【molly インタビュー】
“嘘のない歌”を届ける
名古屋発のニューカマー
ライヴに定評のあるロックバンドを数多く輩出する名古屋から注目のニューカマーが登場した。2019年結成された男女混成4人組バンド、mollyだ。3月9日にリリースされる初の全国流通盤ミニアルバム『moment』は、これまで自主制作でリリースした5枚のデモ音源から新たにレコーディングし直した幅広い楽曲を収録している。“音楽の中では正直でいたい”と語る近藤芳樹(Vo&Gu)に、バンドの現在地を訊いた。
メロディックパンクからギターロックへ
バンドの方向性を変えた結成初期
ミニアルバム『moment』を聴かせてもらって“いい曲だな”とも思ったんですけど、同時に“いいバンドだな”と思いました。どちらで言われるのが嬉しいですか?
あー、“いいバンド”のほうが嬉しいですね(笑)。メンバーが固まってから半年ぐらい経って、このメンバーで大きくなっていきたいと思っているので。
メンバーは芳樹くんが中心に集めたんですか?
そうです。僕がベースの有坂生夢と同じ大学で、軽音サークルでバンドを組んだのが始まりです。最初はサークルのギターとドラムを入れて外のライヴハウスに出ていたんですけど、2カ月ぐらいでギターが抜けて、しばらくしてドラムも抜けちゃって。そこからサポートを入れて活動をしていました。で、一昨年に名古屋のバンドつながりでギターのハイスクール・ジュニアやますけが入ってくれて。
名前のクセがスゴいですね(笑)。
僕も最初はびっくりしました(笑)。そこに昨年、谷田七海が加わった感じですね。七海ちゃんは生夢がサポートでやっていた他のバンドのドラムだったんですけど、そのバンドが解散することになってmollyに加入したんです。
今のバンドを組む前にもバンドをやっていたんですか?
僕も生夢もmollyが初めてのバンドです。七海ちゃんも前にやっていたバンドがまだ活動前だったので、実質やますけ以外はmollyが初めてですね。
結成した時に“こういうバンドをやりたい”というイメージはありましたか?
僕が一番大好きなバンドは04 Limited Sazabysで、結成したての頃は5曲中3、4曲はツービートの曲をやっていました。でも、ライヴハウスの人に“ヴォーカルの声が聴こえない”と言われて、すごく大きな声で歌っていた時期もあったんですけど、“じゃあ、もっと歌を聴かせる曲をやってみよう”と方向性を変えました。
確かに芳樹くんの歌声は繊細でやさしいなと思ったんですよ。だから、激しく聴かせるよりも、しっかりメロディーと言葉を届けるほうが合っていたのかもしれないですね。
そうなんですよね。なおかつ、七海ちゃんが入ってきたタイミングっていうのもあります。七海ちゃんにはツービートをドタドタ叩くよりも、ちゃんと聴かせるビートを刻んでもらったほうがいいなと。
ちなみに、他のメンバーはどんな音楽に影響を受けてるんですか?
やますけは洋楽が好きで、バンドではFoo Fightersが好きって言ってました。生夢は僕と好きなバンドの趣味が合うんですよ。『森、道、市場』っていう地元のイベントとか、ネクライトーキーを一緒に観に行ったり、踊ってばかりの国も好きです。七海ちゃんはインディー寄りですね。一番好きなのはcinema staffです。
mollyの活動の在り方としてライヴをすごく大事にしているように感じました。
ライヴは大切ですね。今も初めてライヴをした場所をホームとして活動しているんです。名古屋の新栄にあるRAD SEVENっていうギターロックのハコがあって、そこで打ち上げなども教えていただきました(笑)。
ライヴを大切にしたい理由を言葉にできますか?
なんか恥ずかしいこと言っちゃいそうだなぁ(笑)。ライヴハウスでバイトをしている時に、セキュリティでステージの前に立つことがあるんですけど、ライヴを観ているお客さんの顔がすごく良くて、忘れられないんですよね。mollyはライヴをするようになってから半年くらいでコロナ禍になってしまったので、マスクをした状態で観てもらっているんですけど、目だけでもどういう感情で聴いてくれているのかは伝わってきますね。それは音源だけじゃ絶対に分からないことだなって。
結成して間もなくコロナ禍になったのはバンドとして痛手だったと思いますが、どんなことを意識して動いていましたか?
ライヴハウスに来るお客さんが減って、ライヴハウスの方たちが頭を抱えているのを見て、ここで辞めるのではなく、もっと頑張らないといけないと思ったんですよ。なので、曲もより多く作って、ツアーも回って、できる範囲で活動を増やしました。ライヴも昨年は50本くらいかな? キャンセルになったのも含めると70本くらいありました。
話を聞いてると、mollyってすごい泥臭いバンドなんですね。現場主義というか。
めちゃくちゃ嬉しいです。純粋にライヴは楽しいんですよ。それを知っちゃっているからやっているだけなんです。お客さんもこういうご時世でリスクがあるのを分かっていながらライヴハウスに来てくれているので、そこには必ず何か理由があるだろうから、そこを大事にしていきたいです。
最近はサーキットイベントに出演すると入場規制になったりもしてますけど、それはどう受け止めていますか?
それは流行りというか、一瞬のことかなと思いますね。2、3年やって、ほんのちょっと名前を知ってもらえるようになり、入場規制になっているバンドなんて他にもいっぱいいるし、そこから下がっていくバンドもいっぱい見てきているので…めっちゃマイナスなことを言っちゃってるな(笑)。
いやいや、浮かれてないですね。地に足が着いていると思いました。
それよりもひとりひとりを大事にしたいと思っています。“みんなに”っていうのはあんまり好きじゃないんです。同世代ぐらいのバンドで1,000人、2,000人規模のライヴをやってるバンドもいるけど、どんどん煽り方が“みんなー!”になっていて、前にそのバンドのライヴを泣きながら観ていた時は“お前”とか“あんた”って言ってくれていたのにな…と思うこともあります。だから、僕はひとりに向けて歌いたいんです。