『印象派 モネからアメリカへ ウス
ター美術館所蔵』記者発表会レポート
 鈴鹿央士が“印象派風”の花束とと
もに

2024年1月に、展覧会『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』が開催される。本展は数ある印象派展の中でも目新しいテーマとして、「アメリカ印象派」について紹介する展覧会だという。2024年は印象派誕生から150年となる節目の年。印象派がヨーロッパ、そしてアメリカに与えた衝撃と影響をたどり、改めてその意義に思いを巡らせる機会となるだろう。本展は1月27日(土)からの東京都美術館における東京展を皮切りに、その後およそ1年かけて各地へと巡回予定だ。
記者発表会の様子
記者発表会では展覧会オフィシャルサポーター・俳優の鈴鹿央士が登場し、本展への思いをコメントする一幕も。記事の後半では鈴鹿からのメッセージも併せてお届けするので、展覧会開幕に向けての心の燃料になれば幸いである。
「印象派って、フランスだけだと思っていました」
記者発表会は、展覧会主催者が登壇しての挨拶からスタート。まずは企画・招聘をつとめた澤 桂一氏(日本テレビ放送網株式会社 取締役執行役員)がマイクを握り、その場にいる大多数の人の思いを代弁するような一言で挨拶を始めた。
「恥ずかしながら、アメリカ印象派って、実はこれまで知りませんでした」
引き継いだ東京展主催者代表の高橋明也氏(東京都美術館館長)は「全然恥ずかしいことありませんよ」と笑顔で受け止めつつ、これまで日本でほとんど知られてこなかったアメリカの印象派について、このたび紹介できる興奮と喜びについて語った。
記者発表会の様子
「アメリカの各都市の、とりわけ初期から開拓された東部の都市というのは非常に充実した美術館を持っていまして、驚くべきコレクションがあります。マサチューセッツにあるウスター美術館はまさにそのひとつです。ところが、このコレクションはこれまでほとんど日本で紹介されたことがないんです。今回のウスター美術館の作品というのは、我々の感覚に非常に近しい、 優しくて綺麗な、心に沁みるような作品が多いですから、公開されれば大変な話題になるのではないかと思っております。例えば展示作品の中には、1910年に収蔵されたモネの《睡蓮》があります。これは世界の美術館の中でもトップクラスに早く収集されたモネの作品です。今回はそのようなフランスの印象派の画家たち、あるいはアメリカの風土に密着した画家たち、それと並んで、まだあまり知られていない北ヨーロッパの画家たちの作品も展示される貴重な機会です」
「第1章 伝統への挑戦」
記者発表会の様子
本展は、主にアメリカ・ボストン近郊にあるウスター美術館の収蔵コレクションを中心に約70点で構成される。なんと、そのほとんどが日本初公開である。印象派の展覧会は毎年数多く開催されているけれど、未だ知られざる作品がそんなにあったとは……と少しばかり衝撃を受ける。
ウィンスロー・ホーマー《冬の海岸》1892年 油彩、カンヴァス  Theodore T.and Mary G.Ellis Collection,1940.60
まず第1章では、19世紀のフランスやアメリカの画家たちによる瑞々しい風景画が紹介されるという。ジャン=バティスト=カミーユ・コローの大気の震えを感じさせる筆づかいや、ウィンスロー・ホーマー《冬の海岸》に見られるスピード感溢れる波には、印象派の先駆けとも言える表現を見ることができるだろう。
「第2章 パリと印象派の画家たち」
第2章では、1874年のパリで生まれた「印象派」とはどんなアートムーヴメントであったのか、モネやピサロ、ルノワールといった画家の作品を通じて改めて確認していく。普通の印象派の展覧会ならここがメインとなるであろう豪華なセクションながら、今回は、その後の発展を見ていくうえでの贅沢な“前振り”である。
クロード・モネ《睡蓮》1908年 油彩、カンヴァス  Museum Purchase,1910.26
大注目は、モネの《睡蓮》。睡蓮シリーズばかりを展示した初めての展覧会(1909年開催)を訪れたウスター美術館の初代館長が、翌年にさっそく購入したという一作だ。会場では作品購入当時のやりとりを記す書簡(複製)も併せて展示されるそうで興味深い。
チャイルド・ハッサム《花摘み、フランス式庭園にて》1888年 油彩、カンヴァス  Theodore T.and Mary G.Ellis Collection,1940.87
また、印象派から新しい表現を学び、「アメリカ印象派」を代表する画家となったチャイルド・ハッサムにも期待が高まる。《花摘み、フランス式庭園にて》は、《睡蓮》と並んで本展のメインビジュアルに採用されている美しい作品だ。
「第3章 国際的な広がり」
第3章では、各国の画家たちが自国に印象派のエッセンスを持ち帰り、独自に展開させた例を見ることができる。スウェーデンの国民的画家であるアンデシュ・レオナード・ソーンや、黒田清輝ら明治〜大正期の日本の画家による作品も。
記者発表会の様子
解説を担当した東京都美術館の大橋学芸員いわく、画家たちが印象派から受けた影響として「サッサッ、という素早くカッコいい筆づかい」が挙げられるという。光の一瞬のきらめきを描き留める、勢いのあるタッチにぜひ注目したい。
「第4章 アメリカの印象派」
記者発表会の様子
そして第4章では、国際的な印象派の広がりの中で、特にアメリカでどのような受容があったかを検証する。本展のハイライトとなる「アメリカ印象派」のセクションである。
記者発表会の様子
ここではチャイルド・ハッサムのカイユボットを思わせる都市風景、そしてモネを思わせる断崖の風景画などと出会うことができる。新しい都市の姿や、自然の驚異を描き留めようとする画家の鋭い視線を感じることができるだろう。
「第5章 まだ見ぬ景色を求めて」
最終章ではさらに時代が進み、点描技法でお馴染みの新印象派・シニャックや、ポスト印象派と呼ばれるセザンヌらの名品が鑑賞者を待っている。
記者発表会の様子
アメリカの作品では、グランド・キャニオンを描いた《ハーミット・クリーク・キャニオン》が大きな見どころになりそうだ。グランド・キャニオンは当時、鉄道の開設によって観光地として開かれたばかりだった。画家デウィット・パーシャルはそのPRのため現地に派遣され、この作品を描いたのだという。自然の壮大さ、力強さに溢れたこの景色は、まさしく“アメリカ的”風景と言えるのではないだろうか。
展覧会オフィシャルサポーターを担当するのは……
解説に続いて、本展覧会のオフィシャルサポーターを務める俳優・鈴鹿央士が登壇し、記者らの質問に応えた。
ーー本展のオフィシャルサポーターとしての意気込みを教えてください。
今回初めて展覧会のオフィシャルサポーターを務めさせていただくことになって、非常にワクワクしています。皆さんに気軽に楽しんでいただけるように、そして僕自身も皆さんと一緒に楽しんでいけたらなと思っております。
ーー鈴鹿さんは写真を撮影されるのがお好きでアートにも興味がおありとのことですが、印象派にはどのような印象をお持ちでしたか?
そうですね……。正直、あんまり美術の知識がなかったので、今回このお話をいただいてから色々学ばせていただきました。それまでは(印象派って)何だかこう、淡い感じの風景の絵が多いなって印象でした。モネの《睡蓮》とかしか知らなかったですね。
鈴鹿央士
ーー今回「アメリカ印象派」というものに初めて触れられたと思うのですが、ご覧になってどのように感じましたか?
フランスとまた違った、アメリカならではの壮大な自然の風景が描かれていて。グランド・キャニオンが描かれた作品とか、すごく素敵だなって思いました。その土地でその人が見た、その人の感覚っていうものが印象派の作品には表れているので。やっぱりこう、太陽の光の感じとかも違うのかなって。今回、北欧の作品も展示されるので、フランスとアメリカと北欧と、世界中の印象派の作品を一緒に見て、その土地ごとの違いなんかを感じるのも楽しいんじゃないかな、って思います。
鈴鹿央士
ーー音声ガイドのナレーターも務めると伺いました。収録はいかがでしたか?
いや、なかなか……たくさん噛みました(笑)。本当に、自分ってこんなに喋れなかったっけな……と思いながら収録したんですけど。ウスター美術館って(美術館と来館者の)距離感が近くて、みんなが気軽にやってくる美術館なんだそうです。その雰囲気を、僕の声で出せたらなって思いました。音声ガイドを聴いてくださっている方と、会場を一緒に楽しく回っているような感覚を意識しながら録っていったので、僕はカミカミだったんですけど楽しく収録できました。いろんな解説のほか、クイズを出したりもしてるので、ぜひ楽しんでいただけたらなと思います。
ーー本展を楽しみにしている方々へ、メッセージをお願いします。
この展覧会は初来日の作品も多いですし、美術ファンの方にもきっとすごく価値を感じていただけると思います。僕と同じで、まだあんまり美術知らないという方にも、気軽に足を運んでいただいて、どんどん印象派の絵にのめり込んで、その魅力を楽しんでいただきたいです。あと今回、グッズで「ウスター展ソース」を作られたそうで。美術館の名前がウスターだからウスターソース作ったって、なんか、ちょっと……ふふ……(和やかな笑いに包まれる会場)。僕もそれ聞いて「あ、そうなんですね」としか返せなかったんですけど(笑)。そういうお茶目さもある展覧会なので。皆さん、気軽に足を運んでいただけたらなと思います。よろしくお願いします!
記者発表会の様子
右手が噂のオリジナルグッズ「ウスター展ソース」。ウスターソース発祥の地であるイギリス・ウスター市と、ウスター美術館のあるアメリカ・ウスター市が姉妹都市であるつながりから制作されたという。「奇跡のコラボレーションをお楽しみください」とのMCに、会場からはどっと笑いが溢れた。
鈴鹿央士
フォトセッション時に鈴鹿が手にした花束は、メインビジュアルの《花摘み、フランス式庭園にて》に描かれた花籠をイメージしたものだという。彩り豊かな風景が並ぶこの展覧会は、きっと来場者にとって心と眼に花束を贈るような体験となるだろう。『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』は、2024年1月27日(土)から4月7日(日)まで、東京都美術館にて開催。その後、各地へと巡回予定。2024年のアートシーンにとって、「アメリカ印象派」は欠かせないキーワードとなりそうだ。
This exhibition was organized by the Worcester Art Museum
掲載作品はすべてウスター美術館蔵
All images courtesy of the Worcester Art Museum
文・写真=小杉美香、写真(一部)=オフィシャル提供

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