【ソウルフード インタビュー】
幸せになることを自覚して、
共存していく
“人が好き、ただそれだけ”
熱き魂が宿った楽曲たち
この話の流れで訊きたいのは、「オートノミー」のことなんですけれども。“オートノミー”という言葉が“自主性”や“自立”という意味を持つのに対して、歌詞の中では“共有”や“共存”という他者を含めた言葉がキーになっているんですよね。そこの相反性が気になりました。
前田
なるほど! 僕がこの曲に込めた想いというのは、“人は100パーセント分かり合えることはできないけれど、分かり合おうとする気持ちを持っていないとダメだよね”という話なんです。この曲はライヴハウスのことを歌っている曲なんですけど、ライヴハウスにはライヴハウスごとのルールが存在していて、それぞれの場所が各々の価値観を育てていると思うんです。そこに無理強いは不要で、各々が持つ“好き”という気持ちを共有しなくていいと思いますし。
それぞれが馴れ合う訳ではなく、きちんと自立した上で、それでも思いやりや認め合う気持ちを忘れずに共存していこうと。
前田
この曲に限らず、僕が歌い続けていることって、結局“お前はお前の人生の中でマジ幸せになってくれ!”ということなんですよね。だから、音楽も、ライヴハウスも、あくまで補助輪のような役割だと思っています。もっと大事なものができた時にはライヴハウスには来なくなるし、バンドマンもバンドを辞めると思うんです。幸せならば、それでいいと思います。それくらい自分をしっかりと持っていてほしいし、ソウルフードのライヴも“名前も知らない奴にあーやこーや言われても、私の人生変えられへんぞ!”くらいの強気な精神で観てもらいたい。そっちのほうが絶対にいいんですよ。そうした状態で自分の中にあるドス黒いものをライヴハウスで曝け出して、ほぐして、ろ過することで、自分にとって少しでもきれいなものにして帰ってもらえたらいいなと思っています。
《理想の人求めるならまずは君が理想になりなよ》というフレーズもガツンときます。
前田
僕自身に理想はないんですけどね。こういう言葉が自分の中から出てくるのは、人としゃべっていく中で培ってきた感性があるがゆえなんだと思います。そもそも自分自身、人が大好きですし、人の心を動かすのは人でしかないと思っているので、相手のことを知ろうとする気持ちは忘れないようにしています。
田中
僕が作った造形物に魂が宿るのは、ふみくんみたいなアツい心のある人のお陰だと思っています。ここまで「オートノミー」のめちゃくちゃ良い話をしてもらっていますけど、自分たちのことを“SUPER BEER ROCK BAND”とまで名乗っている僕らが、今回この曲の中で“ハイボール”というワードを使っているのは、メンバー全員がビールを飲まなくなって、焼酎や日本酒ばかり飲むようになったからなんです。
前田
はい、そうなんです! この曲の仮タイトルも“ハイボール”でした(笑)。
えっ、もともとハイボールの曲だったんですか? あんなに濃い話をしていただいたあとに、これまたすごいオチですね(笑)。 ギャップで言えば、「おやすみ!ロックスター!」のMVもすごかったです。
田中
最初にふみくんが弾き語りで持ってきてくれた時は、もっとゆったりとしたミドルテンポの曲だったんですけど、それを僕がアレンジして、今の速度感にしたんです。ふみくんから事前に、この曲はバンドを辞めてしまった3人のことを歌っていて、そのバンドの歌詞も入れていると聞いていたので、メロディーを作る上でもフレーズをオマージュさせてもらいました。だから、そのテーマになった3人のうちのひとりである、ソライアオの木部数也さんにも聴いてもらいたくて、出来上がった音源を送ったんです。そしたらめちゃくちゃ褒めてもらえた上に、木部さんにMVを作ってもらうことになり、彼の中で“こんないい曲なんだから、どうしてもバズらせたい!”という想いに火が点いた結果、インパクトのある映像になりました(笑)。
前田
普通は、打ち上げから帰って即寝して、目覚ましで起きて、慌てて家を出て、ライヴシーン!っていう流れじゃないですか? さすが木部さんですよね。このMVでは起き上がったら布団なんですもん(笑)。
田中
ロックスターでもないから、結局“おやすみ”の部分にしか掛かってない(笑)。
前田
目論見どおりに話題にはなりましたし、僕らのアホっぽい人間性を分かってもらえた作品ではあったと思います。僕らはなぜか”怖そう”って言われるので…。でも、もう僕の記憶からは消しています(笑)。
あははは! でも、MVのインパクト以前に何よりも曲が良いですし、バンドを辞める/辞めないにかかわらず、人と人はつながっているんだという希望を見出せたところも、大きな意味を持つものだと思います。でも、ここ数年を振り返ると、やはりバンドマン、そしてライヴハウスで働くおふたりは、かなり厳しい状況にあったと思います。その中で、こうして1stフルアルバムをリリースするに至るまでモチベーションを保てることができたのは、どういう支えが大きかったですか?
田中
僕はコロナ禍になって配信ライヴという手段が出てきたことによって、自分たちの音楽に対する見え方や、やっていくべきことが明確になったというのが大きいですね。なんと言うか、いろんな配信ライヴを観ていく中で、熱量だけのライヴじゃいけないと思いました。ライヴハウスの中だけではなく、生活の中で聴く際にも通用するようなクオリティーの音楽を作っていかなければいけないと思ったし、熱量だけに注力するのではなく、もっと楽曲の力自体を高めていこうと思って、あの期間はとにかく曲を作っていました。今作に入っている曲は同期演奏を取り入れたりもしているんですけど、そういう既存の“ソウルフードらしさ”を自ら壊していくと言いますか、新しいことに挑戦していこうと思えたきっかけになりましたね。
前田
僕は“ただただ前田典昭の人生を生き抜く”それだけでしたね。ライヴハウスがなくなるわけでも、バンドメンバーが抜けるわけでもなく、ここまでこれたということでしかなかったと言いますか。この危機を絶望と感じるくらいの安い人生を歩んできていなかったですし、一緒にいたい人といる。ただそれだけでしたね。
田中
でも、そう考えると「それゆけ!バンドマン!」という曲ができたのは大きかったですね。
前田
それはそうだね。あの歌詞の中に《君に会いたい気持ち抑えきれずに/今日は靴を洗ったよ》という部分があるんですけど、その靴って2nd LINEのスタッフからもらった大事な靴のことで、僕がずっと履いていたものなんです。でも、この曲の歌詞を休業中のライヴハウスで作っている時、前日に雨が降った関係で、たまたまその靴を履いていなかったんです。そしたら、嫁がその靴を洗ってくれていたんですよ。その時に“あぁ、君にいつか会える日が必ずくるから、その時はきれいな状態のお気に入りの靴で会いたいな”と思った気持ちをそのまま書いた箇所なんです。
田中
当時のことをめちゃくちゃ思い出す曲ですね。“今後どうする? ライヴはキャンセルする?”っていう話でメンバーと大喧嘩していた時に書いた曲なんですけど、レコーディングした時にものすごく久々に全員で音を出せて、めちゃくちゃテンション上がりました。
当時の想いをパッキングできた楽曲なんですね。そんな時期も超えて、2月からは今作を引っ提げてのツアーも決まっていますが、以前と比べて気合の入れ方に対する変化はありますか?
前田
ツアースケジュールを組む際に、各地のライヴハウスの人に“ソウルフードのツアーなんですけど…”って言ったら、めちゃくちゃ喜んでくれたんですよ。それが本当に嬉しかったですし、自分たちを待ってくれている人がいるという実感が今まで以上にあって、気合いも入りましたね。触ったことのない感覚の感情と言葉を、ソウルフードに対してもらっていて、感謝しかないです。
田中
とにかくクオリティーの高い良いツアーにしたいという気合が入っています。大事なツアーにしたいといいう気持ちが先行しすぎて、スタジオで“こんな状態でツアーを回れるんかい!”って感じで怒鳴り散らかしています(笑)。
前田
今さら音楽性の違いなんてないし、そもそも全然違う方向を向いて集まったようなメンバーなんでね、それくらいのやり合いがあっていいんですよ。
田中
そうそう。恨み合いもないし、そのほうが面白いしね。だから、今までとは違う感覚になっていますし、楽しみです。
取材:峯岸利恵
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アルバム『SOULFOOD』2022年2月2日発売
YOKOZUNA RECORDS
『ソウルフード1st full album "SOULFOOD" release tour 2022』
2/05(土) 大阪・福島LIVE SQUARE 2ndLINE (ワンマン)
2/11(金) 福岡・福岡Queblick
2/12(土) 広島・広島ALMIGHTY
2/14(月) 愛知・名古屋CLUB ROCK`N`ROLL
2/23(水) 新潟・新潟CLUB RIVERST
3/04(金) 香川・高松DIME
3/06(日) 東京・府中Flight
3/16(水) 神奈川・横浜BAYSIS
3/17(木) 静岡・静岡UMBER
3/22(火) 京都・KYOTO MUSE
3/31(木) 兵庫・神戸music zoo 太陽と虎
4/07(木) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
4/08(金) 宮城・仙台enn 2nd
4/22(金) 東京・渋谷Spotify O-Crest
『ソウルフードpresents. それゆけ!バンドマン!』
5/05(木) 大阪・大阪城野外音楽堂
ソウルフード:2014年に結成された“SUPER BEER ROCK BAND”を掲げる4人組ロックバンド。メロディーや歌詞にとらわれず、感情のままに観客に言葉を放つ前田典昭(Vo&Gu)のフリースタイルともとれる歌唱とパフォーマンスで観客を魅了する。メンバー全員が関西のライヴハウスのスタッフという稀な経歴で、バンドマンや関係者からも絶大な支持を誇る。19年8月に配信シングル「きみのともだち」「燃える日々」をリリースし、全国5カ所で5周年記念ツアーを開催。22年2月に初の全国流通盤となる1stアルバム『SOULFOOD』をリリース。ソウルフード オフィシャルHP
「おやすみ!ロックスター!」MV
「それゆけ!バンドマン!」MV
「おぼろうた」MV
「ヒンジ」MV
「結局、」MV