ゾクゾクするようなオープニング! 
遠山ドラマティア『C‘est Promis』
(セ プロミ)〜稽古場取材レポート
&遠山晶司(梅棒)インタビュー

梅棒のメンバーである遠山晶司が脚本・演出・振付を務める、遠山ドラマティア『C’ est Promis』(セ プロミ)が2023年10月5日(木)〜15日(日)こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演される。
劇場での主催公演を中心にアーティストLIVE、映画や音楽番組などの映像メディア、宝塚歌劇団や2.5次元までの幅広い舞台作品などでの振付・演出でも活躍するダンスエンターテインメント集団「梅棒」。本公演は、梅棒メンバーであり、『成井豊と梅棒のマリアージュ』で演出家、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンやMANKAI STAGE『A3!』シリーズなどで振付師としても活躍する遠山晶司が脚本・演出・振付を務める企画公演”遠山ドラマティア”シリーズの第2弾だ。
筑後市に語り継がれる背中に一対の翼を持つ犬の物語「羽犬伝説」を元にしたオリジナルファンタジー作品。梅棒が得意とするノンバーバル表現にセリフを用いるシーンを加え、戦国時代と現代の2つの時代でそれぞれの思惑や運命が交錯していく様と古に交わした約束の行く末を描く。どんな公演になるのか。SPICE編集部では稽古場を見学させてもらったほか、遠山晶司にインタビューした。
ーー遠山ドラマティアの第2弾。今回はどんな構想からスタートしたのでしょう?
遠山晶司(以下、遠山):もともとの構想は、梅棒の第10回公演『OFF THE WALL』をやっているとき。どういう作品にしようかと構想を練っていて、東日本大震災のことが頭にあったこともあって〈悲しいお話〉がぼんやりとありました。結局『OFF THE WALL』は別の話になっていきましたけどね。
……田舎町を舞台にしたいなと思っていて、突拍子もないですけどそこに海底遺跡のアトランティスのようなものが出てきても面白いかなと考えたりしたんですけどね、九州に羽犬の伝説があることを知って。そこから本作が生まれていきました。
遠山ドラマティア『C’est Promis』稽古場より   撮影:角田大樹
ーー〈悲しいお話〉の方が良かったのですか。
遠山:多分、僕が作品をつくるときーーこれは僕だけではないと思うんですけどーー、舞台上で思いっきり泣くことにちょっとした美学を持っているんですね。で、今、自分が泣けるぐらいの芝居がしたくなっているんです。……これはコメディをやりすぎている反動なのか、もともとの性格が暗いからなのか。〈悲しいお話〉の方に発想が寄っていってしまうんですよ。
意外かもしれませんけど、笑いのシーンの方が書くことに苦戦しています。自分で書いてスベって、書き直す日々です(笑)。自分としては真面目なシーンやドラマティックなストーリーの方がすっと書きやすいなと思っています。
ーー改めてタイトルの理由を教えてください。
遠山:実は最初に考えていたタイトルがダサかったんです(笑)。1年ぐらいそのタイトルで進行してきたんですけど、時代劇のタイトルみたいで、イマイチだねという反応で……。ちょっと物悲しくアンニュイな雰囲気が漂いつつ、自分がフランスに留学した経験もあって多少素地があったこともあり、フランス語で「約束する」という単語をチョイスしました。
ーーちなみにその時代劇風のタイトルは……?
遠山:『竜子と羽犬』というものでした。でもパンフレットやチラシを作ってくれるスタッフさんから「うーん」という反応があって、僕も目が覚めた感じです(笑)。
遠山ドラマティア『C’est Promis』稽古場より   撮影:角田大樹
ーー楽曲の選定についてはどうでしょう。どういうコンセプトで選ばれたのですか?
遠山:この話の中で最初に浮かんだシーンにガチっとハマっていたので、SEKAI NO OWARIさんのとある曲は使いたいと決めていました。
実際、音からインスピレーションをもらうことはよくあるんです。例えば、格好いい戦いを入れるとしたら、こういう曲がいいかな? 曲がドラマティックだから、もうひとつドラマを足した方がいいな? みたいな感じで。こんな雰囲気がいいな。それにはこの曲が合うかも。この曲ならこんなキャラクターが出てもいいな……という試行錯誤の繰り返し。だいたいの話の流れは頭にあって選曲しているんですけど、音楽の力で話が膨らんでいくことも多々あります。
ーーSEKAI NO OWARIさんの歌は何曲かセレクトされていますね。
遠山:はい。ちょうどインスピレーションを受けた曲が多かったんですよね。SEKAI NO OWARIさんの曲は、悲劇的だったり、ファンタジーな雰囲気だったりする。僕は音楽を聞いていると背景にあるストーリーとかをどんどん勝手に膨らませてしまうタイプで、SEKAI NO OWARIさんの曲を聞きながら「この曲でこんなことやりたいな〜」というのは常日頃から思っていたんですが、今回の作品とちょうど合うなと思って、多めに選曲させていただきました。
ーーそのインスピレーションは「歌詞」というより「音」から得るのでしょうか。
遠山:そうですね。音だと思います。音から話を広げてみて、改めて歌詞を見たら「あれ? ハマってないな」と思うことはあります(笑)。それは曲の雰囲気で勝手にドラマを膨らませているからでしょうね。
遠山ドラマティア『C’est Promis』稽古場より   撮影:角田大樹
ーーちなみに前作は全編BUMP OF CHICKENでしたけど、今回はSEKAI NO OWARIさんで統一しようと考えなかったのですか?
遠山:そうですね。第一弾は長い期間構想を練っていた脚本だったので、なんとかできましたけど、そうそうできることではないですから。むしろもう統一は辞めようと思って始めました(笑)。
実は遠山ドラマティアの第三弾はミュージカルをやりたいと考えているんです。そのために今回は従来のスタイルに捉われずに、どこまでやれるかやってみたいなと思って。音楽とダンスは基本にはありつつも、曲の自由度を持たせたかったので、ひとつのアーティストに統一することは避けました。
ーー出演者に期待することを教えてください。
遠山:僕が真面目な話を作っているんですけど、それを不真面目にしちゃっていいよという気持ちがあるんです。それぞれがたくさん引き出しを持っている人たちなので、みんなが存分に輝けるようにしたい。僕があれこれ指示をするというよりも、本人たちから発想するものも色濃く舞台上で表現してくれたらと思っています。
ーー改めて梅棒ではなく「遠山ドラマティア」として表現を始めた経緯を教えてください。どんな思いで始められたのでしょうか。
遠山:もちろん自分として表現したいものがあるということがベースなのですが、まずは梅棒のメンバーはそれぞれの仕事も忙しく、どうしても年に2〜3回ほどしか本公演が打てない。梅棒は梅棒としての戦略があるし、その制約を解く意味でも、「遠山ドラマティア」という形で立ち上げました。
もうひとつ理由を挙げるとすると、年齢かもしれません。年齢を重ねれば『クロス ジンジャー ハリケーン』のような身体に多少無理がかかるパフォーマンスをクオリティ高くできなくなってくる。もちろん方法はあるかもしれないですけど、幅は狭まってしまう。となると、別の可能性を考えなくてはいけないんですね。そうして考えると、やはり舞台を立ち上げる側になることを考えました。
自分が人を集めて、演劇を作って、お金を生み出していきたい。絶対に面白いという確証はまだまだないし、いつも自問自答していますが、これまでの経験から作品のビジョンを見ることはできるので、できる可能性があるならやってみようと思っていて。
遠山ドラマティア『C’est Promis』稽古場より   撮影:角田大樹
ーーミュージカルも構想されているようですし、まだまだいろいろとアイデアをお持ちのようですね。
遠山:そうですね。作品やドラマを作ること、形にすることにはもちろん苦しみが伴うんですけども、「こういう話をやってみたい」という構想はいろいろ持っています。
稽古場レポート
本番まで2週間ほどとなった9月下旬。首都圏近郊で行われている稽古場を2時間ほど見学した。この日行われていたのは、オープニングシーンの稽古。激しい戦いの様子を表現する、見どころのシーンである。
遠山ドラマティア『C’est Promis』稽古場より   撮影:角田大樹
すでにキャストは振り付けを覚えている様子だったが、客席側に鏡をおいての稽古をしていた。舞台上に出ている人数も多い上に、フォーメーションも緻密で、ダンスのカウントも細かく刻んでいる。それに刀などそれぞれの武器の操作もある。ちょっとしたズレで出来栄えが変わってくるし、怪我をしてしまう恐れもある。だからこそ2時間のうち1時間45分ほどを使って、遠山と、遠山とともに振付を担うYOU(自身も随所でキレキレに踊っているので目を奪われる!)の指導のもと、徹底した動線と振りの確認がなされていた。
今回の主役である鶴野輝一。稽古場のムードメーカー的存在で、振りの確認中などは飄々としているのだが、いざ「通し」で踊るとなるときちんとキメる。「梅棒ではあまり見られないつるちゃん(※鶴野のこと)が見られる」と遠山は評していたが、本番は果たしてどうなるのだろう。そして、この日から本格的に稽古に合流したという古谷大和。「えっ! 本当に今日からなんですか?!」というほどの仕上がりで、佇まいから華がある。ダンスはもちろんだが、華麗な殺陣にも注目してほしい。
遠山ドラマティア『C’est Promis』稽古場より   撮影:角田大樹
ラスト15分。オープニングのシーンを通した。まだ衣装も照明もないというのに、ゾクゾクするような格好よさ! ここからどんな物語を見せてくれるのだろう。本番がより一層待ち遠しくなった。
取材・文=五月女菜穂

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