【近石 涼 インタビュー】
何かに向かって変わっていく姿も
“ありのまま”だと思う
自分の実体験を書いた曲に、
誰かの共感が生まれるのが新鮮
先ほどお話に出てきた「ライブハウスブレイバー」に続いて、9月8日には「兄弟 II」と、配信シングルをリリースしている最中ですね。
昨年はコロナ禍でなかなか予定どおりに音楽活動が進まなかったので、最近やっと制作のリズムが掴めてきました。テンポ良く楽曲を作れたので、溜め込んだものを出せているのが嬉しいです。
「ライブハウスブレイバー」は過去に弾き語り音源で自主制作盤に収録されていた曲ですが、バンドサウンドにアレンジしてリリースしたのは理由があるんですか?
僕の頭の中では、最初からバンドサウンドが完成形だったんですよ。なので、この曲はバンドサウンドで出したかったんです。
歌詞では自分が音楽を始めてからの道のりを、まるでドキュメンタリーのように描いていますね。
ライヴハウスでもずっとひとりで歌ってきて、お客さんもなかなか集まらなかった時の葛藤を歌詞に綴っているんですけど、アレンジャーさんやMVに出てくれた方々もそうだし、いろんな人が関わってくれて完成させることができました。レコーディングはほぼ一発録りで録ったんですけど、その時に感極まって泣きそうになったくらい、この曲がバンドサウンドで演奏できたことが嬉しくて。そういう熱とか、自分が歩んできたストーリーも込みで、ようやくかたちにすることができました。
この曲を聴くだけでも近石くんがこれまでどんな想いで音楽をやってきたか、どんな音楽家なのかが伝わってきますよ。
“名前は知っていたけど、こんな曲を歌う人だったんですね”というのはよく言っていただけます。こういう自分の内面を曝け出した曲って、なんとなくカッコつけた感じの仕上がりになってしまう気がして、“本当に歌ってええんか?”という迷いもすごくありました。でも、僕自身は気どることが得意じゃないし、“もうそんなこと言ってられへん”と思いきった部分もあります。今は配信やSNSも便利になっていて、ライヴをしなくても音楽が売れる時代じゃないですか。音楽を届ける時にライヴを選ぶ人らって、ほんまに熱意があると思うんですよ。だから、このタイミングでリリースできたことには意味があると思ってます。
配信リリースをしたのが今年の8月だったから、それも相まって届くメッセージがあるかもしれないですね。
曲自体はコロナ禍より前に作ったので、最初からそういう意味を込めたわけではなかったんですけど、いい意味でも悪い意味でもライヴハウスや音楽業界が注目されるようになった今、自分は音楽をやっている身として“こういう想いで歌ってるんやで”というのを届けられたかなと。Twitterでも思ったより反響があって、引用やらリプライで意見をもらったんです。ライヴハウスのステージに立ったことがなくても、絵を描いている方とか、別業種で働いてる方からも“共感した”っていうコメントをいただいて。音楽を好きになって、憧れるアーティストの模倣から入り、次はそこからどう抜け出すかという壁に当たった…そんな完全に自分の実体験だけを書いた曲に、誰かの共感が生まれるのは新鮮ですごく面白いと思いました。
近石くんと同年代の人は特に共感できると思います。社会に出て行くために自分の道を見つけたとしても、うまくいかずにもがいている人は多いし、自分のやりたいことをずっと探している人もいる。そういう人たちを勇気づける曲になっているんじゃないかな?