【She, in the haze インタビュー】
いい作品を作ることを目的に
音楽をしている
圧倒的な楽曲の世界観とどこまでも広がっていくような、浸透してくるようなサウンドスケープ。バンドサウンドの生々しさとエレクトロなクールなビートが交錯するサウンドは、ライヴとなると両方向に振り切り、観る者の高揚感を高め、さらに透明感のあるウエットなヴォーカルが届ける英詞の歌が想像力を掻き立てる。それがShe, in the hazeのライヴの醍醐味のひとつだと言えるだろう。そんなShe, in the hazeというバンドについてコンポーザーのyu-ki(Vo&Gu)に語ってもらった。
先日のライヴを観ていても思ったのですが、白い衣装やアンプというビジュアルだったり、霧がかかっているような顔が見えないくらいの薄明るい照明だったり、ライヴでの魅せ方や音楽性とバンド名がすごくマッチしているなと。なので、まずは“She, in the haze”という名前の由来、そこに込めた想いを教えてください。
バンド名の由来については、視界の悪い霧の中にとらわれているような感覚、またその中で渦巻く感情を表現したかったので、このような名前にしました。
“She,”というのは?
かよわく繊細なイメージにしたかったため、対象を“She”にしました。
先日のライヴでも「Stars」と「Teddy」ではプロジェクターを使用し、視覚的なアプローチもされていましたが、ライヴとはどういうものだと考えていますか?
とても難しい質問ですね。正直に答えると、ライヴとはどういうものかなど、断言できるほど分かっていません。個々に楽しみ方が違うように、ライヴの在り方は決められるものではないのかなと。ただ、最近感じているのは、同じ空間に演者だけがいてその音を鳴らすのと、受け取る側もいて同じ音を共有するのとでは、同じ曲でもまったく別物になるなと。血が通い出すというか、息吹が吹き込まれるというか。そういった意味ではステージも客席も隔たりなく、その空間にいる全員で演奏しているのが、ライブの空間なのかなと感じています。楽器は音を放ちますが、客席の熱量もまた別の何かを放っていて、それが合わさり、その場でしかできない曲に変化していくのかなと思ってます。
She,in the hazeにとって理想のライヴというのは、どんなライヴですか?
具体的に理想のかたちというのは今のところ思い付かないですが、とにかくフロアーは自由に楽しんでもらいたいですね。拳をあげて頭を振りまくってもいいし、はたまた腕を組んで後ろでじっくり観るも良し。楽しみ方は人それぞれだと思うので、好きにその空間を楽しんでもらえれば嬉しいです。
演出やステージング、パフォーマンス、会場など、やってみたいものはありますか? 個人的にはプラネタリウムの中で観てみたいです。
プラネタリウム、とても斬新ですね! ライヴハウスではなく、意外なところでもやってみたいとは思います。
あと、対バンであり、イベントやフェスへの出演が多いわけですが、She,in the hazeに似たバンドってそうそういないので、言い方は悪いですけど、アウェー感の中でやっている感覚もありますか?
毎回アウェー感を感じています。もう慣れたのでそれが当たり前にはなってますが(笑)。
そんなステージに上がる時はどんな気持ちなのでしょうか?
僕個人的にはステージに上がる時はオンのスイッチを入れることに集中します。そうでないと人前に出ることが非常に苦手なので、普段の僕には耐え難い環境ですから。決してプライベートな自分がステージに上がらないよう、気を付けています。
曲を作る時からライヴでの再現、演出のことも考えているのですか?
そうですね、ライヴでどう映えるかは考えてしまいます。でも、なるべくそれを考えないようにしています。というのも、ライヴのために楽曲を作っているわけではないからです。僕自身はいい作品を作ることを目的に音楽をしているつもりなので、ライヴで客席が楽しんでいることはもちろん大事ですが、誰かを楽しませるために音楽をやっているわけではないんです。順序としては、まずは自分が聴いて納得するものを作り、それを楽しんでもらえるなら尚良し、ですね。そのスタンスやバランスは、どんな環境になっても崩したくない部分です。でないと、何が良いかという判断が自分でできなくなる気がするからです。
She,in the hazeの楽曲はどの曲もシューゲイザー×エレクトロが表面的にあって、側面としてメタルやダンスビートなどさまざまな要素があるというなジャンルとらわれないところがあるのですが、まず曲を作る時に手にするものは何になるのですか? PCとギター? それとも鍵盤?
その時に浮かんでいるのは映像なのですか、サウンドなのですか? それとも物語?
曲によっても違いますが、どのような物語を描きたいか先に固め、それを音で再現していくという流れが多いです。サントラを作る工程に近いのかもしれません。どんな感情を描きたいかも先に決まっているので、歌詞の構成も同時に決まっていることが多いですね。
ちなみに曲を作る時に意識していること、こだわっていることはどんなことですか?
音だけで感情や映像が想像できることですかね。曲にもよりますが、ストレートな表現になりすぎないように、どう外すかは大事な部分だと思っています。
曲を作られる時には物語を描くとおっしゃっていたように、まさに歌詞では物語が描かれているのですが、それは意識的にそういう手法をとられているのですか?
僕自身は大した人生など送ってきてないので、誰も僕自身のことを歌っている内容なんかに興味は抱かないだろうと思っています。別に僕をアピールしたくて楽曲を作っているわけでもないですし、僕を誰かに分かってもらいたいとも思ってません。それならば僕が経験できないであろうもっと過激な環境の主人公を作り、その世界観を表現したほうが面白いと思い今のような作風になりました。
確かに歌詞の物語はファンタジーというよりも、愛する者を失った喪失感だったり、シリアルキラーの人格が形成された幼少期のことだったりして、むしろダークファンタジーというか。その主人公は孤独や悲しみを抱いているものが多いのですが、それは直接的ではないにしてもyu-kiさんを投影していたりするのでしょうか?
そんなつもりはないです…というか、そんなつもりはなかったのですが、少なからず自分の想いや感じていることが自然と入ってしまっているのかなとは思います。意外と自分のことは自分では分からないのかもしれませんね。自分で書いた作品から、自分を再確認する部分があったりします。
歌詞を書く時に意識していることは?
自分で書いてはいますが、常にもうひとり、客観的な自分を置いて、その自分がそれを読んで感動するかしないか、胸が苦しくなるかどうか、そこを一番意識しています。
なるほど。では、最後にうかがいたいのですが、She,in the hazeの理想の未来像というのは?
取材:土内 昇
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EP『Last forever』2017年11月8日発売
SITH records
『She, in the haze “2nd EP Release Tour”』
11/25(土) 愛知・名古屋ell.SIZE
w)polly / 羊文学
11/26(日) 大阪・アメリカ村CLAPPER
w)polly / RYU MATSUYAMA / suelu
『She, in the haze Onemanlive 2017』
12/02(土) 東京・渋谷SPACE ODD
シーインザヘイズ:“漂う音に浸る幻想的な空間を作りだす”をコンセプトに、楽曲・映像制作、レコーディング、デザイン、ステージ演出、衣装、アパレル等の全てのブランディングと制作をアーティスト自らが手がけるクリエイター集団。エレクトロニックでオルタナティブなサウンド、メランコリックでメロディアスなヴォーカル、“人間の心に棲む美と狂気”をテーマに攻撃的かつ儚く耽美な世界に魅了されるロックファンが日本はもちろんのこと海外にまで拡大中。She, in the haze オフィシャルHP
「Last forever」MV