。
6月24日の府中FLIGHTからリリースツアーがスタートしますが、ツアーは何が楽しみですか?
ツアーの前後ではバンドの一体感が全然違うんですよ。ツアーが終わった時にバンドは一番いい状態になっていると思うので、それが一番楽しみです。その頃には次にやりたいことも見えてきていると思います。今回は4年空いちゃったので、これからは間を空けずにコンスタントに作品をリリースしながら、その中でいいライヴをしていきたいですね。
最後に“Staring At The Light”というタイトルに込めた想いを教えてください。
パッと見では前向きな言葉に思えるかもしれないけど、実際には見つめているこちらは暗いんです。自分がネガティブシンキングな人間なので、無理に前向きでいるよりは、それをちゃんと出したいんです。でも、だからって完全に後ろ向きというわけではない。ちゃんとその先には光を見据えている…4年間、足踏みしていたバンドの状態にも当てはまると思って、このタイトルにしました。
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『Staring At The Light』
- 『Staring At The Light』
- NEON-1002
- 2017.05.24
- 2808円
ジ・アラウンズ:2008年に始動。WiTHMYFOOTのヴォーカルAraが、バンドが解散したことをきっかけにGenkiを誘い結成。それぞれ他のバンドで活動経験のある4人が集まり、10年に本格的な活動を開始。17年5月24日に、初のフルアルバム『Staring At The Light』を発表。the arounds オフィシャルHP