『ヴァグラント』『FACTORY GIRLS』
「3LDK」アミューズの注目作品&ユニ
ットが集合 日比谷フェスティバルレ
ポート

数多くの劇場が集まる日比谷・銀座の街を舞台に、2018年より開催されている『日比谷フェスティバル』(NESPRESSO presents Hibiya Festival 2023)。ミュージカルや伝統芸能、オペラ、器楽といった様々なエンターテイメントの熱気を劇場から街へ解き放ち、都市とエンターテインメントと人を繋げている。2023年4月30日(日)に行われたステップショーの様子をお届けしよう。
a new musical『ヴァグラント』
平間壮一
廣野凌大
本作は、ポルノグラフィティのギタリストである新藤晴一がプロデュース・原案・作曲・作詞を手がけるオリジナルミュージカル。この日は新藤と平間壮一、廣野凌大、小南満佑子、山口乃々華、水田航生、美弥るりかが登場。
和の要素とロックの要素が入り混じった粋で華やかな「祝い唄」、トキ子(小南満佑子・山口乃々華)、政則(水田航生)、譲治(上口耕平)という幼なじみの3人が歌う詩的な言葉が印象的な「月の裏側」、佐之助(平間壮一・廣野凌大)の熱さや葛藤を感じさせる「マレビトの矜持」が披露された。この日公開されたビジュアルと合わせてイメージが広がり、作品への期待がグッと膨らむ。
新藤晴一
パフォーマンスの後は新藤も参加し、本作が始動したきっかけや楽曲についてのトークが行われた。まずは観客を前に初披露した楽曲について聞かれ、新藤は「これからどんどん進化していくと思うけど、皆さんに歌ってもらったことで曲がイキイキして感動しています」と笑顔に。緊張していたという廣野をはじめとするキャスト陣も「良かった!」と胸を撫で下ろす。
この企画は、新藤が2019年にロンドンで『メリーポピンズ』を観て改めて魅力を感じ、「自分は曲も歌詞も小説も書く。簡単なことではないけどチャレンジできるかも」と思い立って周囲に相談したことから始まったそう。ポルノグラフィティとして追求する音楽とは違い、物語が呼ぶ音楽を作りたいと感じて取り組んだ結果、今まで作ってこなかった音楽ができたという。
新藤から「逆に、普段ミュージカルの曲を歌うことが多いみなさんがロックやポップス寄りの歌を歌うのはどうなんですか?」と質問されると、平間は「オリジナルで、日本語で書かれた日本語のための楽曲なのでお芝居もやりやすいしすんなり言葉が入ってくる」と答え、美弥も「翻訳だと日本語に無理がある場合もあるけど、言葉に合わせて音楽があると歌っていて気持ちいい」と話す。
また、新藤はミュージカルに挑戦したからこその気付きもあったそうだ。その一つが楽曲で使用する音域。「歌いやすい名曲は1オクターブ半くらいに収まった上で豊かなメロディーがあることが条件らしい。でも、俺が作ってあいつ(岡野昭仁)が歌ってる曲は、その倍くらい(笑)。歌いにくいんだってことを最近学びました。だからこのミュージカルでは比較的まともにしたけど、でも広いですね。これから大変なところがどんどん出てくると思います」とハードルを上げる。これに対し、廣野は「(ポルノグラフィティ)第3のメンバーになれるように頑張ります!」とボケて笑わせていた。
左から小南満佑子、水田航生、山口乃々華
歌唱の感想を聞かれた山口は「とても綺麗なメロディーだけど歌詞は生々しさもあって、物語を知るとより深みが増す楽曲なんだろうなと思いながら歌いました。新しいけどどこか安心するようなメロディーで、歌っていて楽しかったです」と語る。小南も「今日は3曲だけでしたが、作品の世界観などが詰まった楽曲で、私もいちミュージカルファンとして楽しみです。演劇界に新しい風を吹かせられるような作品になるんじゃないかと思います」と自信を覗かせた。
そんなキャスト陣の姿に、新藤は「歌唱指導や振り付けの方が指摘や指示をすると、皆さんすぐやるのでびっくりしました。ミュージカル俳優はあんなに一瞬で入るものなんですね」と驚きつつ、「僕がミュージカルファン目線で書いた曲を今日聞けて、このミュージカルを観たいと思いました」と仕上がりに期待を寄せる。アーティストのライブにはない長い稽古期間にも興味津々なようで、「これだけ歌えて踊れて物語の理解力も高い人たちが、これから1〜2ヶ月稽古するんでしょう。ありがたいですね。絶対見に行きたいし仲良くしてもらいたい!」と笑顔を見せた。

左から美弥るりか、廣野凌大

最後に平間が「この作品の登場人物は、1人1人が悩みや不安を抱える人間。誰もが持っているような闇と立ち向かい、どんな人と出会ってどんな変化が起きるのかを描いています。みんなが仲間になって、最後は一緒に盛り上がれる舞台にしたいし、何かの力になればいいと思っています」と語り、最後に様々なメッセージや問いかけが詰まった「あんたに聞くよ」というナンバーでステージを締め括った。
>(NEXT)『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』
ミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』
ステージには柚希礼音ソニン実咲凜音、清水くるみ平野綾が登場。前向きでパワフルなメッセージに満ちた「自由か死か」でスタートした。自分らしく生きようと奮闘する女性たちを描いた凛々しく勇ましい楽曲に、客席から大きな拍手が起きていた。
本作は、2019年に日米のクリエイターによって競作され、同年の読売演劇大賞優秀作品賞を受賞したオリジナルミュージカル。ソニンは「アメリカで曲や流れはなんとなくできていましたが、みんな世界初演という気持ちで作り上げました」と語る。
19世紀半ばのアメリカの実話を元に、過酷な労働環境や賃金に関する差などに対し、平等と権利を求めてペンを武器に戦った女性たちを描いた物語で、この日のイベントに登場したキャスト陣は紡績工場の工員を演じる。柚希演じるサラが、ソニン演じるハリエットら女性たちと友情を育み、立ち上がる物語だ。女性たちのポジティブなパワーが詰まった楽曲とストーリーで、2019年の初演は多くの観客の共感を呼んだ。
続いて披露されたのは、サラが戦うことへの不安と決意を歌う「剣と盾」。柚希のまっすぐで伸びやかな声に心を掴まれる。日比谷フェスティバル用の特別バージョンとなる「自由の国の娘たち〜ストライキ」は、語りかけるようなソニンの歌唱によって物語の世界に引き込まれた。サラとハリエットの友情とすれ違い、女性たちの強い思いに胸を打たれる。
柚希礼音
ソニン
実咲凜音

トークコーナーでは、再演から参加する平野が「みなさんのパワーに驚いています。早くこのチームワークに入れるように頑張ります!」と意気込み、ソニンは「今回はキャストが結構変わっているのもあって、楽曲やセリフが加わったり変更されたり。初演を見てくださった方も新鮮に楽しめると思う」と見どころを語る。柚希は「サラとハリエットの友情が育まれるまでの過程がより丁寧になるそうです」と、変更点に対する楽しみなポイントを述べた。
楽曲の難易度が高いのも本作の特徴だそう。実咲は「私は歌ってないけど、寄稿集の編集シーンで歌う曲は難しいと思う。三拍子だし」と挙げ、清水は「戦う曲はリズムをちゃんと取らないと戦っている感じがしない」と難しさを語っていた。

清水くるみ
平野綾

平野は「私は今回から初参加で、大変なことや作中の素敵なことを、これからたくさん感じていくと思います。それを大切にしながら、みなさんに引っ張ってもらいつつ新しい『FACTORY GIRLS』を作れたらいいなと思っています」と意欲を見せる。清水は「また新たな、パワフルな作品になると思うので、初演を観てくださった方もぜひ観に来てください!」と笑顔で語り、実咲は「初演の時、観に来てくださった方々からいただいた言葉が連鎖し、たくさんの方に観ていただけたことを本当に嬉しく思いました。新たなメンバーも加わり、いちから新しく作るものを観ていただけたら嬉しいです」とアピール。
ソニンは「初演は本当に苦労してみんなで作り上げました。もちろん日米合作ではありますが、日本発のオリジナルミュージカルだと胸を張って言いたいくらい、本当に全力で作りました。そこから再演に向けてさらにブラッシュアップし、新しいキャストの皆さんに刺激をもらって、2023年の『FACTORY GIRLS』ができると思います。劇場でお会いできることを楽しみにしています」と熱意たっぷりに語る。柚希は「公演中も何度も魂を揺さぶられる感覚がある、大好きな作品なので、再演ができて本当に嬉しいです。新たな仲間が加わり、3年半経ってみなさん今日まで色々なことがあって、それを元にさらにパワーアップした舞台をお届けしたいと思いますので、何度でも足をお運びください」と呼びかけ、優しく温かい力強さに満ちた「あなたと出会えてReprise」で幕を閉めた。
>(NEXT)3LDK
3LDK
この日最後に行われたのは、植原卓也、平間壮一、水田航生による俳優ユニット3LDKのステージ。コロナ禍もあって観客の前で披露するのは初だという植原作詞の楽曲「LOVE GAME」では、キレのあるダンスと歌唱に自然と拍手が起き、ステージ周辺のボルテージがグッと高まっていた。
平間壮一
植原卓也
水田航生
3人は付近の施設からイベントを見ている人にも手を振りながら盛り上げ、4月7日(金)に発売したフォトブックや、冬に3人で上演するコメディミュージカル『ミア・ファミリア』の話をゆるい雰囲気で繰り広げる。それぞれが俳優として活躍しており、日比谷周辺にある劇場との関わりも深いことから、各劇場や付近のパン屋に関する話題も。自然体のトークに観客席からは笑い声や歓声が幾度も上がる。
続いて、2023年冬に3人で上演する韓国発のミュージカル『ミア・ファミリア』より「ミア・ファミリア」が披露された。シアターバーを舞台にしたワンシチュエーションコメディで、劇中劇の中で歌われるナンバーだそう。本編の後にライブ形式になる作品で、演出を手がける安倍康律から「本人たちを出していい」と言われているということも明かし、後半は観客と一緒に楽しみたいと語った。
さらに、それぞれが出演を控えている舞台として、植原より『ダーウィン・ヤング 悪の起源』、平間から『ダ・ポンテ〜モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才〜』、水田から『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』、平間と水田が出演する『ヴァグラント』の告知が行われた。
ラストに披露されたのは「Summer Flower」と「Butterfly」の2曲。「Summer Flower」は3人の歌声を堪能しつつゆったりノれるナンバー。平間がステージから客席に降りる一場面もあり、客席と一体になって楽しんでいる様子が印象的だった。最後の「Butterfly」は、ガラリと雰囲気を変えてクールで疾走感のあるパフォーマンスで魅せる。それぞれの個性が見えるダンスや歌唱、ハプニングやアドリブにも瞬時に対応する息のあったやりとりに、冬の舞台への期待が高まった。

日比谷フェスティバルは5月7日(日)まで日比谷・銀座で開催。ステップショーの様子はライブ配信・アーカイブ配信も行われている。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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