【JYOCHO インタビュー】
どれだけ音楽的に面白くても
楽曲として良くないと意味がない
未来は明るいかもしれないけど、
今の自分たちはどうなん?
手癖などを活かすのではなく、ご自身の中にイメージや情景があって、それを楽曲やギターで具現化することに長けていることを改めて感じます。続いて2曲目の「人だった」について話をうかがいたいです。
この曲は“未来の人類はどうなっているのか?”ということがテーマになっています。詳しいことはあまり言及しなくていいと思っていますが、人類の想いはどういった変化をしていくのか…みたいなところを表現したつもりです。
暗示的な歌詞ではあって、科学の発達やあふれる情報などによって人間本来の感覚が麻痺していき、いつかは今の人間とは違ったものになるのではないか…ということを歌っているのかなと思いました。
すごく当たっています。ただ、決してネガティブな思考ではなくて、僕は未来には明るい考えを持っていて、この曲は現状を歌っているんです。“未来は明るいかもしれないけど、今の自分たちはどうなん?”と。未来を見据えて現状を歌っている感じの曲ですね。
楽曲面については?
曲調に関してはJYOCHOでライヴをどんどん重ねていく中で、ギターを気持ち良く歪ませる曲が作りたいと思ったんです。そういうシンプルな動機から入っていきました(笑)。ライヴで気持ち良い曲を作りたいと思ったんですけど、コンセプトとかを組み立てていくにあたって、結果的にあまり明るい曲にはならなかったですね。ライヴで強い楽曲にしたいと思っていたので、歌詞もパワーワードというか自分の中で響く言葉をチョイスしたり、あとは…もちろんギターの音作りにはこだわったし、ドラムやベースの音作りとかもこだわりましたね。ヴォーカルもこの楽曲は他の楽曲に比べて“こういうふうに音を作ろう”といった細かい音のチョイスもしました。
この曲のヴォーカルは特にサビがそうですが、猫田さんには珍しく力強いものになっていますよね。それも、決して暴力的な歌ではなくて、内面の強さが表れている歌という印象です。
そう言っていただけると嬉しいです。猫田さんは基本的には少年っぽい、中性的な歌をJYOCHOでは歌ってくださっていて、歌い方自体も息が多めで、そこまで激しく声を張らない方で、すごくきれいなんですよね。だけど、この曲は楽器やオケが結構強いので、それに耐えうる歌を歌ってほしいと思って。なので、普段は自由に歌ってもらっていますが、この曲は結構強めにディレクションしました。例えばサビは声が裏返ってもいいし、ピッチが外れてもいいから、強い気持ちで自分が出せる一番強い歌を歌ってほしいとお願いしたんです。汚くていいので、そういうふうに歌ってほしいと。それが、今おっしゃったような歌につながったのかなと思います。
粗野な歌にはなっていなくて、猫田さんのまた新たな魅力を味わえます。また、「人だった」はギターの聴きどころも多くて。ひとつはクリーントーンで弾くことが多いコンテンポラリーなフレージングを、少し歪みのかかったビンテージライクな音で弾かれていますね。
ずっと歪んでいるほうがライヴで気持ち良いと思って(笑)。音色に関してはシンプルにこういった音が好きだというのがありますし、Aメロの歌詞の情景に合うので決めたのもありますね。使った機材はギターがオベーションのヴァイパーで、アンプは何だったかな? いろいろ試したんですよ。普段はフェンダーのホットロッド・デラックスを使っているんですけど……。いずれにしてもフェンダーだった気がします。あの音はアンプもあるけど、ヴァイパーの独特の感じが大きいと思います。SAITO GUITARSも試したけど、解像度が高くてめちゃくちゃ張りついてくるんですよ。耳の近くで鳴ってくれるというか。
そこです! 解像度の高いクリーントーンで弾きたくなるようなプレイですが、だいじろーさんは違っているという。
そうですね。この曲はオベーション・ヴァイパーの儚い感じが合うと思ったんです。
“こういうプレイの時は、こういう音でしょう”という固定概念にとらわれないのは素敵なことです。もうひとつ、この曲の出だしや間奏のギターは途中からあえてリズムを崩すフレーズになっていて、それが不安感を表現している印象を受けました。
そう! イントロを、最初の2小節くらいは明るい感じで始まるけど、後半は壊れてしまうような感じにしたいと決めていて。Aメロでちょっと変なコードを入れたりとか…あと、サビで上がりきらない。“ここでこっちに落ちるんや!?”みたいなコード進行にしていて、楽曲に寄せにいっているところはありますね。
ライヴで演奏して楽しい曲というと勢いがあってストレートなものをイメージしますが、ひと筋縄ではいかない曲に仕上がりましたね。
ライヴで気持ち良く演奏したいと思っていたけど、メンバーはみんなムズすぎると言っています(笑)。気持ち良く演奏する前に、必死になってしまう可能性はありますね(笑)。