bonobos、野音ラスト・ライブのアー
カイブ同時視聴会を実施
ラスト・ライブの映像は当日YouTubeでも生配信されていたが、今週末の3月11日(土)19:00より、YouTubeにてライブ映像のプレミア公開兼アーカイブ同時視聴会を行うことが決定した。視聴者同士でチャットしながらライブを振り返ることができる貴重な機会をぜひお見逃しなく。
■ bonobos LAST LIVE 日比谷野音公演を無料配信、未来にアーカイブするプロジェクト(うぶごえ)(https://ubgoe.com/projects/297)
さらに、上記のクラウドファンディングの参加者全員に3月3日(金)に開催された大阪BIGCAT公演のライブ音源CDがリターン品として付属すること、そしてBlu-ray映像作品のクレジットには蔡忠浩が書き下ろし作曲を行った音源が採用されることなどが新たに発表された。
先述の大阪BIGCAT公演のライブ映像全編は後日YouTubeにて公開予定。日比谷野音でのライブ音源も単体でデジタル・リリースされるほか、これまでのライブ・スチールや舞台裏のオフショットなどを収めたフォト・ブックを完全受注製造で製作することも決定した。いずれも詳細は後日アナウンスされるとのこと。続報を楽しみに待とう。
最後にして最高到達点 bonobosが5人で鳴らした未知の音風景
この日の本編では全16曲を演奏。そのうち13曲が、オリジナルメンバーである蔡忠浩と森本夏子に、小池龍平、田中佑司、梅本浩亘が加わって、5人編成の現体制となった2015年以降に発表された『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』からの楽曲だった。森本は『.jp』リリース時のインタビューで、「最後のライブが最高到達点であるように活動していきたい」と語っていたが、「22年の集大成」であると同時に、「この5人での集大成」という意味合いを強く感じた。
ラストライブということもあり、場内にはわずかな緊張も感じられたが、「ちょっぴり寒いですけど、風邪引かないように気をつけてください」という蔡のいつもの調子のMCに空気が和むと、「Gospel In Terminal」では〈come on, gospel〉に合わせて手拍子が起こり、森本のベースが引っ張るレゲエ調の「永遠式」では自然と体が揺れる。田中のシンセと小池の軽快なギターワークも印象的な「LEMONADE」に続いては、『.jp』の中でも最も長い、9分を越える大曲の「YES」。各楽器のフレーズがポリリズミックに絡み合いながらジワジワと反復することで熱を生み出すと、中盤ではシーケンスのフレーズと二管が並走し、〈YES YES YES〉と肯定のアジテーションを繰り返す曲構成はやはり見事という他ない。
すっかり日が沈み、ここで披露されたのは2004年にシングルでリリースされ、アルバム『Electlyric』に収録されている初期の名曲で、朝本浩文のプロデュースによる「あの言葉、あの光」。歌とピアノのみで始まり、途中からレゲエのリズムに変化すると、ボーカルやスネアにリアルタイムでダブ処理が加えられ、バンドの出自が感じられる。bonobosのデビュー当時はフィッシュマンズのフォロワーが多数登場した時期で、『GOLDEN DAYS』にはこだま和文やHAKASE-SUNが参加したりもしていたが、bonobosはその範疇にとどまることなく、そこから20年近い年月で独自の進化を遂げてきたことも、改めて感じさせた。
Talking Headsばりのポストパンク × アフロフューチャリズムによって宇宙的なグルーヴを生み、トランスにも近い熱狂を作り上げた「Hello Innocence」、蔡の紡ぐ美しいメロディーと、途中のリズムチェンジ以降の展開が圧倒的な高揚感を生む「三月のプリズム」はともに名演。「三月のプリズム」は『HYPER FOLK』の収録曲だが、欧米のチェンバーポップとも呼応しながら壮大なサイケデリアを作り上げた『ULTRA』~『HYPER FOLK』での達成があったからこそ、そのネクストステージとしての現編成があるということも、バンドの歴史においては非常に重要だ。
さらに『.jp』の収録曲の中でも特にポストプロダクションの割合いが強い「おかえり矮星ちゃん」では梅本が生でブレイクビーツを叩き出し、中盤のダブ処理は長年の経験が生かされ、後半ではサックスとトランペットによるフリーキーなソロに蔡のノイズギターも加わって、混沌とした音の洪水を作り出した。そして、他の楽曲も含めて常に強い存在感を放ち、こういった楽曲でもシンセベースを使ったりはせず、5弦のスタインバーガーで低音を支える森本の存在こそがbonobosらしさであることも再確認させられた。
大量のスモークがレインボーカラーに照らされた「In rainbow, I’m a rainbow,too」に続いては、この後のMCで蔡が「それまで思う通りにならないことが多かったけど、この曲を今のメンバーで合わせて、やっと欲しかったものが目の前にある気がした」と語った「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」。オリジナルのアレンジを基にした「ドンドンパン!」のリズムで手を広げる昔からのファンがいれば、自由に体を揺らす人もいるし、ジッと聴き入る人もいる。そんないろんな人たちが混ざり合いながら、それでも同じバンドの音楽を共有しているこの光景は、「ただそこにあること」を肯定するbonobosらしいものであったように思う。ラストは華やかなコーラスが彩る「うつくしいひとたち」が演奏され、アッパーなテンションで本編が締め括られた。
アンコールはカントリー調の「春のもえがら」から始まり、「自分で言いますけど、最高の名曲を最後に聴いてください」という紹介から、「23区」を演奏。ともに歌詞に〈ど(う)もありがとう〉という言葉が含まれる2曲が並べられたのは、決して偶然ではない気がする。「23区」の最後では「一緒にどうぞ!」とラララで合唱をし、一人ずつメンバー紹介をして、「22年間ありがとうございました!」と告げると、5人は晴れやかな表情でステージを後にした。
その後にステージに戻ってきた蔡は最初話をすることに躊躇しながらも、徐々に口を開き始めると、今のメンバーになったときにこれが最後の固定メンバーであることを決めて、『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』を作り、みんなで一緒に見たことのない音風景に行けたこと、やりたかったことは全部できて、悲しくはないことを丁寧に伝えていった。そして、「プロデュースをしてくれて、めちゃくちゃ勉強になった」という朝本浩文をはじめ、22年間の活動の中で出会った人たちに感謝を告げ、「僕はこういう人間で、面と向かって言う感じでもないので、こんな感じで許してください。ありがとうございました」と伝えると、再度会場は大きな拍手に包まれた。
メンバー一人ひとりにサムズアップをした蔡が「もう一曲聴いてください」と話して、最後に披露されたのは「あなたは太陽」。オレンジ色の照明に照らされた蔡の弾き語りから始まり、途中で4人の演奏とコーラスが加わって、レゲエへと変化する展開はまさにbonobosの真骨頂であり、物語の終わりと新たな始まりを告げる勇壮なファンファーレのように響く。〈あなたの未来に祝福を 圧倒的な祝福を〉という最後のメッセージを届け、眩い光に照らされた5人は最後にもう一度未知の音風景を作り上げて、22年の歴史に幕を閉じた。
Text by 金子厚武
■ bonobos オフィシャル・サイト(https://bonobos.jp/)
bonobosが22年の活動期間を経て、3月5日(日)東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマン公演『bonobos.jp』をもって解散した。
ラスト・ライブの映像は当日YouTubeでも生配信されていたが、今週末の3月11日(土)19:00より、YouTubeにてライブ映像のプレミア公開兼アーカイブ同時視聴会を行うことが決定した。視聴者同士でチャットしながらライブを振り返ることができる貴重な機会をぜひお見逃しなく。
■ bonobos LAST LIVE 日比谷野音公演を無料配信、未来にアーカイブするプロジェクト(うぶごえ)(https://ubgoe.com/projects/297)
さらに、上記のクラウドファンディングの参加者全員に3月3日(金)に開催された大阪BIGCAT公演のライブ音源CDがリターン品として付属すること、そしてBlu-ray映像作品のクレジットには蔡忠浩が書き下ろし作曲を行った音源が採用されることなどが新たに発表された。
先述の大阪BIGCAT公演のライブ映像全編は後日YouTubeにて公開予定。日比谷野音でのライブ音源も単体でデジタル・リリースされるほか、これまでのライブ・スチールや舞台裏のオフショットなどを収めたフォト・ブックを完全受注製造で製作することも決定した。いずれも詳細は後日アナウンスされるとのこと。続報を楽しみに待とう。
最後にして最高到達点 bonobosが5人で鳴らした未知の音風景
この日の本編では全16曲を演奏。そのうち13曲が、オリジナルメンバーである蔡忠浩と森本夏子に、小池龍平、田中佑司、梅本浩亘が加わって、5人編成の現体制となった2015年以降に発表された『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』からの楽曲だった。森本は『.jp』リリース時のインタビューで、「最後のライブが最高到達点であるように活動していきたい」と語っていたが、「22年の集大成」であると同時に、「この5人での集大成」という意味合いを強く感じた。
ラストライブということもあり、場内にはわずかな緊張も感じられたが、「ちょっぴり寒いですけど、風邪引かないように気をつけてください」という蔡のいつもの調子のMCに空気が和むと、「Gospel In Terminal」では〈come on, gospel〉に合わせて手拍子が起こり、森本のベースが引っ張るレゲエ調の「永遠式」では自然と体が揺れる。田中のシンセと小池の軽快なギターワークも印象的な「LEMONADE」に続いては、『.jp』の中でも最も長い、9分を越える大曲の「YES」。各楽器のフレーズがポリリズミックに絡み合いながらジワジワと反復することで熱を生み出すと、中盤ではシーケンスのフレーズと二管が並走し、〈YES YES YES〉と肯定のアジテーションを繰り返す曲構成はやはり見事という他ない。
すっかり日が沈み、ここで披露されたのは2004年にシングルでリリースされ、アルバム『Electlyric』に収録されている初期の名曲で、朝本浩文のプロデュースによる「あの言葉、あの光」。歌とピアノのみで始まり、途中からレゲエのリズムに変化すると、ボーカルやスネアにリアルタイムでダブ処理が加えられ、バンドの出自が感じられる。bonobosのデビュー当時はフィッシュマンズのフォロワーが多数登場した時期で、『GOLDEN DAYS』にはこだま和文やHAKASE-SUNが参加したりもしていたが、bonobosはその範疇にとどまることなく、そこから20年近い年月で独自の進化を遂げてきたことも、改めて感じさせた。
Talking Headsばりのポストパンク × アフロフューチャリズムによって宇宙的なグルーヴを生み、トランスにも近い熱狂を作り上げた「Hello Innocence」、蔡の紡ぐ美しいメロディーと、途中のリズムチェンジ以降の展開が圧倒的な高揚感を生む「三月のプリズム」はともに名演。「三月のプリズム」は『HYPER FOLK』の収録曲だが、欧米のチェンバーポップとも呼応しながら壮大なサイケデリアを作り上げた『ULTRA』~『HYPER FOLK』での達成があったからこそ、そのネクストステージとしての現編成があるということも、バンドの歴史においては非常に重要だ。
さらに『.jp』の収録曲の中でも特にポストプロダクションの割合いが強い「おかえり矮星ちゃん」では梅本が生でブレイクビーツを叩き出し、中盤のダブ処理は長年の経験が生かされ、後半ではサックスとトランペットによるフリーキーなソロに蔡のノイズギターも加わって、混沌とした音の洪水を作り出した。そして、他の楽曲も含めて常に強い存在感を放ち、こういった楽曲でもシンセベースを使ったりはせず、5弦のスタインバーガーで低音を支える森本の存在こそがbonobosらしさであることも再確認させられた。
大量のスモークがレインボーカラーに照らされた「In rainbow, I’m a rainbow,too」に続いては、この後のMCで蔡が「それまで思う通りにならないことが多かったけど、この曲を今のメンバーで合わせて、やっと欲しかったものが目の前にある気がした」と語った「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」。オリジナルのアレンジを基にした「ドンドンパン!」のリズムで手を広げる昔からのファンがいれば、自由に体を揺らす人もいるし、ジッと聴き入る人もいる。そんないろんな人たちが混ざり合いながら、それでも同じバンドの音楽を共有しているこの光景は、「ただそこにあること」を肯定するbonobosらしいものであったように思う。ラストは華やかなコーラスが彩る「うつくしいひとたち」が演奏され、アッパーなテンションで本編が締め括られた。
アンコールはカントリー調の「春のもえがら」から始まり、「自分で言いますけど、最高の名曲を最後に聴いてください」という紹介から、「23区」を演奏。ともに歌詞に〈ど(う)もありがとう〉という言葉が含まれる2曲が並べられたのは、決して偶然ではない気がする。「23区」の最後では「一緒にどうぞ!」とラララで合唱をし、一人ずつメンバー紹介をして、「22年間ありがとうございました!」と告げると、5人は晴れやかな表情でステージを後にした。
その後にステージに戻ってきた蔡は最初話をすることに躊躇しながらも、徐々に口を開き始めると、今のメンバーになったときにこれが最後の固定メンバーであることを決めて、『23区』、『FOLK CITY FOLK .ep』、『.jp』を作り、みんなで一緒に見たことのない音風景に行けたこと、やりたかったことは全部できて、悲しくはないことを丁寧に伝えていった。そして、「プロデュースをしてくれて、めちゃくちゃ勉強になった」という朝本浩文をはじめ、22年間の活動の中で出会った人たちに感謝を告げ、「僕はこういう人間で、面と向かって言う感じでもないので、こんな感じで許してください。ありがとうございました」と伝えると、再度会場は大きな拍手に包まれた。
メンバー一人ひとりにサムズアップをした蔡が「もう一曲聴いてください」と話して、最後に披露されたのは「あなたは太陽」。オレンジ色の照明に照らされた蔡の弾き語りから始まり、途中で4人の演奏とコーラスが加わって、レゲエへと変化する展開はまさにbonobosの真骨頂であり、物語の終わりと新たな始まりを告げる勇壮なファンファーレのように響く。〈あなたの未来に祝福を 圧倒的な祝福を〉という最後のメッセージを届け、眩い光に照らされた5人は最後にもう一度未知の音風景を作り上げて、22年の歴史に幕を閉じた。
Text by 金子厚武
■ bonobos オフィシャル・サイト(https://bonobos.jp/)
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