【ヒヨリノアメ インタビュー】
今作はある意味で
ライヴアルバムだと思った

バンドを組んで、茨城から上京してきて一年経ったくらいの時期に作ったんですけど、夜眠れなかった時に機材車で録ったヴォイスメモです。最近はライヴで新曲をやることが多いんですが、「傘とシンデレラ」は唯一今も歌っている曲なんですよ。“最初ってどんな感じだったかな？”ってよくこのヴォスメモを聴き返していて、当時から大きく変わっているわけではないけど、その頃の自分を思い出せるんです。最近作っている曲は、19歳、20歳の頃の悩みやつらかったことを乗り越えるために書いているところがあって、「傘とシンデレラ」のヴォイスメモがなかったら思い出せなかっただろうし、あの時期の自分がいなかったら今はないので、ヴォイスメモも入れることにしました。ちょっと恥ずかしかったんですけど、今回は恥ずかしさを捨てて正直に作っているのでいいかなと思って。

最近自分が変わっていっている感覚があるから、今の気持ちをどんどん曲にして出していっているんです。そんな中で「傘とシンデレラ」は3ピースになる前の曲だけど、これだけは今もライヴでやっているから、ずっと歌っていく曲だと思っていて。今の自分と違うところもあるから、ライヴでは歌いながら自然とアレンジしていて、レコーディングでもその感覚で歌いました。その場で当てはまる歌詞を歌って、あとから変わっているところを書き起こすという感じで。

りんちゃんが入ってからは一回もレコーディングできていなかったので、そこも変わった部分だと思うんですけど、そういう外側に向けたエネルギーを感じてもらえているのは、AKIの歌が一番大きいと思っています。「傘とシンデレラ」は“僕”っていうワードが多かったのが、《君が君のことを愛せるかな》に変わっていたりとか。メンバー全員がヒヨリノアメを聴いてくれている“君”に対して音を出しているっていう姿勢が一番変わった部分だと思っています。

個人的にはドラマーとして自分にできる最大限にできることを詰め込めた曲でもあって、“今を詰め込もう”というみんなの気持ちが音になっていると思います。

新曲と同じような、今の自分でも心を込めて歌える曲なので、そういった意味でもずっと歌っていきたい曲なんですよね。

イベントタイトルは“また君に会えるように僕らはバンドを続けていく”っていう気持ちで決めたんですけど、ライヴをしていくうちに今回の作品はある意味でライヴアルバムだと思ったんですよ。ライヴハウスで感じたこととか、ライヴハウスに来てくれる人にまた会いたいと思って曲を作っているし、サウンドもライヴ音源のような出来になっていると思います。“また君に会えるように”っていうのは、今のヒヨリノアメをやっている意味なんです。

自分の体調のこともあって、正直言って完成できるか分からなかったんですよ。今、3人でバンドができていることも自分の中では当たり前ではないし、それが絶対に続いていくとは言えない。昨年11月にしのさんが声をかけてくれて急ピッチで作った作品なので、3人だけでは作れなかったし、大変な時期に声をかけてもらえる温かみを感じながら制作できました。メンバー3人とも自分のことだけじゃなくて、そこにいる“君”に対しての気持ちを込めて作ったと思います。この3人の記録が他の誰かにとって何になるのかは分からないけど、とにかく聴いてもらいたいです。

よくバンドマンが“作品は自分の子供みたいなもの”と言っているのを聞きますけど、自分が入ってからはCDをリリースするのが初めてで、今まさにそんな気持ちになっています。自分の大事な気持ちを込めたものをヒヨリノアメの作品としてリリースできることがすごく嬉しいです。