「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
地元を愛し、地元に愛された
いきものがかりのヒットを探る

総合4位はデビュー曲にして
名曲の「SAKURA」

総合4位は2006年のメジャーデビュー作「SAKURA」がランクイン。CDでは発売7週目に最高位17位をマークし、その後もTOP200内に31週するロングヒットだが、配信のほうはさらにスローなヒットぶりで、2006年時点は年間66位と10万件クラスのヒットだったのに、毎年、桜の季節になる度に“定番の桜ソング”としてメディアに紹介されては再浮上を繰り返し、累計75万件を超えるヒットに。

当時はNTT「DENPO115」NTT東日本エリアCMソングだったことや、インディーズ時代からの基盤が神奈川地区だったことから、東日本限定のヒットだったが、『ワールド・ベースボール・クラシック』の番組内でCMが流れたこと(というよりも、レコード会社がその後に“野球効果で「SAKURA」が話題”と各スポーツ紙にしっかり仕込んだことが大きいと感じている)や、その後『ミュージックステーション』の新人注目コーナー“Young Guns”で取り上げられたことで一気にお茶の間に広まった。本作の雄大でありつつ儚さを感じさせる曲想は、ボーカル吉岡の特長が最大限に活かされるパターンで、デビュー曲にして既に名曲が誕生しているのも感慨深い。

総合5位に吉岡のコスプレも話題だった
「気まぐれロマンティック」

そして、総合5位には2008年の12thシングル「気まぐれロマンティック」がランクイン。本作は上戸彩が主演のドラマ『セレブと貧乏太郎』の主題歌に起用され、ドラマのコミカルなタッチに合わせて、いきものがかりの楽曲の中でも可愛らしさが前面に出たミディアム調のポップス。これも、女性ファンの多い配信で強かった要因だろう。吉岡がナースやショップの女子店員など様々なコスプレをするミュージックビデオも話題となった。

また、本作はカラオケが4位と強いのもポイント。カラオケでは1位の「ありがとう」、2位の「YELL」と鉄板バラードが並ぶが、3位に「ブルーバード」、4位に「気まぐれロマンティック」、6位に「じょいふる」、更には7位にアニメ『七つの大罪』テーマ曲に起用され、そのアドベンチャー感あふれる曲想ゆえ、アニメファンやスマホゲームファンからも人気の「熱情のスペクトラム」とアッパーな楽曲も多数上位入りしているのも、彼ららしい。
なお、いきものがかりは、ドラマタイアップ曲も多数あるが、ジャニーズ事務所や研音、スターダストプロモーションのように、主演クラスの俳優も主題歌も同じ事務所がガチガチに抱えるといったパターンはさほどない。むしろ、彼らの等身大の楽曲がドラマを華やかにすることが、タイアップ獲得の大きな要因と言えそうだ。
総合7位には2012年の発売の24thシングル「風が吹いている」がランクイン。NHKロンドンオリンピック・パラリンピック放送テーマソングとしてこの年の夏に大量にオンエアされ、また年末のNHK紅白歌合戦では紅組のトリで歌唱されたことで記憶した人も多いだろう。

但し、この歌は水野が気合いを入れ過ぎたのか、8分近い大作バラードで、彼らのモットーとする親しみやすさとはやや異なる路線。しかも、同年末に発売されたバラードベストアルバム『バラー丼』ではオーケストレーションを前面に施した9分を超えるバージョンで、これはさすがにやり過ぎな感じが(メロディーは確かに美しいんだけれど…汗。この辺りから彼らのポップにしたい部分とエッジを利かせたい部分のバランスに迷いが生じてきたような気もする)。

とはいえ、総合1位、2位、7位とNHKがらみの大型タイアップが出揃っており、このNHKとの抜群の相性の良さも彼らの国民的な音楽性を象徴していることだろう。

OKMusic編集部

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